ナタリー PowerPush - 特撮
「ヌイグルマーZ」原作者が主演女優と歌う異色映画音楽の作り方
1月25日、映画「ヌイグルマーZ」が全国公開される。中川翔子が主演、井口昇が監督を務めるこのアクション映画の原作は大槻ケンヂの小説「縫製人間ヌイグルマー」。そして映画の劇中歌をすべて手がけているのが、その大槻のバンド、特撮だ。
特撮は映画のために中川とコラボレーション。自身の楽曲「戦え!ヌイグルマー」のセルフカバーバージョンにして、映画のオープニングテーマとなる「ヌイグルマーZ」を、また特撮名義でもエンディングテーマ「シネマタイズ(映画化)」を制作した。
そして彼らは1月22日、中川翔子×特撮としてシングル「ヌイグルマーZ」、特撮名義でシングル「シネマタイズ(映画化)」を同時リリース。いずれのシングルにも映画「ヌイグルマーZ」の劇中歌が収録される。映画の原作者が主演女優とともに映画音楽を制作する異例のプロジェクトに臨んだメンバーの胸中やいかに? 特撮の4人に話を聞いた。
取材・文 / 成松哲 撮影 / 佐藤類
仕上げてくる派と仕上げない派のコラボレーション
──今回中川翔子さんとのコラボシングル「ヌイグルマーZ」と、特撮の「シネマタイズ(映画化)」が同時リリースされるわけですけど、「ヌイグルマー」ってホントに長く愛される曲になりましたね。
大槻ケンヂ(Vo) おかげさまでそういう感じになってますね。そもそもこの曲は特撮の2ndアルバム「ヌイグルマー」(2000年)に入っていた「戦え!ヌイグルマー」が原型なんですけど、それは当然特撮でやっていて。で、アニメ「かってに改蔵」の主題歌(水木一郎と特撮「かってに改造してもいいぜ」)のカップリング曲として、水木一郎と特撮名義で「ヌイグルマー」(2011年)というタイトルでセルフカバーをやって。そのあと特撮のアルバム「5年後の世界」に僕だけが歌うバージョンの「ヌイグルマー」(2011年)を収録して、今回は「ヌイグルマーZ」としてしょこたんが歌っている。だから4バージョン3パターンあるのかな?
三柴理(Key) 多いな(笑)。
──いかがでした、最新の「ヌイグルマー」である中川さんバージョンは?
大槻 まず女性が「ヌイグルマー」を歌うのは初めてで、しかも特撮ヒーローものの主題歌を女性が歌うこと自体珍しいことらしいんですよ。そういう面白さもあるし、でも違和感はない。中川さんのスタッフからは「歌詞はレコーディングの2週間前には上げてくれ」って言われてたんですよ。「練習してくるから」って。で、実際にレコーディングの日に中川さんは仕上げてくるんですよ。その点、僕は日本一仕上げてこないボーカリストなので、その2人の違いをお楽しみいただければって思ってます。
NARASAKI(G) 「仕上げてこない」って……。なんでそんなことを目の前ではっきり言われなきゃいけないんだろう……。
──プロデューサー的立場のNARASAKIさんにしてみたら胸中複雑ですよね(笑)。
大槻 マジメな話をすると、僕は仕上がってないところが持ち味だから。何が出てくるかわからない、そのハラハラ感に皆さん期待しているわけですから。そこは自覚してる。
NARASAKI そんなことないと思うなあ。
中川翔子×特撮でありつつ特撮の楽曲であるワケ
──今回の「ヌイグルマー」はボーカリストの性別だけでなく、アレンジも原曲とは大きく違います。原曲はかなりノイジーだし、Aメロや間奏の三柴さんのピアノのフレーズがけっこうストレンジだったりするんですけど、今回はストレートなハードロック、ヘヴィメタルサウンドになっていて。
三柴 確かにおっしゃるように、今回はものっすごくストレートでわかりやすいピアノを弾きました。プロデューサーのナッキー(NARASAKI)から「ピアノが歌と当たらないように」って言われていたので。
ARIMATSU(Dr) リズムについても原曲はリフの嵐というか。畳みかけるようなリフで構成されている楽曲だったんだけど、今回は中川さんが歌うってことで、そのリフの畳みかけみたいなものはそぎ落として。ちょっとポップ性を出したアレンジにはなってますね。
──でもボーカリストすら違うのにちゃんと特撮の音に仕上がっています。この特撮らしさの秘密ってなんなんでしょう?
