ナタリー PowerPush - 東京カランコロン
祝メジャーデビュー! 作詞者・高橋久美子と本音トーク
東京カランコロンが8月15日リリースのミニアルバム「ゆらめき☆ロマンティック」で遂にメジャーデビューを飾る。レーベルはavex trax。そしてリードトラック「泣き虫ファイター」は高橋久美子(ex. チャットモンチー)が作詞を手がけ、今冬には早くも2ndミニアルバムのリリースも予定されているなど、まさにトピック尽くしの盤石な体制によるローンチとなる。その全方位型のポップセンスからなるメロディと縦横無尽のアレンジスキルによって、およそ2年のインディーズ活動で着実なキャリアを積み上げてきた彼ら5人が、フィールドをメジャーへ移すことを決めた理由とは一体なんだったのか?
今回はいちろー(Vo, G)、せんせい(Vo, Key)に加え、“作詞家”として初の楽曲提供が実現した高橋を迎えて、ミニアルバムの全貌から現在の心境までをひも解いていく。
取材・文 / 内田正樹 撮影 / 中村美鶴
素晴らしいアレンジとミュージカルみたいなライブ
──まずは皆さんが出会ったきっかけからお聞かせください。
いちろー(Vo, G) 2年ぐらい前に、僕らがお世話になっているイベンターさんが開いている謎の飲み会の席で。それは不定期開催で、結構大御所のミュージシャンの方もいらっしゃる場なんですけど、何せ僕らはペーペーなので(笑)、隅のほうに座って皆さんのお話を聞いていたんです。そしたら高橋さんがすごく話しかけてくださって、帰り際に音源をお渡ししたんですよね。
高橋久美子 そうそう。だから私も最初は彼らの名前も音楽も知らなくて。帰ってその音源を聴かせてもらったらすごく面白い音楽だったので衝撃を受けて。とにかく最初はアレンジの面白さに惹かれましたね。それからイベントの機会にライブも観て。ほら、こないだコースト(※東京・新木場STUDIO COAST)でやっていたイベントも出てはったでしょ? 私、実は観てたんですよ?
せんせい(Vo, Key) えー!? 知らなかった!!
高橋 ワンマンも観させていただいて。もうねえ、すごくカッコよかった!! 正直「ちょっと侮ってたわ!」っていうぐらい(笑)。ワンマンを観ると、アレンジの良さもさることながら、ライブ自体がミュージカルみたいですごく楽しいの。マイケル・ジャクソンみたいな曲もあるわ、メンバーのキャラも立っているわ、まさに“バンドだからこそ”という良さを持った人たちだなって、改めてよくわかりました。
当初は互いに抵抗を感じていた歌詞提供
──今回高橋さんが歌詞を書き下ろした「泣き虫ファイター」は、メジャーデビューを飾るミニアルバムのリードトラックであり、高橋さんとしてもチャットモンチー脱退後、作詞家として初めて書いた提供作品ということですが。
高橋 ねえ。もう“ダブルおめでた”というか「双子だった!」みたいな機会で(笑)。
いちろー メジャーデビューに際して、どなたかとコラボをしてみたいというアイデアから、高橋さんの名前が挙がったんです。でも飲み会のとき、連絡先を交換していなかったので、高橋さんのホームページの“ご用命”欄からオファーしたという(笑)。でもそういえば、せんせいはまずコラボというアイデアそのものに対して、最初はものすごく反対していたんだよね?
せんせい うん。だってせっかくインディーズでここまで自分たちで曲を作ってきたんだから、たくさんの人に聴いてもらう最初の曲を私たちが自分で作らないって大丈夫なの?って思って……。
高橋 その感覚のほうが正常だと思う。だから私もオファーをいただいた当初は、「もしかしてスタッフに無理矢理やらされてるんじゃないの?」とかすごく詮索しちゃったの(笑)。
せんせい すみません……。ちゃんと自分たちの意志でしたので(笑)。私も高橋さんのお名前が挙がったときは「ああ、高橋さんなら大丈夫」とすぐに思えて。それで最初の状態の歌詞を読ませていただいたら、私たちらしいのに、高橋さんらしくもある歌詞になっていたので「すごい!」って(笑)。
いちろー 僕も高橋さんにお願いできるって決まった時点でもう、僕らのマイナスになる要素はひとつもないという強い確信がありましたから。
高橋 いろいろ安心したわ。今日この対談があってホントに良かった(笑)。今だから話せるけど、私も本当に最初は不安が大きかったの。やっぱり皆さんの大事なタイミングだし、私自身、チャット時代はほとんど詞先で書いていたので、曲先で1人きりの作業というのも初めてだったし。だから「誠心誠意、きっちり向き合って書くんだぞ!」って、ちょっと肩に力が入っていた。でも届いた曲を聴いたら、本当にメロディが気持ちのいい曲だったので、お風呂の中で口ずさんでいたら、すぐにふわっと歌詞が浮かんで、一気に書き上げることができました。
いちろー 高橋さんは最初の打ち合わせで、もう完成形に近い歌詞を持ってきてくださった。サビで使われている“フォークボール”とか、ちゃんと曲にも僕らにもハマっているのに、絶対自分たちからは出てこない言葉。うれしかったのと同時に「ヤバい、やられた」と。まさに変化球というか、一本取られた感じでしたね。
- メジャー1stミニアルバム「ゆらめき☆ロマンティック」
- メジャー1stミニアルバム「ゆらめき☆ロマンティック」 / 2012年8月15日発売 / 1800円 / avex trax / AVCD-38464
CD収録曲
- 泣き虫ファイター
- 夏 part1
- ウキウキエブリデイ
- うれしい予感
- ララララ
CD-EXTRA収録内容
- メジャー発表当日ライブ映像&ドキュメンタリー~カランコロンメンバー解体新書編~
- CAN'T STOP 運命線
- true!true!true!
- ×ゲーム
東京カランコロン(とうきょうからんころん)
佐藤全部(B)、いちろー(Vo, G)、せんせい(Vo, Key)、おいたん(G, Cho)、かみむー氏(Dr)からなる5人組バンド。2009年5月より現メンバー編成にて活動開始。翌2010年6月に自主制作音源を発表すると、インディーズチャートで連続1位を獲得。同年10月には初の全国流通盤となる「東京カランコロンe.t.」をリリースし、12月に初の自主企画ライブ「ワンマ ソ」を行う。その後2012年までインディーズシーンでミニアルバム、シングル2枚を発表し、ライブ活動も精力的に展開。8月にavex traxよりメジャーデビュー盤となるミニアルバム「ゆらめき☆ロマンティック」をリリース。さらに9月に東京・渋谷QUATTROでワンマンライブ「ワンマ ん2012」を開催する。
高橋久美子(たかはしくみこ)
1982年4月10日生まれ、愛媛県出身。鳴門教育大学在学中の2004年4月、チャットモンチーにドラマーとして加入。その後音楽活動の傍ら、詩の個展を開催し、画家の白井ゆみ枝や若手建築家らと「ヒトノユメ」を発足するなど、作家活動も並行して行う。2011年9月にチャットモンチーを脱退。現在は作家、作詞家として活動中。