ナタリー PowerPush - T.M.Revolution
“異世界感”をさらに追求 セルフカバーでリミッター解放
ゲストクリエイターがくれた“発見”
──西川さん自身、ボーカリストとしての自分の資質についてはどう捉えてるんですか?
えっ、ぜんぜんわからないです! あの、テレビのものまね番組とかで僕の真似してくれてる人がたまにいるんですけど、たいていコスチュームだけ真似してて、歌を真似してくれないんですよね。だからこう……僕の歌には個性がないのかなって思ってた時期もあって。
──そんなことはないと思いますけど(笑)。
そうなんです。“やりづらいだけ”っていうのがまあ結論だったんですけど(笑)。でも僕自身はそこらへんを深く考えたことって実はあんまりなかったりして。だから今回いろんなクリエイターの方と一緒にやったことで発見はありましたね。例えばダブステップっぽい音と僕の声を組み合わせたらどうなるのかとか。最初は雰囲気出すためにオートチューンをかけてみたりもしたんですけど、なんかあれって多少ズレてたりとかしないと……。
──音程がズレてるときにケロケロした声になるって言いますよね。
そうなんですよ。僕の場合はぜんぜんケロらなくて。意味ねえじゃんって話になって結局使わなかったりとか。だから今回改めて感じたのは、歌はどうにもならないってことですね(笑)。こういうエフェクトかけたら面白いかも?とかって頭の中で考えてても、結局は素の歌になってしまうっていう。
──あと今回特に感じたのはボーカルのビート感なんですよね。西川さんのボーカルがリズム隊以上に楽曲全体を引っ張っているという印象が強くて。
あの、人間の声って周波数で言うと、いわゆる440Hzとか442Hzとかあると思うんですけど、僕はどうやらそれよりもちょっと高めみたいなんですね。で、人間の耳って高い音を早く捉えるところがあるから、結果として早く聞こえるのかもしれない。あと僕は普通の人よりも、この音を出そうと思ってから実際に音が出るまでのレスポンスが短いみたいなんです。人間って管楽器と一緒で、声を出そうと思ってから声帯が振動して音になるまでにわずかな間があるんですけど、僕はその間が短くて楽器に近いというか、鍵盤みたいに叩くとすぐ出るっていうか。
──じゃあタイミング的にはジャストで音符に乗ってるにもかかわらず……。
うん、データで見るときちんと合ってるんですけど、でも歌としての立ち上がりっていう意味では前に来る、早く聞こえるっていうのは確かに言われますね。
──面白いですね。あと例えばこのアルバムで言うと「WILD RUSH」の終盤のところ、ビープ音しか鳴ってないトラックなのにボーカルが入ることで、一気にビート感が生まれるんですよね。
ああ、なるほど。ああいうダブステップの曲の場合は「ンナ、ンナ、ンナ」ってちょっと後ろに引っ張るエフェクトのせいで、少しディレイがかかったみたいに聞こえるんです。でもそこに歌が入ってジャストで刻んでくることで、いわゆるグリッドができて、そこで初めてリズムがグルーヴになるんですよね。
これまでの得意技も大事にしたい
──今回のアルバムを聴いてて思ったんですが、サウンドがこれほど変わってもその曲の本質は変わらないんですよね。例えば「Burnin' X'mas」の疾走感、「vestige -ヴェスティージ-」のスケール感。そういう楽曲の本質的な部分をより際立たせるためのアレンジが選ばれているという印象を受けました。
いや、もうその通りですね。やっぱりリリースしてから時間が経って、当初は見えなかったものを、今回きちんと1つずつ形にすることができたというか。例えば5曲目の「last resort」なんていうのは、会話劇で物事が進んでいくストーリーなんですけど、オリジナルバージョンでは僕が1人で歌っていたのを、今回(May J.が参加することで)本当に会話劇として描くことができたんです。「vestige -ヴェスティージ-」なんかも歌の強さというか、ボーカル1本で作る世界観というか、いつかこういうふうにやりたいって思っていたものを余すところなく形にできたので。
──あの、それは西川さんがイメージする世界観が、これまでのT.M.Revolutionのサウンドフォーマットでは表現できないところに到達してしまったということですか?
うーん、それに関して言うと、今まで持ってた武器をみすみす手放すつもりもないんですよね。武藤(敬司)さんのシャイニングウィザードみたいな(笑)、そういう得意技も大事にしたい。自分がスキルアップしていく中で生まれた可能性を利用していくことができればいいなって思ってます。
──なるほど。確かにこのアルバムを聴いたあとで原曲を聴き直してみると「あれ? こんなアレンジだったっけ?」って感じるんですが、でもその感じがすごく愛せる部分だったりもしますしね。
そうなんですよ(笑)。それはほんとにそう。これまでの楽曲を愛してくれた皆さんはこのアルバムを聴いて「もう二度とあのアレンジでは聴けないの?」って不安に思うかもしれないけど。でもそれも含めて自分にとっては大事な軌跡だと思っているんです。
──じゃあこれからはT.M.Revolutionらしさを突き詰めた、さらに新しい展開が期待できそうですね。
はい。この「UNDER:COVER 2」を踏まえての“次”を見せていくことで、ファンの皆さんにはきちんとした答えを出していきたいと思っています。
- ニューアルバム「UNDER:COVER 2」/ 2013年2月27日発売 / エピックレコードジャパン
- 完全生産限定盤 [CD2枚組+オリジナルアンダーウェア]
- 完全生産限定盤
- 完全生産限定盤 Type A / 8000円 / ESCL-4019~4021
- 完全生産限定盤 Type B / 8000円 / ESCL-4022~4024
- 完全生産限定盤 Type C / 8000円 / ESCL-4025~4027
- 初回限定盤 [CD+DVD]
- 初回限定盤
- 初回限定盤 / 3990円 / ESCL-4028~4029
- 通常盤 [CD]
- 通常盤 / 3059円 / ESCL-4030
- 初回仕様ジャケット
- 通常仕様ジャケット
CD収録曲
- LEVEL 4
- 蒼い霹靂
- IMITATION CRIME
- INVOKE
- last resort
- 独裁-monopolize-
- とっておきのおはなし~新説恋愛進化論
- O.L
- Burnin' X'mas
- SHAKIN' LOVE
- Out Of Orbit ~Triple ZERO~
- WILD RUSH
- Albireo-アルビレオ-
- vestige-ヴェスティージ-
- Tomorrow Meets Resistance
完全生産限定盤ボーナスCD収録曲
- Meteor-ミーティア-
初回限定盤DVD収録内容
- イナズマロックフェス2012より、T.M.Revolution LIVEの模様を収録
T.M.Revolution (てぃーえむれぼりゅーしょん)
1970年滋賀県生まれの西川貴教によるソロプロジェクト。1996年5月にシングル「独裁-monopolize-」でメジャーデビュー。キャッチーな楽曲と圧倒的なライブパフォーマンスで人気を集め「HIGH PRESSURE」「HOT LIMIT」「WHITE BREATH」などのヒット曲を連発する。2008年には「滋賀県ふるさと観光大使」に任命され、2009年からは滋賀県初となる大型野外ロックフェス「イナズマロック フェス」を主催。2011年夏にはポルトガルの少年・ミゲルとエステー「消臭力」のCMで共演し話題を集めた。2013年2月にはセルフカバーアルバム第2弾「UNDER:COVER 2」をリリース。