ナタリー PowerPush - 土岐麻子
「あなたって不思議だわ」CM&カバーで綴った“声”のアルバム
今の気分を忘れたくない
──アルバムタイトルにある“LIGHT!”ですけど、これはタバコの「○○ライト」「○○メンソール」のライトと同じニュアンスですか?
そうなんです。「CMで聴いたことあるかも」とか「この曲知ってる!」「この曲をカバーしてるんだ?」みたいな、聴きなじみの良い曲ばかりを集めたアルバムなので、“お手軽”的な意味の「LIGHT!」。ベストアルバムのライトサイド、みたいなイメージですね。「Marlboro LIGHTS」とか「Coca-Cola Light」みたいな。
──ビジュアルは「乱反射ガール」に引き続き弓削匠(yuge)さんが手がけていますが、土岐さんからはどういうイメージを伝えたんですか?
「乱反射ガール」はちょっと攻撃的でしたけど、基本的な部分はそのままで、もうちょっと柔らかく出す方向で考えました。爽やかで軽い感じ。
──ビジュアルイメージも含め、今作はベストアルバム的な作品ながら、どこか「乱反射ガール」と地続きな印象もありますね。
アルバムを作るときは毎回「今回はこういう色で」とか「今回はエレクトロな感じで」とか、ファッションのようにそのときの気分を正直に取り入れて、新たなコレクションを発表するような感覚が、それこそCymbals時代からずっとあったんですけど、「乱反射ガール」を作ってからは少し違ってきてるんです。2011年になって心機一転……という感じにも、実はあまりなっていなくて。地続きでいたいっていうふうに思っているんですよね。「乱反射ガール」を作ってるときの気持ちだったり、作り終えてわかったこと、今の気分をあまり忘れたくないなっていう。
──先程「自分の立ち位置や立ち振る舞いについて深く考えるのをやめた」とおっしゃってましたけど、自分が何者なのか、むしろハッキリ見えたところもあるんじゃないですか?
地に足が付いてる感じ? ふふふふ。
──「乱反射ガール」のあとにこのアルバムが出ることで、土岐麻子というアーティストがどういう人なのかがクリアに見えてくる気がします。
最初はこのアルバムを出すよりも、早く次のオリジナルアルバムを作りたいという思いもあったんですね。だけどいざできあがってみると、意外と今の気分が詰まったアルバムになったような気がして。
──より自分を見つめることができたような?
そうですね。だからこのアルバムが次のヒントになりそうですね。
自分がやりたかったことに年々近付いている
──ラジオやテレビなどで初めての場所に出たとき、自己紹介のようなものを求められますよね。そんなとき、自分のことをどう説明してます?
いやー、どうなんですかね。ポップス……シンガー? よくわからないですね。
──ラジオなんかではよく「あのCMでおなじみの土岐麻子さん」みたいな感じで紹介されますよね。歌もナレーションも多くやられているし。言うなれば「CMの女王」?
あははは(笑)。それが伝わりやすいのであれば、どうぞどうぞっていう感じですかね。
──CMの仕事って楽しいですか?
大好きですね。CM仕事の何が好きなんだろうと考えてみたら、もともと私テレビ番組の制作会社に入りたくて就職活動してたぐらいで、そもそもチームでひとつのものを作るという作業がいいんですよ。
──ただアルバムやシングルのレコーディングをするよりも、チームの幅が広くなるわけですよね。CM制作の場合は。
そうそう。一期一会みたいな現場ですけど、かかわってる人も多いし「商品が主役」というのが具体的にあるのも面白いんですよ。「絶対このCMを観た人を振り向かせてやる」っていう。ミカンの皮とか剥きながらテレビつけて"ながら見"してる人を「ハッ!」っと惹きつけたくて、念力込めながら歌ったりしゃべったりしてます(笑)。
──もともとテレビ制作の世界に興味がありながら音楽の道に進んだ土岐さんにとって、「CMソングを歌うシンガー」というのはある意味理想型ですよね。
そうですね。自分がやりたかったことに年々近付いている気がします。22歳ぐらいの頃「何かものづくりをしたい。個人競技じゃなくて団体競技で」って思ってたことが着々と叶っていくような。特に「Gift」は、EPOさんや資生堂という憧れの世界と現実でご一緒できて、いろんな人との結びつきを実感できた曲なので。自分のやるべきことがハッキリした1曲だったなという感じですね。
2011年は「勇気」
──では、今後の目標として何か考えていることはありますか? 短いスパンでは2011年の目標。さらにもっと大きな……人生設計と言うとおおげさですけど。
