ときのそら「Sign」インタビュー|“普通の女の子”がVTuberシーンを代表するアイドルに……5年間の軌跡を振り返る (2/2)

配信のほうが好き

──活動5周年を迎えて率直にいかがですか?

長かったなって。振り返ってみると、あっという間な気がするんですけど、大変な時期もあったから濃密に詰まってる分すごく長く感じられるというか。体感的にはかなりの年数活動したような気分です。でも、5年でここまで濃密に活動できる人はあまりいないと思うので、私はすごく恵まれてるなと思います。

──2022年で活動5周年を迎えるVTuberは少ないと思います。そらさんから見てVTuberシーンの状況は、昔と今ではどういったところが違いますか?

最初の頃は動画主体で、番組的なものが多かったですね。YouTuberとしてデビューしたので、編集してしっかり作られている動画をいっぱい出していくというのが当時の私にとっては正しい動きだったと思うんですよ。そこからいろんな人たちが出てきて、生配信のスタイルに切り替わっていきました。私もずっと動画主体で、配信は週1ぐらいのペースでやっていたから、配信主体の活動に馴染むのは最初難しかったんですけど、やってみた結果、私のようなアイドルの長所は配信のほうが生かせるなと思いました。ファンの方とのコミュニケーションが密に取れますし、気持ちがダイレクトに伝わるスタイルなのでVTuberが広く浸透するきっかけになったと思います。時代に合わせて私たちもスタイルを変えていくことで、いろんな人の指標になっていったんじゃないかと思います。

ときのそら

──そらさんは、動画と配信だったらどちらが好きですか?

配信です。動画は撮れ高が絶対に必要なんですよ。活動を始めた頃のときのそらの宣伝文句が「普通の女の子」で。実際にそうだったから、撮れ高がなくて大変でした(笑)。配信だと意図しなくても自然とトラブルが起きて、そのトラブルが勝手に撮れ高になるんですよね。それと撮ってからしばらくして公開した動画について感想をもらうのと、その場で感想を読めるのでは全然感覚が違って。私はダイレクトにみんなの気持ちが知りたかったので配信のほうが好きです。

──確かにリアルタイムで感想をもらえたり、応援されたりするほうがテンション上がりますよね。

そうですね。テンションが上がりすぎて配信が終われない、みたいなこともあります(笑)。

音楽は私をアイドルにしてくれる

──5年間の中でターニングポイントになった出来事は?

こういった質問をいただいたときに一貫してお伝えしてるのは、さいたまスーパーアリーナで行われた「ニコニコ超パーティ2018」ですね。それまではライブ自体そんなに出たことがなくて、こんなに大きなステージでのライブは初めてだったんですよ。なので初めて観てくれた人を意識したステージでした。「こんなにたくさんの人から歓声をいただける環境でライブができるなんてなかなかない」と思ったのと、いつどんな場所に呼ばれても最高のパフォーマンスができて、みんなが自然に音楽にノれるようなアイドルになりたい!!と思ったのが「ニコニコ超パーティ2018」でした。

──2018年の時点でVTuberがさいたまスーパーアリーナのような大きなステージに立つのは画期的なことでしたね。ほかに印象的な出来事は何かありましたか?

もちろん自分の初ワンマンライブもですけど、初めてのツーマンライブ「TUBEOUT! vol.1」は特に印象深いです。銀河アリスちゃんとライブをしたんですけど、あの頃は「四月一日さん家の」やアルバムの制作とかを並行して配信などもやっていて、すごく忙しかったんです。そんな中でやったのが「TUBEOUT!」で、誰かと一緒に本格的にライブを作ることが初めてだったんですよ。「ニコニコ超パーティ」もたくさんの人と作るライブではあったんですけど、一緒にライブする子の活動スタイルとか、ライブの向き合い方をしっかり見れる機会で、「私もアリスちゃんみたいなパフォーマンスがしたい」「ダンスがうまくなりたい」と感銘を受けたんです。

──配信やゲーム実況などさまざまな活動をされていますが、その中で音楽はそらさんにとってどのような位置付けですか?

私をアイドルにしてくれる唯一の存在ですね。私は配信だと今でも普通の女の子なので、そんな1人の配信者にすぎない私をアイドルにしてくれるのが音楽なのかなと思っています。

──音楽はそらさんにとって大きな存在だと。

そうですね。ほかの活動もあるのでがんばらなきゃならない部分もありますが、アルバムを出すとライブができるし、ファンのみんなに会える楽しみな気持ちが勝っちゃうんだと思います。この気持ちはずっと持っていたいですね。

ときのそら

ファンの人たちがいることで100%になれる人でありたい

──7月にYouTubeチャンネル登録者数が100万人を超えましたが、100万人を超えたときはどんな心境でしたか?

