ナタリー PowerPush - 東京カランコロン×クリープハイプ
2013年ブレイク期待2大バンドの本音
お互いに共感しあい、認めあうバンド同士の対談が実現した。ポップでカラフルな東京カランコロンに、切ないメロディと熱い言葉を放つクリープハイプ。音楽性は違えど、ともに2013年の本格的なブレイクを期待される存在だ。
メジャー初のフルアルバム「We are 東京カランコロン」を完成させた東京カランコロンからは、いちろー(Vo, G)とせんせい(Vo, Key)、3月にシングル「社会の窓」のリリースを控えるクリープハイプからは、尾崎世界観(Vo, G)が対談に登場。現在のバンドの状況から、お互いの共通点や音楽の魅力、2つのバンドが目指すものまで、ときおり脱線したり爆笑したりしながらも、じっくりと語り合ってもらった。
取材・文 / 柴那典 撮影 / 上山陽介
メジャーに行くとやれることが増えるのは間違いない
──こういう対談って、「お互いの出会ったきっかけは?」みたいな話から始めるのがよくあるケースなんですけど、せっかくこういうタイミングで機会をいただいたので、ちょっと違う話題から始めようかな、と。
いちろー というのは?
──よくある話なんですけど、インディーズで活躍していたバンドがメジャーデビューしてブレイクし始めたら、「あのバンドは終わった」とかネガティブなことを言う人が必ず出てきますよね。
いちろー そうっすね。「メジャーに行くと画一的なものになる、だからダメになる」みたいなイメージがあって、そういう意見が出てくると思うんですけど。
──もちろん、昔からそういうことを言うタイプの人ってずっといるんだけど、今のシーンの状況でその矢面に立っているのがクリープハイプであり東京カランコロンだと思うんです。しかも、そういう意見に対して、ちゃんと曲や表現の面白さで打ち返している2組だと思っていて。
いちろー なるほど。
──なので、そういう話から始めたいなと思うんですけど。まず、カランコロンは去年メジャーデビューして、そのときにも「どんどん派手にやりたい」ということを言ってましたけど、その気持ちのままこのアルバムまで突き進んできた感じでしょうか?
いちろー そうですね。そういう気はします。リアルにお金のこととか、クリエイティブなつながりも含めて、メジャーに行くとやれることが増えるのは間違いなくて。だからこそやれることをどんどんやっていこうっていう。
──で、一方クリープハイプの「社会の窓」は、「あのバンドのメジャーデビューシングルが オリコン初登場7位 その瞬間にあのバンドは終わった だってあたしのこの気持ちは絶対シングルカットできないし」と歌う曲で。まさにそういうイメージに対して自分たちらしいやり方で打ち返してる曲だと思うんです。これを作ったきっかけは?
尾崎 まあ、アルバム1枚出して、出た結果でどうこう言われたりすることも踏まえて、言いたいことをそのまま書いたっていう感じですね。もともと今回は曲を作ってから「こういう内容だけどシングルにできますか?」ってレーベルの人に聞いたわけじゃなくて、スタッフも一緒になって「これやろう」って言って作った曲なんで。やりたいことやらしてくれるし、何かあっても責任取ってくれるし。自由にやれましたね。
なんか、ちょっと太ったんじゃない?
──なるほど。いちろーさんとせんせいの2人は、ここ最近のクリープハイプについてはどう見ていました?
いちろー 確かにメジャーの最初のアルバムの「オレンジ」と、こないだのシングルの「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」って、わりと歌詞の内容はソフトだったよね? 逆にメロディのほうに重きを置いてる曲だなと思って。でも俺はクリープハイプのよさってメロディだけじゃなくて、歌詞の完成度だと思っていて。うまいこと言うじゃん? で、好きじゃんそういうの?
尾崎 はい。
いちろー でも、アルバムのリード曲もシングルもトゲみたいなのがあんまりない感じがあって。それを今回は前面に出したんだなっていう感じはあったかな。
尾崎 そうですね。でも、あんまり流れは関係なくやってたかな。たまたまそういうものが出せたタイミングなだけであって、メジャーに行ってからもずっとそういう気持ちは持ってたし。
──尾崎さんは今の東京カランコロンを見ててどんなイメージがあります?
尾崎 やってるなーって思いますよ(笑)。見ていて、いろんな場所から面白い人が集まってる感じがある。ジャケットの写真とかもいいし。それはイメージ通りだなって思います。……(いちろーに)ねえ、なんでさっきからこっち見て笑ってんの?
いちろー いや、なんか、ちょっと太ったんじゃない?と思って(笑)。
尾崎 俺が!? ほんとに?(笑)
せんせい 髪型のせいじゃないかな?
尾崎 え? 顔が太って見えるってこと?
いちろー うん。体重計とか乗ってないでしょ?
