TM NETWORKは常に現役バリバリ!サッシャがツアーで“体感”した最新型TMサウンド (2/2)

三者の絶妙なバランスから生まれるTMサウンド

──ボーカリストとしての宇都宮さん、プレイヤー / シンガーとしての木根さんについてはどうですか?

お二人とも素晴らしかったです。まずは木根さんのギター。どうしても打ち込みのサウンドがメインになるんですが、木根さんのアコギが実はすごくアクセントになっていると思います。もしアコギがなかったら全体的に電子音楽に寄りすぎるかもしれないし、すごく大きな役割を果たしているんじゃないかなと。歌もいいんですよ。木根さんご自身のキャラクターを含め、癒される感じがあって……。仙台の打ち上げのときもそうだったんですが、木根さんは本当に気遣いの人で、“木根さんがいることで救われる”みたいな場面がけっこうあるんですよ。それがTMの音楽性やサウンドにも出てるんじゃないかなと。宇都宮さんはセルフプロデュース能力がある方だと思います。僕はディナーショーのMCやナレーションなどをやらせてもらってるんですが、とにかくプロデュース力がすごい。もちろんスタッフの皆さんの力も大きいと思いますけど、基本的には自分でアイデアを出しているし、ボーカルやパフォーマンスだけではなく、楽器も演奏できるし、実は演出もできる人なんです。TMにおいてはプレイヤーに徹している面もあるけど、小室さんのプロデュースに対して、自分のアンサーをしっかり持っている。なので小室さんも宇都宮さんのパフォーマンスに関してはほとんど何も言わないし、だからこそ伸び伸びとやれているのかなと。音楽的にもかなり融合しているんですよね。小室さんが作る打ち込みサウンドとダンスミュージックだけではなく、ロックをルーツに持っている宇都宮さん、フォークの素養もある木根さんのエッセンスも入ることで、TMの幅広さになっているんじゃないかな。

木根尚登(Photo by Makiko Takada)

木根尚登(Photo by Makiko Takada)

──メンバー個々のセンス、技術が集約されているという意味では、やはりバンドなんですね。

そうだと思います。小室さんは全体の取りまとめ役。宇都宮さんはフロントマンとして脚光を浴びつつ、サッカーで言えばゴールを決めるストライカー的な存在。そして木根さんは癒しだったり安心感を与えてくれるし、彼がいるから3人のバランスが保たれているところがあるのかなと。そういうところも魅力的なんですよね。仙台の打ち上げのときも「すごいバランスだな」と感動したし、3人の関係性を知れば、もっとTMのことが好きになるんじゃないかな。撮影スタッフの方がずっとカメラを回していたので、ぜひドキュメンタリー作品を作ってほしいなと思ってます。

宇都宮隆(Photo by Makiko Takada)

宇都宮隆(Photo by Makiko Takada)

──ぜひ観たいです。ちなみに今回のツアーでサッシャさん自身がグッときた楽曲は?

選ぶのは難しいですね。さっきも話した「Children of the New Century」も素晴らしかったし、「Still Love Her(失われた風景)」も改めていい曲だなと。小室さんの歌詞がいいんですよ。「ご自身の恋愛経験も入ってるのかな」なんて思ったり……。ライブ全体の流れにも感動しました。メンバー3人が新宿に集まる映像で始まって、そこからクライマックスの「Get Wild」に向かっていくんですが、東京公演では最後に「シティーハンター」のキャラクターが登場したんです。物語の舞台となる新宿が軸になっていて、「シティーハンター」を知っている人だったら、一発でわかる演出ですよね。最後のほうに「Children of the New Century」を入れることで、「ストーリーは未来に向けて続いていく」という流れを感じられたのもよかったです。

──MCもほとんどなく、全体を通してすごくコンセプチュアルなライブでしたよね。

シームレスですべてがつながってますからね。アンコールがないのも潔いなと。それもサービス精神だと思うんですよ。出し惜しみせず、ライブ本編をパッケージとしてしっかり見せるっていう。3人の癒しのトークを聞きたい気持ちもあるけど(笑)、それはTMの世界観とは相容れないとわかっているんでしょうね。本当のプロだなと思います。

「TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~DEVOTION~」最終公演の様子。(Photo by Kazuyuki Sanada)

「TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~DEVOTION~」最終公演の様子。(Photo by Kazuyuki Sanada)

TMとの出会いは映画「機動戦士ガンダム」

──サッシャさんがTM NETWORKと出会ったのはいつ頃ですか?

