ナタリー PowerPush - 東京カランコロン×クリープハイプ

2013年ブレイク期待2大バンドの本音

メロディの感覚の源流が同じところにある

──では、カランコロンの2人から、改めてクリープハイプの音楽はどういうところが魅力だと思います?

いちろー ほかのバンドを褒めたりすることがあんまりない厳しいせんせいが、「クリープハイプは間違いない」っていつも言ってますね。

尾崎 ありがたいな。

いちろー 俺はわりと分析しちゃうタイプなんですけど、せんせいはそうじゃなくて。

せんせい

せんせい うん。好き嫌いで判断する。

いちろー そうだね。たぶん、メロディの好きなところが似てるんすよね。音楽的な趣味もぜんぜん違うけど、掘り下げるとJ-POPにあるメロディラインの美しさがある。なんか日本人にしかない、洋楽にはない感じってあるじゃん?

尾崎 確かに。「切ない」って感覚はあんまり海外にはないって人から聞いたことがある。それだと思うんですよね。

いちろー そうそう。なんかそういうメロディの感覚の源流が同じところにある気がする。

尾崎 なるほどね。同じ高校出身だ(笑)。

いちろー そう、でも大学違うみたいな。

尾崎 で、今はお互い社会人としてやってるみたいな。

いちろー ははは!(笑) ほんとそう。だからピントが合うんだと思う。俺もそういうところでクリープハイプの曲聞いて「いいな」と思うし。ツボが一緒のとこあるよね?

尾崎 ありますね。いちろーさんはギターロック聴いてないと思うけど、今回のアルバムは特にギターロックを感じて。だんだん俺に寄ってきてるぞっていう感がありますね。

いちろー ほんと!?

尾崎 アレンジはあんま気にしないけど、歌の力なんですよね。テンポの問題じゃなくて、曲に疾走感がある感じで。

いちろー ありがとうございます。で、俺がクリープハイプの曲を聴いて「いいな!」って思うときも、アレンジはあんまり気にしないのよ。ギターロックっぽいアレンジが前に出てるバンドって逆に興味なくなっちゃうんすけど、それ以上に単純に歌としてクオリティが高いなって思って「あれ、すげえよくない?」と思ったんですよね。

カランコロンの曲にはいろんな人を巻き込める力がある

──尾崎さんが見るカランコロンの音楽の魅力は、どういうところにあると思いますか?

尾崎 2人で歌うようになったのって、最初からじゃなかったですよね?

いちろー うん、前はほとんど俺が歌ってたと思う。

せんせい 立ち位置も違ってたし。

尾崎 今、2人で歌ってて、さらにいいんですよね。どっちか主旋律かわかんなくなるぐらいの感じがあって。

いちろー

いちろー 作った自分が主旋律だと思ってたメロディが、そうじゃないと思われてたときもあるぐらいですね。「このメロ俺が作ったんだけどな」って(笑)。

尾崎 一緒に歌わせてもらったときも、俺がハモってるのに「あれ? こっちのが強いメロディだぞ?」って思ったりしたし。そういうところはいいですよね。あとは、メジャーに行ってから曲が単純によくなったと思います。偉そうですけど、いい曲だなと思う曲が増えた。

いちろー メロディに対する気持ちは、確かにインディーズの頃の曲よりも強いかも。メロディで負けたくないっていう。

尾崎 なんか、太い感じがしますね、ほかのバンドに比べて。2人で歌ってるっていう物理的なところ以外にも、カランコロンは幅が広いからいろんな人を巻き込める力があると思う。

──クリープハイプも人を巻き込んでいくタイプの音楽だと思うんですよね。切ない曲でも、独りよがりじゃなくてライブハウスのお客さん全員を巻き込むようなところがある。それこそ「HE IS MINE」なんて「セックスしよう!」ってみんなが叫ぶ現象が起こっちゃってる曲なわけで。ああいうふうになってきたときに手応えってありました?

