音楽ナタリー Power Push - 戸松遥
8年間の足あとをファンとつないだ“二面性”ベスト
戸松遥のパブリックイメージは「sunshine」だけど
──ベストアルバムをリリースするにあたり、アップテンポな曲主体の「sunshine」と、バラード主体の「starlight」の2枚に分けた意図は?
最初は私も1枚だと思っていたんですよ。でも、今まで歌ってきた曲を全部並べてみたら60曲近くあって、まずこれをアルバム1枚分の曲数に絞るのは難しいねって話になって。しかも、そのうち半分くらいがバラード系の曲だったんです。私の場合バラードは、アップテンポな曲に比べると、ライブで歌う機会が少なかったりするんです。ベストアルバムはある意味“名刺”みたいなものだから、これをきっかけにバラード系の曲もたくさん知ってもらいたくて、じゃあ、2枚出しちゃいましょうと。
──ライブもそうですけど、普段しゃべっているときのテンションなども含めて、戸松さんのパブリックイメージって、たぶんアッパーな「sunshine」のほうだと思うんですよ。
はいはい。
──ただ、音楽的にはしっとり系の「starlight」な一面もある。だから「いやいや、実は私そんなに明るいタイプじゃないのよ」みたいなところもあるのかなって。
あはは(笑)。おっしゃる通り私のパーソナリティはだいぶ「sunshine」寄りなんですけど、別に無理して「starlight」してるかというとそうでもなくて。2008年にソロで音楽活動を始めて、一方で声優としてもお芝居を重ねてきているわけですけど、そういう経験が生きるのって、やっぱりバラードのほうだと思んですよね。
──アップテンポな曲とバラードでは表現の仕方が変わってくるという意味?
はい。昔の曲と最近の曲を聴き比べてみると、バラードのほうがその差がはっきり出てる気がするんですよね。なので個人的には、歴史を感じるのはもしかしたら「starlight」のほうなのかなって。
デビュー曲が一番大人っぽい?
──具体的には?
例えば「ドーナツ」(2012年10月発売「Q&Aリサイタル!」カップリング曲)は、心にぽっかり空いた穴をドーナツに見立てて、わりと生々しい心情を吐露するような歌なんですね。それまで私が歌ってきたバラードって、切ない曲調であっても歌詞は前向きだったりすることが多かったんです。
──はい。
でも「ドーナツ」は、別にネガティブというほどではないんですけど、人の心の必ずしもキレイじゃない部分も描いていて、それがすごく新鮮だったんです。なので歌うときも「上手に歌おう」とかは考えずに、“心の叫び”みたいな歌声を意識しました。そういう意味では、バラードを歌う楽しさを改めて知った曲でもあります。
──「starlight」を通して聴くと、「ドーナツ」の歌声の力強さがよくわかります。
ライブでも、特に「ドーナツ」はそのときどきの自分のテンションで歌声が変わるんですけど、ライブを観てこの曲を好きになったというファンの方もいらしたので、そうやって生で聴いてもらうことで伝わるものもあるのかなって。なので、この曲はシングルのカップリング曲であるにもかかわらず、リクエスト投票では3位という高順位で、非常にうれしかったですね。
──その順位についてものちほどお聞きしたいのですが、歌声の話を続けると、同じく「starlight」収録の「naissance」(2008年9月発売)は、1stシングルなのにずいぶん大人っぽいなって。
あはははは(笑)。当然最初はみんな探り探りで、私に関して言えば、レコーディングの経験ってキャラソンのほうが先だったんです。つまり“戸松遥”としてではなく、なんらかのキャラクターを通して歌うことに慣れてしまっていたぶん、「戸松さんのままで歌ってください」と言われると、「ん? 私として歌うってどういうことだ?」みたいな(笑)。
──それは声優さんならではの戸惑いでしょうね。
それでも、やっぱりデビュー曲なので、とにかくストレートに歌ってみようと。ただ、当時18歳だったんですけど、ちょうど高校を卒業して大学生になったタイミングだったこともあり「ちょっと大人になった戸松さんで」という指示もいただいて。だからこのときの目一杯の私の“お姉さん”感が出てるんだと思います(笑)。
あの当時の自分だからこそできた表現
──「naissance」は思いっきり背伸びをした戸松さんなんですね。
背伸びという意味では、「産巣日の時」(2008年11月発売)も、戸松遥としては異色の曲かも。この曲の歌詞は祝詞っていう、神様を称える言葉を下敷きにしているので、なかなか歌詞の内容を消化できなかったんです。
──アニメ「かんなぎ」のエンディングテーマに採用された、静謐なバラードですね。
この曲は3rdシングルで、しかも3カ月連続リリースの3枚目だったので、デビュー曲の「naissance」とほぼ同時期にレコーディングしてるんです(2枚目は2008年10月発売の「motto☆派手にね!」)。