生まれ育ちがドイツで、10歳のときに日本に来たんですが、TMを始めて認識したのは、TMがエンディング曲を提供した映画「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」(1988年公開)ですね。友達に誘われて映画館に行って、まだ日本に来て間もないこともあり、映画の内容はそんなに覚えてないんですけど(笑)、エンディングで流れた「BEYOND THE TIME(メビウスの宇宙を越えて)」がカッコよすぎて。「なんだこの曲は!?」ってめちゃくちゃビックリしたんです。ドイツにいた頃に「ライディーン」(Yellow Magic Orchestra)を聴いてたから、何となくつながりを感じたのかもしれないですね。あとは中学が小室さんと同じ(府中市立府中第四中学校)だったり、TMの由来が“多摩”だということを知って、身近に感じて。その後は小室さんプロデュースの曲がどんどんヒットして、「先輩すごいな!」と思ってました。コンサートを初めて観たのは大人になって、今の仕事を始めてからですね。宇都宮さんとご縁があって、MCやナレーションなどで関わるようになったのがきっかけです。

宇都宮隆(Photo by Makiko Takada)

宇都宮隆(Photo by Makiko Takada)

小室さんが見ていた未来に世の中が追い付いてきた

──TM NETWORKは来年デビュー40周年を迎えます。先ほども話にあったように、第一線で活動し、進化を続けているのはすごいですよね。

そう思います。世界を見ればThe Rolling Stonesをはじめ現役バリバリのバンドがいくつもあるし、日本でもサザンオールスターズなどががんばっていますが、常に最先端を追求しているという意味ではめちゃくちゃ希少な存在だなと。ステージに立ってる姿も年齢不詳というか、もはや宇宙人っぽい雰囲気もあって(笑)。

──時空を超えた存在というか(笑)。キャリアを振り返ってみても、常に時代を先取りしてましたからね。そもそも“ドラムとベースがいないバンド”という形態も、デビュー当時はあり得なかったわけで。

めちゃくちゃ早いですよね。今のビルボードのヒットチャートをもそうですけど、ほとんどの曲が打ち込みのドラムとシンセベースじゃないですか。最近はちょっとバンド回帰になりつつあるけど、基本的には打ち込みがメイン。小室さんが見ていた未来に世の中が追い付いてきたと言えるかもしれないですね。トランスを取り入れたのも早かった。よく覚えてるんですが、J-WAVE主催のイベント「イノフェス」の第1回(2016年開催)にソロで出ていただいたときに、ゴリゴリのEDMやトランスをやってて。「ヤバい!」ってびっくりしたんですが、その後の音楽シーンの流れを考えると、「小室さんはいち早くやっていたんだな」と。学生の頃、「今はこれを聴いたほうがいいよ」ってCDを貸してくれるクラスメイトがいたじゃないですか。小室さんはそういう存在なのかも。中学のときに放送部の部長だっただけはありますね(笑)。

──今後のTM NETWORKに期待することは?

期待するなんておこがましいですよ。来年以降も「今はこれだよ」というTM NETWORKの音楽を聴かせてくれるだろうし、根幹をしっかり持ったまま、映像や演出を含めて新しい表現を提示してくれるはずなので。若いアーティストが生み出す最新型も当然あるんだけど、TMのようにキャリアのあるバンドが、いろいろなことを経たうえで示す最新型もあって。とんでもなく大きな音楽の図書館から引っ張り出してきたサウンドというか。とにかく楽しみにしています!

「TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~DEVOTION~」最終公演の様子。(Photo by Kazuyuki Sanada)

「TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~DEVOTION~」最終公演の様子。(Photo by Kazuyuki Sanada)

プロフィール

サッシャ

1976年、ドイツ・フランクフルト生まれのラジオDJ / ナレーター / 声優 / タレント / スポーツ実況 / MC。 1999年、VIBE(現MTV)のニュースアンカーとしてキャリアをスタートさせる。2001年にJ-WAVEおよびFM FUJIでラジオDJとしてのキャリアもスタートし、以降、豊富な音楽知識で数多くの音楽番組を担当。また音楽フェス「SUMMER SONIC」のMCを初回から務めている。

TM NETWORK(ティーエムネットワーク)

小室哲哉(Key)、宇都宮隆(Vo)、木根尚登(G)による音楽ユニット。1984年にシングル「金曜日のライオン(Take it to the Lucky)」、アルバム「RAINBOW RAINBOW」でデビューを果たし、1987年に「Self Control」「Get Wild」が大ヒットを記録した。1990年にはTMNとして「TIME TO COUNT DOWN」「Love Train」などを発表し、1994年5月の東京ドーム2DAYSを最後にTMNの活動を終了した。1999年7月にTM NETWORKで再始動、デビュー30周年にあたる2014年には全国ツアー「TM NETWORK 30th 1984~ the beginning of the end」「TM NETWORK 30th 1984~ QUIT30」の開催、さらに12枚目のオリジナルアルバム「QUIT30」の発表など精力的な活動を展開した。2022年にはアリーナ公演を含む全国5都市ツアー「FANKS intelligence Days」を実施し、計4万人の動員を記録した。2023年6月には最新作「DEVOTION」をリリース。9月から11月にかけて全国ツアー「TM NETWORK 40th FANKS intelligence Days ~DEVOTION~」を行った。