楽曲に染まって出てきた声が、戸松遥の歌声
──11曲目の「有頂天トラベラー」は、戸松さんの歌声のかわいらしさが際立っていて、このアルバムは曲調だけでなく声色もカラフルなんだと気付かされました。
ありがとうございます。曲によって歌声が変わるのは、私らしさの1つだと思っていて。私は自分の声で曲を引っ張ると言うよりは、曲調や歌詞の世界観に自分が染まっていきたいタイプなんですよ。「COLORFUL GIFT」というタイトルにしたのも、アルバム用の曲がそろって、それを聴き直したときに「ああ、この曲ではこんな色に染まってたんだ」「カラフルな1枚になったなあ」と思ったのがきっかけでした。
──そのカラフルさは、戸松さんが声優であることとも関係している?
うーん……私は自分名義でデビューする前にキャラソンを歌っていて、何か役を憑依させないと歌えなかったんですよ。だから初めて「戸松遥として歌ってください」と言われたときに「私の個性ってなんだろう?」と戸惑ったし、デビューしてしばらくは「自分は声優だから曲によって声がコロコロ変わってしまうのかな?」「やっぱりアーティストとしての、戸松遥の声というものが必要なのかな?」ってけっこう悩んでいたんです。でも声が変わるのが自分なら、それは個性として認めてもいいんじゃないかといつからか思うようになって、今では出会った楽曲に染まって出てきた声が「今回の私の歌声です」という考え方になりましたね。
「ありがとうの言葉じゃとても足りない」
──そして、アルバムのラストを飾るのが新曲「色彩日記」です。
これは、一番自分らしい曲だと思います。デビュー10周年のタイミングで、今まで応援してくださった皆さんに歌を通して「ありがとう」という気持ちを伝えたい。その思いが起点になってるんですけど、そこに自分らしさを詰め込むために、10年間の活動の中で特に印象に残った景色や思い出を箇条書きにして古屋さんに送ったんです。そしたらこんなに素敵な歌詞にしてくださいました。ただ、完成形の歌詞はホントに非の打ちどころがないんですけど、最初に書いてくださったバージョンは若干「今までありがとう」感が強かったんです。でも、私としては「これからもよろしくね」と、先に進んでいくニュアンスも大事にしたくて。
──ここで完結するのではなく、アニメで言えば「第2期もお楽しみに」みたいな。
そうです。この曲はアルバムの最後に入れると始めから決めていたし、だからこそここで終わる感じにはしたくなかった。むしろこれからも「ありがとう」を届け続けていきますよ、と。
──その「ありがとう」も、歌詞では「ありがとうの言葉じゃとても足りない」という表現で伝えていますね。
実は「ありがとう」と伝えたいと自分で言っておきながら、ストレートに「〇〇してくれてありがとう」みたいな歌詞になったらどうしようって、ちょっと不安だったんです。私は語彙が乏しくて、ライブのMCとかで「この気持ちはなんていう言葉を使えば伝わるんだ!」と心の中で頭を抱えることがよくあって、常々「ありがとう」以上の言葉があればいいのにって……あ! 今思い出したんですけど、そのことも古屋さん宛てのメモに書いてました。だからこんなにも今の私の心情にぴったりなフレーズに……さすが古屋さん!
聴いていて笑顔になれる曲にしたかった
──古屋さんに送ったメモに書かれた「景色」や「思い出」って、具体的に教えてもらえます?
はい。例えば2013年のセカンドライブツアーで「七色みちしるべ」(2010年2月発売の1stアルバム「Rainbow Road」収録)という曲を歌ったときに、お客さんがサイリウムで客席に虹を作ってくれたことがあったんです。つまり、ファンの方が有志で列ごとに違う色のサイリウムを配って、曲が始まると同時に一斉に折るというサプライズを企画してくださったんですけど、その景色が忘れられなくて。もう「何をどうやったらこんなことができるの?」みたいな。それが「七色の海を見せてくれた まだ光ってる」という歌詞になっていたり。実は「七色みちしるべ」は、私の鼻歌から生まれた曲なんです。
──そうだったんですか。
当時鼻歌にハマっていて、たまたまアルバムを作るときに「何かアイデアある?」と聞かれて「最近、鼻歌めっちゃ歌ってるんです」と答えたら「じゃあ、録音して送って」みたいな(笑)。その出来事がDメロの「思いつきの鼻歌 嬉しくて」になっているんです。なのでかなりパーソナルなエピソードが入ってたりするんですけど、人によっては「あ、これってもしかして……」と気付いてもらえるかもしれないですね。
──「色彩日記」は、曲調としてはミディアムテンポの爽快なナンバーですね。
「ありがとう」がテーマの曲と言うと、バラード調になりがちじゃないですか。でも、私は絶対にバラードにはしたくなかったんです。しんみりした感じよりは、もっと前向きな、聴いていて笑顔になれる曲にしたかったんですよね。
──戸松さんの歌声も明るく、伸び伸びしていますね。
一番ストレートに歌いましたね。ほかの曲はライブを意識していたりするので、「よし、歌うぞ!」という感じだったんです。でも「色彩日記」に関しては、そういう気合いよりも今の気持ちを重視したいなと。歌詞もパーソナルな体験がもとになっているので、感情移入の仕方も全然違いましたし、歌っているとお客さんのことが自然と浮かんでくるんですよね。だから、それこそライブのMCで話しかけているようなテンションで、自然体の戸松遥として歌えました。
2018年は“戸松遥”に集中できる1年
──このアルバムは未来を見据えて作ったとおっしゃいましたが、この先の10年のプランは考えていますか?
