セットリストで1つの物語を
──そして3月にはライブイベント「"LIVE with YOU"~TOKYO SKA JAM 9+~」が開催されます。
加藤 すごく楽しみです。僕、「TOKYO SKA JAM "8"」のときにやったイベント(「SPACE SHOWER TV "LIVE with YOU" -TOKYO SKA JAM "8"- supported by uP!!!ライブパス」)のこともよく覚えていて。全体を通して「よくできたな」と思って、気に入っていたんですよ。だから今回も……ゲストの方に歌っていただく曲もすごく大事なんだけど、それをセットリストの中でどう生かしていくか。セットリストで1つの物語を作っていけたらという思いがあるので、構成を考えるのを今から楽しみにしています。大木くんの歌の前に何を置こうかな、とかね。なんにせよスペシャルな1日になると思います。
──ゲストアーティストは大木さんに加え、miletさんとSiMのMAHさん、MAN WITH A MISSIONのJean-Ken JohnnyさんとTokyo Tanakaさんが決定しています。
茂木 まずMAHくんは「TOKYO SKA JAM "8"」に出てくれて「All Good Ska is One」を歌ってもらったんだけど、彼のスカに対する造詣の深さに驚いたというか。こんなにピタっとハマるんだ!っていうくらい、歌ってくれたときの盛り上がりといったら大変なもので。
加藤 「All Good Ska is One」のオリジナルはFishboneのアンジェロ・ムーアが歌ってくれたんですけど、アンジェロはすごくスキルの高いボーカリストで、僕らが作ったメロディを完全に自分のものにして、ブルースからファンク、スカ、レゲエ全部含めた……いわゆるブラックミュージックのルーツを全開にした歌い方をしているんです。それをMAHくんが「僕、これ歌います」と選んでくれて、どうなるのかな?とすごく興味があったんですけど、実際に音を合わせたら、完全に曲を自分の血肉にしていたんです。それは彼の音楽的なバックグラウンドが見えた瞬間で、ブルースロックやブラックミュージックに影響を受けている部分というのはあまりSiMでは見せない一面だと思うので、純粋に盛り上がりましたね。今回お客さんの前で初めてセッションできるので、すごく楽しみにしています。
茂木 そうだね。
加藤 マンウィズは海外での活躍も横目でずっと見てきたバンドですね。「Freak It! feat.東京スカパラダイスオーケストラ」(2018年)という曲にスカパラメンバーが参加したという経緯もあって「日本を飛び出して、スカパラとマンウィズで対バンできたらいね」なんて話もずっとしていたんですけど、番組に出てくれたことで一緒にやれる曲も増えたし、より彼らのことを知れた機会でした。バンドの成り立ちもより知ると、よりマンウィズのことを好きになりましたね。画的にもスーツとオオカミでカオスだと思うので、楽しんでもらえると思います(笑)。
大木 あははは(笑)。
茂木 miletちゃんはね、僕、去年日本でリリースされたアルバムの中でmiletちゃんのアルバムを一番よく聴いたかも。言葉の紡ぎ方も新人なの?って思うくらい、スタイルがここまで確立されているんだという驚きがあって。声質が自分好みのものであったというのもあるんだけど、プロダクションとしてこんなに完成されているんだと感動したんです。だから、番組で共演できたのは縁だなあと思いながら。
加藤 miletちゃん、歌声を聴いているとおっとりした方なのかなという印象だったんですけど、実際会ってみるといい意味でサバサバしてて。
茂木 アグレッシブなんだよね。
加藤 そう、アグレッシブ。「めくれたオレンジ」を歌ってもらったんですけど、ああいう躍動感のある曲がぴったりハマって、頼もしい感じでした。歌い出したら「私に付いて来なさいよ!」みたいな。
茂木 そう、姉御肌的な感じ、確かにあった。
加藤 で、大木くんは今回のラインナップの中では一番キャリアもあるし、参加してもらえてよかったです。ドシッとね、最後は大木くんに締めてほしいと思います。
茂木 うん、そういう感じだよね。
大木 ゲストもみんな、仲よくさせてもらっている後輩のバンドだったりするから、うれしいし楽しみです。
“音楽の本当の強さ”を楽しみたい
──大木さんが当日楽しみにしていることはなんですか?
大木 僕、去年の「ビバラ!オンライン」でスカパラと同じ日に出演したんですが、最後まで残ってスカパラのライブを観させてもらったんです。スカパラのライブって、バンドのグルーヴにお客さんがノッてこそ!と思っていたんだけど、無観客でもめちゃくちゃカッコよかったんですよ。むしろ、一層迫力を感じた。スカパラはいろんな悲しみを乗り越えてきたバンドで、音に悲哀や切なさが混ざってもおかしくないじゃないですか。なのに、このストロングスタイルでピースフルに音を鳴らせるっていうのは相当強いと思った。あの日の配信では、その強さが本物の迫力としてひしひしと僕に伝わって。もう鳥肌立って力がめちゃくちゃ湧いて「これが音楽の本当の強さだ!」と感じたので、またそれを楽しみたいですね。お客さんが半分だろうがなんだろうが、まったく関係ない空気感になると思います。
加藤 うれしい。いや、今日会えてよかった。今の大木くんの言葉はすごく参考になる。セットリストにも影響すると思います。
茂木 さっき大木くんが「『うまく歌おう』とか思わないほうがいい」という話をしていたけど、僕らもそういう演奏をしたいですね。ありのままの思いを全部音に込められるような、そういうライブにしたいなあ。会場のお客さんだけじゃなく、配信画面で観ている人にも、それは届くと思っているので。しっかり思いを届ける、かつみんなを楽しませるということを忘れずにね。
加藤 去年はフェスの文化を含め、音楽が必要なのか?ということを問われる1年だったと思う。ミュージシャンはそれに対しての答えを考えていたと思うんです。だからこそ、揺るぎないものを見せられるかということが、今バンドに求められていることだと思う。ゲストとのコラボレーションももちろん楽しんでもらいたいけれど、スカパラのライブの強さ、僕らが音を出す理由みたいなものが伝えられるようなライブにしたいと思います。