尾崎 乗ってないです。顔には出てないと思ったのにな。なんかヘコんでしゃべれない(笑)。
せんせい ははは! 自覚はあったんや(笑)。
「レコード会社数社による争奪戦の末──」みたいな話、絶対ウソだから
──まあ、太ったかどうかは置いておいて、クリープハイプも東京カランコロンも、基本的には変わってないし、やりたい放題やってる感覚が続いている。
尾崎 そうですね。やりたいことしかやってないですもんね。
いちろー うん。で、その上で違いがあるとしたら、クリープハイプの場合は、インディーズでやってたテンションのままやり続けることに重きを置いている感じがあって。
──カランコロンは?
いちろー ウチらはどっちかと言うと「メジャーデビュー!」ってガンガン言いたいみたいなところがあったかな。
尾崎 「メジャーに行ったから終わった」的なことを、もっと言わせたいっていう?
いちろー 別にそう言わせたいってわけではないんだけどね。言う人はどうせいるし、それはしょうがないんだけど。でも、メジャーに行ってさらに変なことをやってる感じの人が増えればいいなっていうのは思いますね。ウチらはずっとメジャーに行きたかったんで。クリープハイプはどうですか?
尾崎 そりゃ行きたかったですよ。憧れてたし。ぜんぜん声かかんなくて悔しかったし。
いちろー ほんと?
尾崎 初めて話をくれたのがビクターなんで。だから、よく言うじゃないですか? 「レコード会社数社による争奪戦の末──」みたいな。ほんとかよ?って思いますよあれ。あんなの、絶対ウソだから。
いちろー いやいや、あるところにはあるんだって(笑)。でも、それがうまくいくとは限らないってこと。
尾崎 そうそう。でも、ほんとあのときはうれしかったな。
- 東京カランコロン メジャー1stフルアルバム「We are 東京カランコロン」/ 2013年2月13日発売 / avex trax
- 初回限定盤[CD+DVD] 3500円 / AVCD-38664/B
- 通常盤[CD] 2800円 / AVCD-38665
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CD収録曲
- いっせーの、せ!
- 少女ジャンプ
- ハートフルホット
- Darling,Hello_(SZK着メロMIX)
- ワンモアタイムをもう一度
- ポンコツ野郎の大逆襲
- サヨナラ バイバイ マルチーズ
- 渚のセレナーデ
- 泣き虫ファイター
- 青き日々よ(recorded at 音楽室)
- ×ゲーム
- ばいばい、また明日(ホーン演奏 byカンカンバルカン)
- おいたんのギターネタ帳(※ボーナストラック)
初回限定盤DVD収録内容
- 渋谷CLUB QUATTROワンマンライブ「ワンマん2012」本編ノーカットライブ映像
東京カランコロン(とうきょうからんころん)
佐藤全部(B)、いちろー(Vo, G)、せんせい(Vo, Key)、おいたん(G, Cho)、かみむー氏(Dr)からなる5人組バンド。2009年5月より現メンバー編成にて活動開始。翌2010年6月に自主制作音源を発表し、インディーズチャートで1位を獲得。同年10月には初の全国流通盤となる「東京カランコロンe.t.」をリリースし、12月に初の自主企画ライブ「ワンマ ソ」を行う。その後2012年までインディーズシーンでミニアルバム、シングル2枚を発表し、8月にavex traxよりメジャーデビュー盤となるミニアルバム「ゆらめき☆ロマンティック」を発表。2013年2月には1stフルアルバム「We are 東京カランコロン」をリリースした。
- クリープハイプ ニューシングル「社会の窓」/ 2013年3月6日発売 / Victor Entertainment
- 初回限定盤[CD+DVD] 1890円 / VIZL-522
- 通常盤[CD] 1260円 / VICL-36758
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CD収録曲
- 社会の窓
- 週刊誌
- さっきの話
- ウワノソラ ~2012年11月24日@キネマ倶楽部「アンコールはどうする?」より(※初回限定盤のみ収録)
- 社会の窓(カラオケ)(※初回限定盤のみ収録)
初回限定盤DVD収録内容
- ドキュメンタリー・ミュージック・ムービー「あたしの窓」
- ミュージック・ビデオ「社会の窓」
クリープハイプ
尾崎世界観(Vo, G)、長谷川カオナシ(B)、小川幸慈(G)、小泉拓(Dr)からなる4人組。2001年に結成。2009年に現メンバーで活動を開始。インディーズで2010年にアルバム、2011年にミニアルバムをリリースする。2012年4月にアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」をメジャーレーベルからリリースし、同年10月に発表した1stシングル「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」がオリコンCDシングル週間ランキングで初週7位にランクイン。2013年3月にはメジャー2ndシングル「社会の窓」をリリースする。