「名古屋の人はノリが悪い」なんてことはない
──歌詞の話に戻して、2番サビの「ピカピカのふたり(DELUXE DELUXE HAPPY)お城の上」は名古屋城の金のしゃちほこですよね。
はい。でも実は、地元民はしゃちほこに全然興味がないんですよ。
──名古屋のシンボルじゃないんですか? 戸松さん自身もジャケ写で頭にしゃちほこを乗っけてるのに。
いやあ、私も通学路の途中に名古屋城があったので毎日お城の近くを通ってたんですけど、まったく見てなかったですね。単に「お城だなあ」みたいな(笑)。ちなみに続く掛け声の「HOT&COLD HAPPY」は、しゃちほこの「ほこ」にかけて「ホッコーハッピー」と歌わせてもらったんです。
──おお、それは気付きませんでした。
私もレコーディングのときに気付いたんですよ。1番の「ME SO HAPPY」が「味噌」だったから、「HOT&COLD」にも何かあるんじゃないかと考えて……「はっ! これは“ほこ”やあ!」って(笑)。
──2番サビ後半の「東見ても 西を見ても オシャレおしゃべり魅力的」「スルーはしないで ど真ん中」は、名古屋の人の気持ちが表れていますね。つまり東には東京、西には大阪があって……。
そうなんですよ。名古屋はホントにスルーされがちなので。ここは「八十亀ちゃんかんさつにっき」という作品を物語っている部分ですね。
──戸松さんも「スルーはしないで」と感じている?
いや、例えばアーティストさんがツアーをなさるとき、名古屋がスルーされることはそんなにないじゃないですか。だいたい「東名阪」が軸になるので。そういう意味では恵まれている土地だと思うんですけど、よく「名古屋のお客さんはノリが悪い」って言われるんですよ。だから自分が観客としてライブに行くときはめちゃくちゃ声を出して「ノリ悪くないからねー!」と訴えるような気持ちで。
──ちょっと気にしてる(笑)。
そう(笑)。「ちゃんと楽しんでるよー!」みたいなアピールはめっちゃしてました。逆に自分が演者として名古屋でライブをすると「おかえりー!」って迎えてくれて、むしろ大盛り上がりなんです。だから「名古屋はノリが悪い」という感覚が正直わからないし、そういう風説は積極的に否定していきたいなと思っています。
やっと地元に恩返しできた
──「DELUXE DELUXE HAPPY」は、曲調はいつもの戸松さんらしいアッパーな曲ですね。
岐阜県出身のたむらぱんさんに初めて書いていただいたんですけど、そうおっしゃっていただけるとすごくうれしいです。レコーディング中も、デビューから10年お世話になっているディレクターさんに「やっぱり戸松が歌うとより戸松の曲になるよねえ」と言ってもらえて、それもすごくうれしい瞬間でした。
──そのレコーディングはいかがでしたか?
私のレコーディングはだいたい「楽しい!」と思っているうちに終わっちゃうことが多いんですけど、今回は特に楽しかったですね。というか、私以上にディレクターさんが楽しそうでした。もう「どうしたんだろうこの人?」というぐらい。10年間であんなに楽しそうにしてるのは見たことがなくて。
──ディレクターさんも東海地方出身の方なんですか?
いや、コテコテの関西人なんですけど「ここ最近で一番楽しいわ!」と言い出して、私としても「それはよかったです」みたいな(笑)。やっぱり遊び心にあふれた歌詞で、その中でさっきも言ったように「ひつまぶし」や「手羽先」といった隠れ名古屋ワードみたいな言葉をどうやったらうまく伝えられるのか真剣に考えたり。それも今回しかできないことだったし、歌えば歌うほど名古屋愛が増していくというか、名古屋の血が流れていることが実感できて。それはこの曲のおかげだし、繰り返しになりますけど終始「楽しい!」という気持ちしかなかったですね。
──その楽しさは歌声からも伝わります。
あ、でも1つだけ悔しいことがあって。Dメロの「イチズな(GO YEAH!)」のところで、私は「GO YEAH!」はただの掛け声だと思っていたんですけど、直前の「な」と合わせると「ナゴヤ」になるんですよね。そこに気付けなかったんですよ。それを関西人のディレクターさんに「戸松はこの意味わかる?」とすごいドヤ顔で言われて、「負けたー!」みたいな(笑)。
──ははは(笑)。さて、先ごろスフィアが音楽活動を再開させましたが、ソロアーティスト・戸松遥としてはこの「DELUXE DELUXE HAPPY」で2019年のスタートを切ることになりますね。
はい。シングルではなくコミックCDという形で原作マンガ第6巻の特装版に同梱されるんですけど、「DELUXE DELUXE HAPPY」が戸松遥の2019年最初の楽曲になるというのはすごくありがたいです。やっと地元に恩返しできたような気がしているというか、ここまで地元にフォーカスしたものに挑戦したことはなかったし、しかもそれが歌として残るというのが本当に素晴らしいことだなって。そして、今後もまだまだいろんなことに挑戦できるんじゃないか。そういう可能性も感じています。