音楽ナタリー PowerPush - T.M.Revolution
股間からイナズマまで 西川貴教の現在地
ジャズフュージョン+J-POP=?
──この曲のアレンジは単にラウドな方向に振るのではなく、複雑なリズムパターンのもと、端々にカラフルな要素が詰め込まれていますよね。
音に関しては今もいろいろ模索していて、主題歌のオファーをいただいて作る際には、どうしても速いテンポでラウドな方向に行きがちだったんですけど、それだけじゃ物足りない。それで、もともとTotoが好きだったりしたこともあって、ジャズフュージョンとJ-POPを混ぜて、かつテンポが速いものはどうかなって思ったんです。四つ打ちのジャパニーズEDMというか、今まで聴いたことがなかったものができるんじゃないかって。
──なるほど。でも西川さんからTotoの名前が出てくるとは思わなかったです。
いや、世代的にはそうですよ。音楽を聴き始めた小学校の高学年くらいのときは、やっぱりビルボードのTOP40から入ってるんで。ChicagoとVan HalenとShakatakを一緒に聴いてた。だからジャズフュージョンみたいな要素を取り入れることに違和感はないですし、それを人力でやるなら、これぐらいぶっ飛んだアレンジでやりたいなっていうところからのスタートでしたね。
──それにしてもこの演奏はバカテクですよね。アンサンブルにもボーカルにも隙がない。
いつもほかのミュージシャンに「これ打ち込みだよね?」「えっ、こんなこと生でやってるの!?」って言われてますから(笑)。でもこのビデオクリップは歌も粗いし、細かいとこうんぬんよりは気持ちが表現できてればよし、みたいなとこはありますけどね。
やったことがないから面白い
──今年2月の「Count ZERO」から始まって、この「突キ破レル-Time to SMASH !」「Phantom Pain」とシングルのリリースが続いています。かなり精力的に動いてる印象がありますが。
そうですね。当初は正直こんなに動くつもりはなかったんですよ。
──あ、そうなんですか?
20周年に向けてね、いろいろ吸収したり見直したりして、インプットの年にできたらいいなと思ってたんですけど……。
──全然そうは見えないですね。
うん、僕もそう思います(笑)。
──じゃあこのリリースラッシュも戦略的に決めたわけではなく、CMや作品に求められるままみたいな?
頼めばヤラせてくれる女みたいになってきました(笑)。
──あははは(笑)。
それは冗談としても、実際いいタイミングでお話をいただけて、これはぜひやろうっていうことですよね。ずっとお付き合いがある「消臭力」なんかもそうですし。そういう縁を大事にしていくことで、おのずとその先にあるものも見えてくるんだろうなって感じてるんです。
──なるほど。T.M.Revolutionが古くならない理由はそのあたりにあるような気がしますね。これだけ長くやっていても過去の人にならない。
えっ、そうですか?
──ファンに向けていい作品を作って、いいライブをやるだけじゃなく、西川さんはCMソングやアニメ主題歌、舞台、ニコ生、バラエティ番組への出演までガンガン露出して、常に世の中に対してにぎやかな話題を提供し続けていますよね。新しいことにどんどんチャレンジしている姿勢がすごいと思うんです。
ああ、それで言うと今回のCMもそうですけど、何か新しい仕事が来たときに「いや、それは俺やったことないからやめとくわ」って言ってたらたぶん今の立ち位置はなかったと思うんですよ。でもそれを「やったことないし逆に面白いんじゃないか」って考えてやっていくことで、皆さんに「あいつまだしぶとくやってやがる」って思ってもらえてるのかもしれないですね。
──それは、単にいい作品を作る、いいライブをやるっていうのとは違う筋肉を使う作業ですよね。
いいライブをするのはもちろんすごく大事だし、ミュージシャンの本分として大事にしなきゃいけないとこなんだけど、僕を応援してくれる人には小さなお子さんもいれば年配の方もいる。そういう方にもある程度受け止めてもらいたい、楽しんでもらいたい、ってことは考えるようになりました。応援してくれる方々を一緒に連れて、20周年とかその先を迎えたいって、今はすごく強く思ってるんです。
──本分である音楽制作とそれ以外の活動は、西川さんの中で地続きなんですか?