ありますけどね、あんまり言わないようにしようかな(笑)。あははは、ウソです。近いところではやっぱり、オリジナルアルバムを作ることですよね。2011年のうちには作りたいです。「乱反射ガール」は"80年代"っていう代名詞で受け取られることが多かったし、私もインタビューでそういうふうに答えてきましたけど、そういうくくりが取れていったらいいかなぁって。
──確かに今の土岐さんの音楽は説明が難しくて。「80's」とか「シティポップ」って言葉を使えば伝えやすくはあるんですけど、ひとくちにそう言ってしまうのもちょっと違うなと。明確に表す言葉があればこちらとしては非常にありがたいんですけどね。
そうですね(笑)。「Gift」の歌詞の「ありのままでいたら愛されないと 思い込んでいた 私のイメージをほどいてくれた」って、今感じてる気分の答えなんじゃないかと思えるところもあるんですよ。そのまま恋愛の歌として受け取ることもできるけど、それだけじゃなくて。自分がどんな役割か、どの椅子に座るべきか、なんて考えてもしょうがないなって思った私の気持ちとすごくリンクするんです。ありのままでいるのは結構勇気がいることだけど、その勇気をね、知ってる人の歌なんだなって思うんですよ。うん、2011年は「勇気」ですね。小学生の目標みたいですけど(笑)「勇気」ですよ今年は。何事も、自分で「好きだ!」と思うものを堂々と出していく勇気を大事にしたいです。
CD収録曲
- Gift ~あなたはマドンナ~
- How Beautiful
- Waltz for Debby [BILL EVANS]
- ALL YOU NEED IS LOVE [THE BEATLES]
- い・け・な・いルージュマジック [忌野清志郎+坂本龍一]
- 小麦色のマーメイド [松田聖子]
- Reach Out, I'll Be There [THE FOUR TOPS]
- サマーヌード [真心ブラザーズ]
- HUMAN NATURE / sings with 和田 唱 from TRICERATOPS [MICHAEL JACKSON]
- Lucy In The Sky With Diamonds [THE BEATLES]
- 青空のかけら [斉藤由貴]
- COME ON A MY HOUSE [江利チエミ]
CD収録曲
- Gift ~あなたはマドンナ~
- Medley of CM & Original Songs 2008-2010
(ALL YOU NEED IS LOVE ~ Waltz for Debby ~ How Beautiful ~ 乱反射ガール) - Gift ~あなたはマドンナ~ (Instrumental)
スプリング 春 カム! 土岐麻子 LIVE LIGHT
-春の、大音楽会-
~声出していこう 胸張っていこう
オープンでブライトな 2011春の土岐麻子!
- 2011年3月9日(水)
大阪府 Billboard Live OSAKA
[1st] OPEN 17:30 / START 18:30
[2nd] OPEN 20:30 / START 21:30
サービスエリア 6500円
カジュアルエリア 5000円(1ドリンク付き) - 2011年3月11日(金)
東京都 Billboard Live TOKYO
[1st] OPEN 17:30 / START 19:00
[2nd] OPEN 20:45 / START 21:30
サービスエリア 6500円
カジュアルエリア 4500円(1ドリンク付き) - 2011年3月12日(土)
東京都 Billboard Live TOKYO
[1st] OPEN 17:00 / START 18:00
[2nd] OPEN 20:00 / START 21:00
サービスエリア 6500円
カジュアルエリア 4500円(1ドリンク付き) - 2011年3月21日(月・祝)
愛知県 名古屋ブルーノート
[1st] OPEN 16:00 / START 17:00
[2nd] OPEN 19:00 / START 20:00
自由席 6500円
土岐麻子(ときあさこ)
1976年東京生まれ。1997年にCymbalsのリードボーカルとして、インディーズから2枚のミニアルバムを発表する。1999年にはメジャーデビューを果たし、数々の名作を生み出すも、2004年1月のライブをもってバンドは惜しまれつつ解散。同年2月には実父にして日本屈指のサックス奏者・土岐英史との共同プロデュースで初のソロアルバム「STANDARDS ~土岐麻子ジャズを歌う~」を発表する。透明感のあるボーカルには熱心なファンが多く、2010年5月には豪華アーティストを作家陣に迎えたオリジナルアルバム「乱反射ガール」をリリースしている。