戸松遥の過去、現在、未来をつなぐ歌

──一方、「starlight」収録の「bookmark」は落ち着いたミディアムバラードで、戸松さんの自然体で優しい歌声が印象的でした。

ありがとうございます。「bookmark」は、私の8年間の活動を振り返るような歌詞にもなっている、かなりパーソナルな曲なんです。昨日までの軌跡を回想しつつ、明日に向かって進んでいくにあたって、その間にある今このときに“bookmark＝栞”を挟むような。私の過去、現在、未来をキレイにつないでくれた歌ですね。

──なるほど。

もちろん、だからといって私だけの歌ではないし、そもそも歌は聴いてくださった皆さんのものなんですけど、そんな私の歴史も、ちょっと感じていただけたらうれしいなって。

──「bookmark」は現在の戸松さんを起点に、例えば「新しい約束歌って行こう」という歌詞に表れているように、未来にも目を向けた内容になっていて。アルバム最終曲なのに「次回へ続く」みたいな、その先を感じさせる余韻が心地よかったです。

本当に、ここで終わりではないので。このベストアルバムは戸松遥の集大成ではあるんですけど、まさに“bookmark”的な位置付けでもあるんですよ。「ここで一旦区切るけど、まだまだ続いていくよ！」って。

みんなのおかげで素敵な“名刺”ができました

──今回のアルバムは「8年間の集大成」ですが、「8」という数字にアニバーサリー的な意味は……。

ないです。「なぜ今なんだろう？」って思いますよね（笑）。

──今ベストアルバムを2枚同時リリースしちゃって、じゃあ10周年はどうするんだろうって。

ねえ。あと2年したら10年目なのに。でも正直、デビュー何年目っていうのはあんまり考えたことがなかったんですね。5周年のときにファンの方からお花をいただいたり、スタッフさんがお祝いしてくださった際に「わ！ 今日で5年か！」と驚いたほどで。と同時に、私以上に私のことを見てくださっている方々がいるという事実にもハッとさせられて、ものすごい勢いで感謝の気持ちがあふれ出してきたんですけど。

──もともとアニバーサリー意識は低かった。

はい。だからとにかく、16枚のシングルと3枚のアルバムを出した今このタイミングで、名刺代わりになる作品を作ろうと。「戸松の曲を聴いてみたいけど、どれから聴いていいかわからない」という方に、「じゃあ、まずこの2枚を」ってお渡しできるものを。というか、こんなに曲数が増えていたことにもびっくりしたんですよ。全然実感がなくて。繰り返しになりますけど、それもここまで支えてくださった皆さんのおかげです。

──しかも、名刺として差し出す2枚が、その皆さんが「いいぞ！」って言ってる曲を集めたものという。

そうですそうです。私のオススメというより、皆さんからのオススメ。そういう思いも私の歴史も詰まってる、みんなで作ったとても素敵なアルバムです。

ご無沙汰の曲には命を吹き込み、定番の曲は進化させる

──そんな名刺を手に、8月からはツアーが始まります。

はい。絶対にみんなで楽しめるライブにします！ とはいえ、1回のステージでアルバム2枚分、計32曲を歌うのは難しいので、このツアーを通してベストアルバムを完成させるというか、全曲歌う気でいるので。あと、このベストの投票候補には入れなかった直近のシングルも2枚あったりするので（2015年9月発売の「STEP A GO! GO!」と2016年2月発売の「シンデレラ☆シンフォニー」）、新旧の曲を織り交ぜつつ。

──特にバラード系の曲、すなわち「starlight」の収録曲は、ライブではあまり披露する機会がなかったともおっしゃっていましたね。

そうなんです。実はライブではかなりご無沙汰な曲も結構あるので、そういう曲には新しい命を吹き込むような気持ちで。そして定番の曲は、さらに進化させるようなイメージで、1曲1曲を丁寧に、大事に歌っていきたいです。