そうですね。新曲のプロモーションのためにバラエティ番組に出てるわけじゃないですし。テレビに出てる自分とステージに立ってる自分がかけ離れてる感じはしないです。
──ただテレビやCMでの露出が増えて親しみやすさが増すと、同時にカリスマ性が薄れてしまうという懸念はないですか?
ああ、確かにライブで会えて貴重だなって感覚は減りますよね。でも、あんまりそこに問題は感じないというか、それがT.M.Revolutionの面白さなのかもしれないですね。「まあ何やっててもいいか」「西川だから仕方ないか」みたいな(笑)。
──ライブではお客さんがみんな信者のように手を振っていて、ステージ上の西川さんは完全にカリスマに見えるのに、同じファンが「西川ちゃーん!」って呼びかけてMCにツッコミを入れたりもする。あの距離感ちょっとおかしいですよね。
そうですね。さっきまであんなに崇めてたのにっていう(笑)。テレビで地方ロケとか行っても平気でおばちゃんとかが「あ、消臭力の子!」って言うんです。でもちゃんと僕のことは認識してて「で、次のシングルいつ出んの?」みたいなこと聞かれるわけですよ。そこはやっぱり不思議な感じですよね。
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- ニューシングル「Phantom Pain」 / 2014年9月3日発売 / EPICレコード
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1800円 / ESCL-4272~3
- 通常盤 [CD] / 1200円 / ESCL-4274
CD収録曲
- Phantom Pain
- Count ZERO(Re:boot)
- 臍淑女 -ヴィーナス-(Re:boot)
- Phantom Pain(Original Backing Track)
初回限定盤DVD収録内容
- 「Phantom Pain」Music Video
- 「Phantom Pain」TV-SPOT
- ニューシングル「突キ破レル-Time to SMASH !」 / 2014年8月6日発売 / EPICレコード
- 完全生産限定盤A [CD+グッズ] / 2592円 / ESCL-4258~9
- 完全生産限定盤B [CD+グッズ] / 1620円 / ESCL-4260~1
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1944円 / ESCL-4262~3
- 通常盤 [CD] / 1296円 / ESCL-4264
CD収録曲
- 突キ破レル-Time to SMASH !
- Thread of fate
- 突キ破レル-Time to SMASH !(Original Backing Track)
- Thread of fate(Original Backing Track)
- 突キ破レル-Time to SMASH ! -アニメバージョン-
- Thread of fate -アニメバージョン-
初回限定盤DVD収録内容
- 「突キ破レル-Time to SMASH !」Music Video
- 「Thread of fate」Music Video
- TVアニメ「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」ノンテロップ・オープニング
- TVアニメ「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」ノンテロップ・エンディング(第1期)
- TVアニメ「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」ノンテロップ・エンディング(第2期)
T.M.Revolution(ティーエムレボリューション)
1970年滋賀県生まれの西川貴教によるプロジェクト。1996年5月にシングル「独裁-monopolize-」でメジャーデビュー。キャッチーな楽曲と圧倒的なライブパフォーマンスで人気を集め、「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」などのヒット曲を連発する。2008年には「滋賀ふるさと観光大使」に任命され、翌2009年から滋賀県初となる大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」を連続開催。その他、司会・俳優など幅広い分野にて精力的に活動を展開している。2013年には水樹奈々とのコラボシングル「Preserved Roses」「革命デュアリズム」を発表し同年末の「NHK紅白歌合戦」にも出演した。2014年8月に「突キ破レル-Time to SMASH !」、9月に「Phantom Pain」というシングル2タイトルを2カ月連続リリース。