ナタリー PowerPush - tobaccojuice
スタンダードナンバーを大胆リメイク tobaccojuiceが示すカバーアルバムの新しい形
後世に残るメロディを作りたい
──オリジナルアルバムを作るときと違うところはありましたか?
メロディを作らなくてよかったので、その部分は楽でしたね。
──逆に苦労した部分は?
すでにあるメロディを崩さないように気を使いましたね。オリジナル曲の場合は詞がよくできていたら、歌詞を生かすためにメロディを変えることができるんですけど、カバーの場合はメロデ ィに沿わないといけないんで。オリジナルは最初の発想が大変だけど、自分のやりたいようにできる自由がある。
──カバーアルバムを作ってみて、次回作にフィードバックできるものはありましたか?
いいメロディを残していきたいなと思うようになりましたね。今回カバーした曲はこれまで俺が鼻歌で歌ってきたような曲なんですけど、言葉を乗せてちゃんと歌うことで改めてメロディの素 晴らしさを実感して。後世に残るようないいメロディを作っていきたいし、俺のメロディに対して外国の人たちが詞を乗せるような曲が作れたら楽しいだろうなと。
──カバーをきっかけにメロディに開眼した?
そうですね。いいメロディって実際に歌ってみると難しいんですよ。なんとなく歌ってるとわからないんですけど、実は細かいところまで作り込まれていて適当に作れるものじゃない。昔から 好きな曲だったから理解してたつもりだけど、実際に歌ってみると「ダニー・ボーイ」のメロディはものすごく複雑なんだって気付いて。俺はそれっぽいものを歌ってただけで、実際は違ったんです。だから本当にいい曲を作ろうと思ったら、音楽の勉強もしないといけないし、人間としても人生経験を積まなきゃいけない。
──先ほどカバーはライフワークの1つだと言ってましたが、今後作るとしたらどんなものになりそうですか?
基本的な方向性は今回と同じようにスタンダード曲のカバーになると思いますけど、クラシックに歌詞を乗せて歌ってみたいですね。
──それは面白そうですね。
ええ。クラシックに自分の言葉が乗ることで、また違うなにかが生まれると思うので。
──ところで、なぜ「ゆめのうた」というタイトルをつけたんですか?
歌詞の中に「夢」という言葉がたくさん出てきて、「煙が目にしみる」に出てくるような恋の夢もあるし、「オーラ・リー」みたいに普通に眠ってるときに出てくる夢もあるし。「ザ・ローズ 」みたいに夢を叶えることだったり、いろんな夢がカバーした曲の中に存在してて。今回選んだ曲が自分にとって夢心地にしてくれる曲だし、いつか作ってみたい理想の曲でもあって。マネージャーがふと「(このアルバムは)『ゆめのうた』みたいだね」って言ってて、確かにそうだなと思ったのでそのまま採用しました。
tobaccojuiceは4年前に始まった
──話は変わるんですが、tobaccojuiceは今年で結成10周年なんですよね。
ええ。でも、バンドとしてはまだまだですね。俺とギターの大久保君が出会ってから10年なんですけど、メンバーチェンジもあったし、ダラダラ活動してた時期もあったし。活動期間は10年だ けど、俺はベースの岡田君が入ってからtobaccojuiceは始まった感じがしてて。今のメンバーになってから4年目なので、バンドとしてはこれからかなって。
──確かに岡田さんが入ってからのtobaccojuiceは、その前に比べて雰囲気もサウンドも変わった印象があります。
今の4人になってから、改めて「いい音楽を残していこうよ」って決意して。自分たちだけでやれるところまでやろうと決めて、自主企画も始めて。しばらくバンドだけの状態が続いたんだけど、やっぱりスタッフが必要だし事務所も必要だということになって、どこに行けば自分たちがやりたいことができるのか話し合って。その課程でレコード会社の人の目に留まって、さらに(柏原)譲さんとも出会って今に至る感じですね。これからどうなってくかわからないですけど、俺たちは俺たちなりに最高のものを出していこうと思ってます。
──tobaccojuiceにとって最高の音楽とはどんなものですか?
メンバー全員が最高の音と気持ちを出して完成した音楽ですかね。皆が目一杯自分を表現しつつ、1つのものを作れている状態を目指していければと思ってます。
──現時点での実現度合いは?
ちょっとずつできてるけど、今は50%くらい。ひとりひとりが自分のやりたいことを考えて一生懸命音を出したときに、美しい音楽ができる気がしていて。そこまでいくにはもうちょっとかか るかもしれないけど、今年中には形にしたいですね。
CD収録曲
- 煙が目にしみる - Smoke Gets In Your Eyes
- サリーガーデン - Down By The Salley Gardens
- ムーンリバー - Moon River
- ザ・ローズ - The Rose
- テネシーワルツ - The Tennessee Waltz
- ブルーベリー・ヒル - Blueberry Hill
- オーラ・リー - Aura Lee
- ダニー・ボーイ - Danny Boy
tobaccojuice(たばこじゅーす)
松本敏将(Vo,G)、大久保秀孝(G)、岡田圭市(B)、脇山広介(Dr)によるロックバンド。1999年に大久保を中心に結成される。下北沢界隈を拠点にライブを行いながら、デモ音源 を制作。2003年に1stミニアルバム「喜びがやって来る」をリリースする。ロック/ブルース/レゲエなどの要素を融合させた音楽性は自由そのもの。また、松本が手がけるファンタジックな歌詞は狂気と穏やかさの両方を 内包し個性的な世界観を構築している。2008年6月には柏原譲(Polaris/OTOUTA)をプロデューサーに迎えたアルバム「HEADPHONE GHOST」を発表。バンドの新たな側面を披露し高く評価された。