──なるほど、そこでいきなり神前で奏上するような歌を。
なので、当時はとにかく神々しさを出すのと、祝詞の言葉を伝えるのにいっぱいいっぱいで。もちろん納得のいく形でレコーディングできたんですけど、その後のライブではまた違った歌い方もできるようになりましたね。
──他方で、背伸びとは逆に、「sunshine」収録の「星のステージ」(2010年8月発売「渚のSHOOTING STAR」カップリング曲)は、歌い方がものすごくお若いなって。
若いですよね! ベストアルバムのジャケット撮影のときにスタジオでアルバムの曲を流してたんですけど、私も「星のステージ」がかかるたびに1人で「若いな!」とかずっと言ってて(笑)。もし今、この曲をああいう感じで歌ってくださいと言われてもできない。あのときの私だからこそできた表現ですね。
次のページ » みんなが決めたこの順位ごと聴いてほしい
- ベストアルバム「戸松遥 BEST SELECTION -sunshine-」 / 2016年6月15日発売 / ミュージックレイン
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3500円 / SMCL-430~1
- 通常盤 [CD] 3000円 / SMCL-432
収録曲
- Issai Gassai
- ラブ♡ローラーコースター
- RUN
- 星のステージ
- 渚のSHOOTING STAR
- Counter Attack
- ♪Make Up Sweet Girl☆
- Oh My God♥
- Fan Fun Parade
- Girls,Be Ambitious.
- 明日色ひまわり
- 恋ヲウチヌケ
- motto☆派手にね!
- courage
- Q&A リサイタル!
- BIG WAVE
初回限定盤DVD収録内容
- 「BIG WAVE」Music Clip
- ベストアルバム「戸松遥 BEST SELECTION -starlight-」 / 2016年6月15日発売 / ミュージックレイン
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3500円 / SMCL-433~4
- 通常盤 [CD] 3000円 / SMCL-435
収録曲
- In Our Hands
- Tomorrow
- 産巣日の時
- STAGE
- やさしき日々
- セパレイト・ウェイズ
- マリラレルラ
- こいのうた
- Circle
- 七色みちしるべ
- naissance
- Baby Baby Love
- ドーナツ
- ヒカリギフト
- ユメセカイ
- bookmark
初回限定盤DVD収録内容
- 「bookmark」Music Clip
LAWSON presents 戸松遥 BEST LIVE TOUR 2016~SunQ&ホシセカイ~
- 2016年8月13日(土)
- 東京都 中野サンプラザホール
- 2016年8月14日(日)
- 東京都 中野サンプラザホール
- 2016年9月3日(土)
- 愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2016年9月4日(日)
- 愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2016年9月24日(土)
- 大阪府 オリックス劇場
- <追加公演>
2016年10月1日(土) - 神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
戸松遥(トマツハルカ)
1990年2月4日、愛知県生まれの声優アーティスト。2005年10月に行われた「第1回ミュージックレインスーパー声優オーディション」の合格をきっかけに声優としての活動をスタートし、2007年1月より放送のテレビアニメ「がくえんゆーとぴあ まなびストレート!」でデビューを果たす。2008年9月にはシングル「naissance」でソロアーティストとしての活動を始め、2009年2月には同じミュージックレインに所属する寿美菜子、高垣彩陽、豊崎愛生とともに声優ユニット・スフィアを結成した。以降はソロとスフィアを並行して精力的に活動し、CDリリースとライブを重ねる。2016年6月には初のベストアルバム「戸松遥 BEST SELECTION -sunshine-」「戸松遥 BEST SELECTION -starlight-」を2枚同時にリリース。8~9月にはベストアルバムを携えてのライブツアー「LAWSON presents 戸松遥 BEST LIVE TOUR 2016~SunQ&ホシセカイ~」を行う。