実はなかなか実感が湧かなかったです。気付いたら超えていたからというのもあるかもしれないです。“見守り配信”をしようと思っていたんですけど、朝起きたらもう100万人いっちゃってたんです(笑)。でも、周りがすごく喜んでくれて。そらとも(ときのそらファンの呼称)さんやマネージャーさん、えーちゃん(ホロライブスタッフの友人A)なんかも私よりもうれしそうで、会うたびに「おめでとう」と言ってくれたので、登録者100万人突破ってみんなにとっても大きいことだったんだと実感しました。

──本人がそこまで数を意識していなくても、普段から活動を見守ってるファンの方はうれしかったでしょうね。

「ここまで応援してきてよかった」とか「そらちゃんが幸せそうでうれしい」とか、そういうコメントが届いたのが何よりもうれしかったです。ファンの方は私のことを家族のように思ってくれてると感じているんですけど、それを実感する機会は少なくて。YouTubeのチャンネル登録が100万人達成したときに、改めて私のことを大切に思ってくれてるんだと実感が湧いたというか、それが一番うれしかったことです。みんながときのそらのことを大切に思ってくれてる気持ちを、これから何倍にもして返していきたいなと思いました。

──達成感や周りの思いを実感しながら、これからもがんばろうという気持ちになったんですね。

はい。100万人達成を到達点にしちゃうと先に進めないなと思ったので、1つの目標が叶ったという気持ちでいたいなと。

──そういった達成感を得られるのはホロライブの影響もありますか?

ホロライブがなかったら私は存在していないので、かなりありますね。今では後輩も増えて、頼れる存在が増えたのはすごくうれしいです。メンバーそれぞれ活動スタイルが全然違うので日々刺激を受けています。アイドルという存在は音楽以外の活動も重要だと私は考えていて、ホロライブメンバーのいろんな活動を見て見習うべきことはしっかり見習っていこうと思っています。

──これからどのような活動をしていきたいですか?

アイドルであることは続けたいです。アーティストとアイドルの違いって、ファンとの関係値だと思うんです。アイドルはファンと一緒に成長していける存在ですし、ファンがいないと輝けない存在だと思っています。アーティストと呼ばれる人たちは、楽曲や歌唱力、もともとのパワーが私とは比べ物にならないくらいすごいけど、私はファンの人たちがいることで100%になれる人でありたいです。人と合わせるのも好きなので、共演させていただく方々といいハーモニーを作り出して、誰と共演しても安心だと思ってもらえるようになりたい。

──チャレンジしてみたいことはありますか?

バラードが好きなので、いつかバラードをメインにしたアコースティックライブをやってみたいですね。今は明るい曲のイメージが強いですが、「ときのそらはバラードもいいよね」と思ってもらえるようになりたいです。最近海外に行く機会もあったので、海外の人たちにも私のことを身近に感じてもらいたいですし。海外でライブやコミュニケーションが取れるイベントができたらうれしいです。

田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)コメント
(「ピッとして!マーマレード」作詞作曲)

田淵智也(UNISON SQUARE GARDEN)

ときのそらさんの「ゆっくり走れば風は吹く」は2020年最も衝撃を受けた楽曲の一つだったかもしれません。

ヴァーチャルシンガー界屈指のこの異常なまでのハイトーンをどう活かすか相当難航すると思ったんですが、楽曲打ち合わせをした帰りの自転車ですんなりサビが浮かんだので、それに従って作っていきました。

夢に向かって真っ直ぐ走っている彼女を鼓舞するような歌詞が書けたかどうかは彼女のこれからが証明してくれるのかもしれません。

これからも応援しています。

ときのそらライブ情報

ときのそら 5th Anniversary Live「宇宙と時空のミルキーウェイ」

2022年11月19日(土)東京都 かつしかシンフォニーヒルズ モーツァルトホール
[昼の部]OPEN 11:00 / START 12:00
[夜の部]OPEN 16:00 / START 17:00

※SPWNにて配信あり。

プロフィール

ときのそら

5月15日生まれ、22歳のVTuber。2017年9月よりYouTubeチャンネルでのライブ配信や動画投稿を中心に、親友兼裏方担当の友人A(えーちゃん)やくまのぬいぐるみあん肝と共に活動している。2019年3月にビクターエンタテインメントよりアルバム「Dreaming!」でメジャーデビュー。活動5周年を迎えた2022年9月に4thアルバム「Sign」をリリースした。横浜アリーナでの単独ライブを目標に掲げている。