尾崎 目に見えるという点ではそうですね。お客さんも増えてきて、自信にはなりますね。でもなんか、それだけじゃないのになっていう感じは、最近特に感じてますけど。

いちろー でもね、やっぱりそっちのが早いと思う。特にライブハウスで戦うんだったらそう。今のクリープハイプの広がりのスピード感って、もちろん曲のよさもあるけど、ライブのときのパワーとか熱量みたいなものがあるからだと思うんで。そういう意味では、カランコロンには逆にそういう熱量はそんなにないなって自分では思ってる。でも、トリッキーなことをやってもちゃんとついてきてくれるのはありがたいなって最近すごく思います。

お客さんに陰口を言いたくないって気持ちがあった

──尾崎さんは、最近のライブのMCで「歌ってくれる気持ちはうれしいけど、クリープハイプのボーカルは1人で十分だから」って言ってましたよね。

左から、尾崎、いちろー、せんせい

尾崎 あれはお客さんに陰口を言いたくないって気持ちがあったんですよね。最近のお客さんはこうだから嫌だなとか、楽屋とかで言いたくない。不満を持ってるならちゃんとそれを言えばいいし、そうしたらわかってくれる。気に入らなかったらもう来てくれなくなるかもしれないけど、気持ちを押し殺して陰でなんか言うよりぜんぜんいいかなって。

いちろー そんなにすごかったの? お客さんの歌う感じ。

尾崎 そうですね。でも、うれしいじゃないですか。ぜんぜん悪いことじゃないし。歌詞も覚えてくれてるわけだから。だって、いちろーさん、クリープハイプのライブに来ても絶対歌ってくれないでしょ?

いちろー いや歌いますよ。めっちゃ歌う。

尾崎 うそつけ!(笑) あの歌声が聞こえてきたら腹立ってすぐ言いますよ。「うるせー!」って(笑)。

いちろー ははは(笑)。お客さんにも、俺が歌うんだからちゃんと聴けってことでしょ?

尾崎 でも今回のシングルにはカラオケ入れてるんですよ(笑)。

いちろー そうそう、それ面白いよね。

東京カランコロン メジャー1stフルアルバム「We are 東京カランコロン」/ 2013年2月13日発売 / avex trax
初回限定盤[CD+DVD] 3500円 / AVCD-38664/B
通常盤[CD] 2800円 / AVCD-38665
CD収録曲
  1. いっせーの、せ!
  2. 少女ジャンプ
  3. ハートフルホット
  4. Darling,Hello_(SZK着メロMIX)
  5. ワンモアタイムをもう一度
  6. ポンコツ野郎の大逆襲
  7. サヨナラ バイバイ マルチーズ
  8. 渚のセレナーデ
  9. 泣き虫ファイター
  10. 青き日々よ(recorded at 音楽室)
  11. ×ゲーム
  12. ばいばい、また明日(ホーン演奏 byカンカンバルカン)
  13. おいたんのギターネタ帳(※ボーナストラック)
初回限定盤DVD収録内容
  • 渋谷CLUB QUATTROワンマンライブ「ワンマん2012」本編ノーカットライブ映像
東京カランコロン(とうきょうからんころん)

佐藤全部(B)、いちろー(Vo, G)、せんせい(Vo, Key)、おいたん(G, Cho)、かみむー氏(Dr)からなる5人組バンド。2009年5月より現メンバー編成にて活動開始。翌2010年6月に自主制作音源を発表し、インディーズチャートで1位を獲得。同年10月には初の全国流通盤となる「東京カランコロンe.t.」をリリースし、12月に初の自主企画ライブ「ワンマ ソ」を行う。その後2012年までインディーズシーンでミニアルバム、シングル2枚を発表し、8月にavex traxよりメジャーデビュー盤となるミニアルバム「ゆらめき☆ロマンティック」を発表。2013年2月には1stフルアルバム「We are 東京カランコロン」をリリースした。

クリープハイプ ニューシングル「社会の窓」/ 2013年3月6日発売 / Victor Entertainment
初回限定盤[CD+DVD] 1890円 / VIZL-522
通常盤[CD] 1260円 / VICL-36758
CD収録曲
  1. 社会の窓
  2. 週刊誌
  3. さっきの話
  4. ウワノソラ ~2012年11月24日@キネマ倶楽部「アンコールはどうする?」より(※初回限定盤のみ収録)
  5. 社会の窓(カラオケ)(※初回限定盤のみ収録)
初回限定盤DVD収録内容
  • ドキュメンタリー・ミュージック・ムービー「あたしの窓」
  • ミュージック・ビデオ「社会の窓」
クリープハイプ

尾崎世界観(Vo, G)、長谷川カオナシ(B)、小川幸慈(G)、小泉拓(Dr)からなる4人組。2001年に結成。2009年に現メンバーで活動を開始。インディーズで2010年にアルバム、2011年にミニアルバムをリリースする。2012年4月にアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」をメジャーレーベルからリリースし、同年10月に発表した1stシングル「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」がオリコンCDシングル週間ランキングで初週7位にランクイン。2013年3月にはメジャー2ndシングル「社会の窓」をリリースする。