NARASAKI まあプレイヤーが同じだっていうのが一番の理由だとは思いますけどね。あとこの曲を最初に作ったのはもう10年以上前なので。今、改めてやるとなったとき、10年前と同じアレンジが出てくることはまずあり得ないっていうのもありますよね。
三柴 あと僕たちがやりたいようにやると、けっこう難解で大変なことになってしまうところを、ナッキーがちゃんとまとめてくれている。これは毎回そうなんですけど「今回はこういうふうにいこうよ」って言ってくれるんですよ。今回であれば、僕が「中川さんが歌うんだから」って考えて持っていったピアノアレンジを聴いた上で、きちんと舵取りをしてくれるんです。ミックスにしても、ナッキーがちゃんとやってくれるから、アレンジがド直球でボーカルは女性なんだけど、ちゃんと特撮らしい音になってるんでしょうね。
- 特撮 ニューシングル「シネマタイズ(映画化)」/ 2014年1月22日 / キングレコード / KICM-1488
- 1200円 / KICM-1488
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収録曲
- シネマタイズ(映画化)
[作詞:大槻ケンヂ / 作曲:NARASAKI / 編曲:特撮] - 世界中のロックバンドが今夜も…
[作詞:大槻ケンヂ・メーテル / 作曲:NARASAKI / 編曲:特撮] - 一点もの
[作詞:大槻ケンヂ / 作曲:NARASAKI / 編曲:特撮] - ハンマーはトントン
[作詞:大槻ケンヂ / 作曲:三柴理 / 編曲:特撮] - シネマタイズ(映画化)(off vocal ver.)
- 世界中のロックバンドが今夜も…(off vocal ver.)
- 一点もの(off vocal ver.)
- ハンマーはトントン(off vocal ver.)
- シネマタイズ(映画化)
- 中川翔子×特撮 ニューシングル「ヌイグルマーZ」/ 2014年1月22日発売 / キングレコード / KICM-1487
- 1200円 / KICM-1487
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収録曲
- ヌイグルマーZ
[作詞:大槻ケンヂ / 作曲:NARASAKI / 編曲:特撮] - 遊星歯車機構
[作詞:大槻ケンヂ / 作曲:NARASAKI / 編曲:高橋竜] - 「マリリン・マラソン」
[作詞:大槻ケンヂ 作曲:NARASAK / 編曲:特撮] - ヌイグルマーZ(off vocal ver.)
- 遊星歯車機構(off vocal ver.)
- 「マリリン・マラソン」(off vocal ver.)
- ヌイグルマーZ
特撮(とくさつ)
2000年、筋肉少女帯を脱退した大槻ケンヂ(Vo)がNARASAKI(G / COALTAR OF THE DEEPERS)、三柴理(Piano, Key)、ARIMATSU(Dr)、内田雄一郎(B / 筋肉少女帯)とともに結成したロックバンド。同年2月に1stアルバム「爆誕」をリリースしツアーを行うが、ツアー終了後に内田が脱退。以後はサポートベーシストを迎えて活動を継続する。2006年に大槻の筋肉少女帯再加入を機に活動を休止。2011年4月にライブツアー開催を突然発表し、同年6月にはアルバム「5年後の世界」を、2012年12月に7年ぶりのオリジナルフルアルバム「パナギアの恩恵」を発表した。した2014年1月には大槻の小説「縫製人間ヌイグルマー」を原作とした映画「ヌイグルマーZ」が公開され、そのオープニングテーマ、エンディングテーマ、劇中歌を担当。映画の主演女優・中川翔子とともに制作したオープニング曲と劇中歌が収録された、中川翔子×特撮名義のシングル「ヌイグルマーZ」と、エンディングテーマと劇中歌が収められた特撮名義のシングル「シネマタイズ(映画化)」をリリースした。