こんなにライブに向けて準備したのは初めて
──8月にはアルバムの全収録曲をリリース前に披露するという趣旨のワンマンライブが東阪で行われました。いちろーさんはMCで「僕らが大事にしているライブで、直接生で演奏を観てもらったらアルバムのよさが伝わるんじゃないかなと思った」と言ってましたが、リリースの1カ月半前に全12曲を披露するのは大変だったんじゃないですか(参照:東京カランコロン“電源オン”でリスタート、ニューアルバムお披露目したeggman公演)。
いちろー でも実際、“やってよかった感”はハンパなかったですね。
おいたん 準備は相当しましたけどね。ひさしぶりに1つのライブであんなに練習しました。大阪と東京の2回しかないってことで、そこで絶対にいいものを見せたかったから。
せんせい 決めたセットリストで、1カ月ぐらいずーっとその日のために練習したもんね。「こうやって見せたほうがいい」「こうしたら楽しんでもらえる」っていうのを考えて、いろんな人に意見を聞いて……こんなに準備したのは初めてでした。
いちろー 普通のリリースツアーでアルバム曲を初披露するのと違うのは、来てくれた人が誰も曲を知らないってところなんですよね。当日、曲を知らないお客さんがどういうふうにリアクションを取って、そこに対して自分たちがどうアプローチするかっていうのはもう予想でしかなくて。あと新曲しかやらないライブって、コアなお客さんしか来ないんじゃないのかなとも思いました。やっぱり、ライトなファンって有名曲を聴きたいと思うんですよ。ベストアルバムを出してツアーをやったらお客さんがたくさん入るっていうこともあるし。だから、ライブを開催するかはかなり悩みましたね。
──当日はたくさんのお客さんが来場していましたね。
いちろー ホントにありがたかったです。勇気を振り絞ってやってよかったなと思いました。採算度外視で入場無料でライブをやらせてくれたエッグマンにも感謝してます。
せんせい 「アルバム全曲やるって大丈夫?」「知らない曲だらけで来てくれる?」ってめっちゃ心配してたけど、でも「“再起動”って言ってんねんから、みんながびっくりするようなことしようよ!」っていうのがあったんです。
おいたん 「こうしたらお客さんが盛り上がってくれるかな」って散々考えて話し合って挑んだので、当日皆さんが手を挙げてくれたり声を出してくれたりするのを見て、「つながった」っていうのは感じましたね。今までのうちらだったらたぶん「まあ初めてだから棒立ちなのは仕方ないでしょ。でもやるっしょ」みたいなテンションだったと思うんですけど、今回は「お客さんに『知らない曲だけど楽しかったね』って思ってほしい」という気持ちがあって。その答えが返ってきて、手応えを感じました。
佐藤 僕はツアー前にこのお披露目ライブをやれたんで、ツアーの練習サボれるなって。
せんせい ふふふふ(笑)。
佐藤 いつもはだいたい、ツアーが終わったときにやっと演奏がなじむので。今回は前倒しでやったから、ツアーはいい感じで演奏できるんじゃないかと思います。
かみむー氏 俺は今回のアルバムを作るときに、今まではあえてアレンジを難解にしていたんですけど、それをやめようって意識して。わかりやすさ、聴きやすさを重視して自分のパートを作ったんですけど、ライブでのお客さんの反応を見て、それが伝わったような気がしたのでうれしかったです。
鎧を脱いで、Tシャツ短パン状態に
──「難しいことをやめた」ということですが、確かに今回のアルバムはAメロやBメロで遊んでいる曲はいっぱいありますけど、サビはすごくポップで聴きやすいですよね。そのポップ感は、これまでの経験から作り上げたんでしょうか。
いちろー どっちかと言うと、今回は積み重ねて来たものを剥いだんですよね。僕らはどんどん足し算をしていく曲の作り方だからこそ、その分いらないものも溜まってしまった感じがして。「これってホントにほしかったものなのか?」っていうのを、それこそ去年みんなで考えたんです。そしたら「東京カランコロンに一番必要なのは、ツインボーカルの歌が一番前にあるっていうことじゃない?」っていう結論に至って。ボーカルを邪魔するんだったら足し算はしないし、邪魔しないんだったらやりたいようにやればいいんじゃん?っていうことで、どんどん邪魔なものを取り除いていったんですよ。これまでだったらたぶん、サビも普通に8ビートとかじゃなくて、「ちょっとスネアを変わったところに入れてみよう」とかやってたと思う。
かみむー氏 やってたねー。
──前のアルバム「noon/moon」が歌を聴かせる“歌盤”と音楽的な遊び心を詰め込んだ“遊び盤”の2枚組だったように、これまではそういう遊び心もカランコロンの魅力の1つとして積極的に表現していたわけですよね(参照:東京カランコロン「noon_moon」インタビュー)。
いちろー そうですね。でもそうやっていろんな服を着ていくうちに、なんか鎧みたいになっちゃって、自分たち自身でも脱ぎづらくなっちゃってたんですよ。で、「この鎧ホントに着たいわけじゃないよな?」って話し合った結果、今回は鎧をぐわーんって取り除いて、ホントに着たい服だけを残したと言うか。だからアルバム収録曲のサビはTシャツ短パン状態って感じなんです。
せんせい 曲を作って肉付けしていくうえで、なるたけ歌を邪魔しないアレンジやコード進行をメンバーの中でも話し合いました。ワンコインシングルとアルバムはAxSxEさん(NATSUMEN)にプロデュースしていただいてるんですけど、AxSxEさんにも「ややこしいことはしたくないんです。なるたけちゃんと歌が中心にあるようにアレンジしたいんです」っていうことを伝えて制作していって。でもやっぱり遊ぶことが好きな5人やから、AメロやBメロには遊び心が入ってますけど。それでもサビで絶対的に東京カランコロンのメロディのよさが出せるって自信があったんです。
男女ツインボーカルバンド、東京カランコロンです
──ちなみにアルバム初披露ライブの冒頭で「男女ツインボーカルバンド、東京カランコロンです」と自己紹介してたのが印象的だったんですけど、これってずっと言ってましたっけ?
