ナタリー PowerPush - T.M.Revolution
20周年に向かう覚悟と賛否両論ツアーの裏側
気が狂ったのかと思われた
──映像はかなり凝った内容でしたが、制作はスムーズでしたか?
いや、それがスタッフは誰も賛同してくれなくて(笑)。
──そうだったんですか?
賛成する人間が誰1人いない状況で作ってましたからね(笑)。僕と映像監督の森田(一平)くんの2人以外は誰もやりたがってなかったと思います。ビデオクリップとライブで上映する映像のためだけに、こんなに予算使って何考えてんのって。
──確かに常識では考えられない規模の映像でした。
気が狂ったのかって思われたけど。でも僕はあれをどうしても作りたかったし家族にも観せたかった。作品を私物化するようで、ファンの皆さんには申し訳ないですけど。
──そういう個人的な思いがベースになって作品が生まれるというのは、T.M.Revolutionの制作では珍しいことですよね。
そうですね。ちょうど10周年を超えたぐらいからT.M.Revolutionはファンのものであると思うようになったし、だからこそ僕はファンのために何ができるかだけを考えて腹をくくってやってきたわけです。でも今回だけはそこに徹することができなかったんですよね。ツアーの序盤はもうスタッフとつかみ合いのケンカをするぐらいの状態でやってました。本当に地獄でしたね。
張り続けた意地の種明かし
──ツアーでのお客さんの反応はどうでした?
酷評でした。求めてたのはこういうものじゃないって。それはそうだろうなって思いました。
──セルフカバーアルバム「UNDER:COVER 2」がリリースされたタイミングでのツアーでしたし、コラボ参加したアーティストをゲストに呼んで、名曲をひたすら繰り出すようなライブが期待されていたわけですよね。
普通に曲だけやってればそれだけで楽しいライブになったのになぜこうしたの?って。そういう意見のほうが圧倒的に多かったです。でもそこで酷評に負けて種明かししてしまうようではダメだと思った。ちゃんと完結させるまでは意地を張り続けるしかない。それが男の流儀だと思ってました。まあ伝わらなかったですけどね(笑)。
──じゃあ映像作品が発売されるタイミングのこのインタビューが、ある意味種明かしになるわけですね。
はい。僕がやりたかったこと、伝えたかったことの意味はおそらくこの映像を観ていただければ、だいぶ理解してもらえるんじゃないかと思ってるので。
ファンを子供扱いしない
──自分があのライブを観て感じたのは、人の存在の儚さや“死と再生”のイメージでした。そういった重たいテーマを濃厚に打ち出していたし、お客さんにはそこがT.M.Revolutionらしくないと思われたのかもしれない。
そうですね。その通りだと思います。あのツアーでは“生”よりもその裏側を描くことに注力していたので。“死”や“終わり”みたいなものをきちんと描くことで、逆に“生”というものの輪郭を感じとってもらえたらいいなと思ったんです。でも実際のライブだと手前に演奏する人がいて後ろに映像があって、それが同時に進行していく。何が起きてるのかわからないまま説明も一切なく、お客さんを突き放した状態が2時間続くという(笑)。ある種の拷問でしたよね。観てくださった皆さんには本当に感謝してます。
──でも戸惑いながらも楽しかったですけどね。
そう、ナタリーさんはライブが終わったあとに「西川さん、何やってるんですか!?」って言ってくれたじゃないですか。そう言ってもらえたことで僕は「あ、この人に伝わったんだ」って思えてすごくうれしかったんですよ。こういう作者の意図とか意志が反映されたものにちゃんと反応してくれる人がいるんだなって。
──その場では驚きましたけど、意義のあるライブだったと思います。ファンの皆さんもそれぞれに西川さんのメッセージを受け止めたんじゃないでしょうか。
僕自身、確かにこれをやりきったことで次のステップが見えたところはありますね。今後作っていく作品は、単に受け手の求めるものに応えるだけじゃなく、自分の気持ちもきちんと入れ込んで届けていけたらって。あのツアーも「1回観ただけじゃわかりません」っていう方もいれば、思いのほかたくさんの情報を受け取ってファン同士で「自分はこう思う」とか「こういうふうに感じた」みたいなことを語りあってくださった方もいたみたいなので。そういうのを見ていると「きっとこれぐらいしか理解してくれないだろうなあ」と思って甘い球を投げるんじゃなく、みんなが手を伸ばして受け止めてくれることをもっと期待してもいいのかなって。要は子供扱いしないというか。
──ファンを信頼して重たい球、難しい球も投げるということですよね。
うん、一緒にやっていく以上、僕もファンとそういう信頼関係でありたい。ただ基本的にはファンの皆さんにはハッピーな気持ちになってもらいたいって思ってますよ。それこそがT.M.Revolutionのなすべきことだと思う。時折こういうことになっちゃったりしますけど、基本的にはハッピーをお届けしていくので安心してまた観に来てください(笑)。
- T.M.Revolution | SCANDAL スプリットシングル「Count ZERO | Runners high ~戦国BASARA4 EP~」 / 2014年2月12日発売 / EPICレコードジャパン
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 1800円 / ESCL-4156~7
- 通常盤 [CD] / 1223円 / ESCL-4158
CD収録曲
- Count ZERO
- Runners high
- Count ZERO (Instrumental)
- Runners high (Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
- T.M.Revolution | SCANDAL 平成ガチBATTLE ~乃木坂の戦い~
- ライブDVD / Blu-ray「T.M.R. LIVE REVOLUTION'13 -UNDER II COVER-」 / 2014年2月12日発売 / EPICレコードジャパン
- 「T.M.R. LIVE REVOLUTION'13 -UNDER II COVER-」
- DVD2枚組 / 5800円 / ESBL-2347~8
- Blu-ray Disc / 6800円 / ESXL-40
- 初回生産限定盤 豪華三方背BOX 28Pフォトブックレット付き
T.M.Revolution(てぃーえむれぼりゅーしょん)
1970年滋賀県生まれの西川貴教によるプロジェクト。1996年5月にシングル「独裁-monopolize-」でメジャーデビュー。キャッチーな楽曲と圧倒的なライブパフォーマンスで人気を集め、「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」などのヒット曲を連発する。2008年には「滋賀ふるさと観光大使」に任命され、翌2009年から滋賀県初となる大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」を連続開催。その他、司会・俳優など幅広い分野にて精力的に活動を展開している。2013年には水樹奈々とのコラボシングル「Preserved Roses」「革命デュアリズム」を発表し同年末の「NHK紅白歌合戦」にも出演。2014年2月にPS3用ゲーム「戦国BASARA4」のオープニングテーマとなる新曲「Count ZERO」をリリース。