正直わからないですね(笑)。それこそ未来はマーブル柄じゃないですけど、きっと今後もいろんな出会いがあって、そこから生まれる楽曲もあるはずなので。むしろ楽しみですね、何に出会えるのか。出会えたものに全力で向き合っていきたいし、その過程で私自身も変わっていくんだろうなと思います。ただ、ここまで10年間活動できたのは言うまでもなくファンの皆さんのおかげなので、皆さんの応援に応え続けたいという気持ちはずっと変わりません。
──現在スフィアが充電期間中ですが、戸松さんとしてはどのようなお気持ちですか?
あまり充電してる感じはしないですね。ありがたいことにラジオと雑誌の連載は続いてるので、月に何度かはメンバーと必ず顔を合わせていますし。実はすでに2019年の再始動に向けて動き始めていて、今日も4人で会ってその話し合いをしてきたんですよ。なので、全然寂しくないです(笑)。
──スフィアが充電期間であることの、ご自身の音楽活動への影響は?
たぶんソロ活動だけに集中できる年って、今年だけなんですよね。私がアーティストデビューした翌年にスフィアが結成されて、以降はずっと両方の活動を並行して続けてきたんです。当然どちらも全力でやりたいので、その分必要なエネルギーは2倍になるし、体力勝負な部分もありました。でも、この2018年は自分のことだけを考えていてもいい。来年になると、今度はスフィアが10周年を迎えるので。
──2年連続で10周年を迎えるアーティストはあまりいないですよね。
ですよね(笑)。だから今年は戸松遥の10周年イヤーであり、かつ戸松遥1本に絞って活動できる年でもあるっていうのは、すごくラッキーなんじゃないかと思っています。もちろん今言ったようにスフィアも動き出してるんですけど、表に出る音楽活動という意味で、2018年は戸松遥としての活動に精一杯力を入れていきたいです。
※記事初出時、本文に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
- 戸松遥「COLORFUL GIFT」
- 2018年5月2日発売 / ミュージックレイン
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初回限定盤 [CD+DVD]
3600円 / SMCL-536~7 -
通常盤 [CD]
3100円 / SMCL-538
- CD収録曲
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- オレンジレボリューション
- モノクロ
- 痛快!ロマンチッカー(余裕SharkShark mix)
- 約束♥ダーリン
- シンデレラ☆シンフォニー
- Marble
- Two of us
- あなたの幸せに私がなれるなら
- STEP A GO! GO!
- Boom Boom Typhoon!
- 有頂天トラベラー
- 色彩日記
- 初回限定盤DVD収録内容
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- 「オレンジレボリューション」 Music Clip
- Album「COLORFUL GIFT」TV SPOT 15sec+30sec
ツアー情報
- 戸松遥「LAWSON presents戸松遥 5th Live tour 2018 ~COLORFUL GIFT to YOU~」
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- 2018年7月28日(土)愛知県 Zepp Nagoya
- 2018年7月29日(日)愛知県 Zepp Nagoya
- 2018年8月11日(土・祝)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2018年8月12日(日)大阪府 Zepp Osaka Bayside
- 2018年8月18日(土)東京都 Zepp Tokyo
- 2018年8月19日(日)東京都 Zepp Tokyo
- 2018年9月8日(土)東京都 中野サンプラザホール
- 2018年9月9日(日)東京都 中野サンプラザホール
- 戸松遥(トマツハルカ)
- 1990年2月4日、愛知県生まれの声優アーティスト。2005年10月に行われた「第1回ミュージックレインスーパー声優オーディション」の合格をきっかけに声優としての活動をスタート。2008年9月にはシングル「naissance」でソロアーティストとしての活動を始め、2009年2月には同じミュージックレインに所属する寿美菜子、高垣彩陽、豊崎愛生とともに声優ユニット・スフィアを結成した。以降はソロとスフィアを並行して精力的に活動し、CDリリースとライブを重ねる。2016年6月には初のベストアルバム「戸松遥 BEST SELECTION -sunshine-」「戸松遥 BEST SELECTION -starlight-」を2枚同時にリリース。同年8月よりベストアルバムを携えてのライブツアー「LAWSON presents 戸松遥 BEST LIVE TOUR 2016~SunQ&ホシセカイ~」を行った。2018年5月に約3年2カ月ぶりのオリジナルアルバム「COLORFUL GIFT」をリリース。本作を携えて、7月よりライブツアー「LAWSON presents戸松遥 5th Live tour 2018 ~COLORFUL GIFT to YOU~」を開催する。
2018年5月2日更新