せんせい 直接言うようになったのは最近ですね。自分たちの中では「2人歌ってんねんから、ツインボーカルってわかるでしょ」って思ってて。で、TALTOに移籍したらスタッフさんが「もっとこうしたほうがいい」って一緒に考えてくださったり、所属バンドも対バンしたときに「もっとこうしたらいいのになあ」っていう感想を言ってくださったりするんですよ。それはチームメイトとして、僕らのライブをすごく大事に考えてくれているから。その中で「ちゃんと説明したほうがいいよ」っていうアドバイスをくれた人がいたんです。私たちは2人で歌ってるからツインボーカルやんって思ってたけど、やっぱ口に出して言わないとそれは伝わらないことで。だからここに所属してからの最近のライブでは、絶対に「男女ツインボーカルバンド、東京カランコロンです」って自己紹介するようにしてます。
──そうだったんですね。
せんせい ここに来てやっと……と言うか、初めてチームを感じてます。それは私らが周りの意見を聞くようになったのか、意見を言ってくれる人が周りにいるようになったのかはわからへんし、両方なのかもしれない。でも、やっと1個1個のライブをどうするかっていうのを、曲作りと同じぐらい話し合って決められるようになりました。
いちろー これまで活動してきて、自分たちのことが客観的に見れなくなってたことを今すごく感じてて。だから自分たちにとっては当たり前のことも、1個1個丁寧に改めて外側から自分たちを見て、それを伝えていくことを意識してますね。
──アルバムタイトル「東京カランコロン01」の「01」は、パソコンの電源マークから来ているそうですね。
おいたん はい。「再起動」っていう言葉をネットで調べてたら、電源スイッチの丸と棒マークの意味がネットで出てきて。丸は数字の0で電源オフを、棒は数字の1で電源オンを表しているそうなんですね。それを知ったときに、移籍1枚目のアルバムにぴったりだなと思ったんです。
いちろー さっきも話に出ましたけど、このアルバムは「移籍しましたー。初のアルバムですー」っていうテンションじゃ出せなくて。ホントに“ちょっと立ち止まった”っていうレベルじゃなくて、電源が落ちたぐらい自分たちの中でバンドとして暗い時期があって、今そこから電源がオンになってる。しかも“01”っていう数字だけ見ればスタート感があるので。いいタイトルですよね。
──電源をオンにして、これからどう動いて行きたいですか?
いちろー このアルバムは“東京再起動”というプロジェクトを締めくくる作品なんです。でもこのあとリリースツアーが終わって「燃え尽きたよね」「駆け抜けてゴールテープ切っちゃったよね」っていう感じになるのは嫌だし、僕らとしても本意じゃない。“東京再起動”って「今年こうします」じゃなくて「これからこうします」っていう宣言なんですよ。だからこのあと「それに続けてこういうふうに走ります」っていうのを、なんらかの形でツアーでは提示したいなと思ってます。「“東京再起動”よかったよねー」で終わらないように。
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メンバー5人が語る「東京カランコロン01」 試聴音源付き
- 東京カランコロン「東京カランコロン01」
- 2017年10月4日発売 / TALTO
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[CD]
3000円 / TALTO-006
- 収録曲
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- トーキョーダイブ
- どういたしまして
- ラブソング
- ハッピーエンディング
- AWESOME FRIDAYS
- 321で
- ビビディバビディ
- シークレットランド
- かさぶた
- アンサンブル
- つよがリズム
- 走り出せロンリー
ボーナストラック
- 中華そば
- 東京カランコロン(トウキョウカランコロン)
- いちろー(Vo, G)、せんせい(Vo, Key)、おいたん(G, Cho)、佐藤全部(B)、かみむー氏(Dr)からなる5人組バンド。2009年5月に現メンバー編成での活動を開始した。2010年6月にdiskunionで自主制作盤「2ndデモCD」が発売され、インディーズチャートで1位を獲得。10月には初の全国流通盤となるアルバム「東京カランコロンe.t.」をリリースした。2012年8月にエイベックスよりメジャーデビュー盤となるミニアルバム「ゆらめき☆ロマンティック」を発表し、その後もコンスタントにリリースを重ねていく。2017年にエッグマン内のレーベルTALTOに移籍。「東京再起動」と題したプロジェクトの一環として2月に「トーキョーダイブ」、5月に「ビビディバビディ」と2枚のワンコインシングルをリリースした。10月には移籍後初となるニューアルバム「東京カランコロン01」を発売。リリース前の8月にはアルバム全曲を披露するフリーライブを大阪と東京で開催して話題を集めた。