“やれやれ枠”の若手アーティストが大先輩KERAに人生相談「今、すごい“苦”です」|「Tiki-Taka Jamboree! 2022」開催記念特集 (4/4)

本当にただ好きだからこれをやっている

──ここまでのお話でBOØWY、BUMP OF CHICKEN、電気グルーヴ、小沢健二、JUDY AND MARYなどといった名前が挙がってきていますが、どれも現在のとつかさんが作っている音楽にそのまま直結するルーツという感じがあまりしないんですよね。

なるほど、確かに。

とつかうまれ(Tiki-Taka Technics)

──もちろん“ギターサウンド中心のポップロック”というくくり方をすれば、BOØWYやBUMP、ジュディマリなんかは同じ箱と言えなくもないんですけど、彼らからの影響をダイレクトに感じるかと言われるとそうでもなくて。

逆に、どんな感じがしますか?

──楽曲自体はもっとフォークソング寄りの感じがしますし、ギターだけを聴くと「実は絶対メタル好きだろ」というギターに聞こえます。

ホントですか? メタルは全然通ってないです。ギタリストの若菜(拓馬)さんが弾いてるパートですかね?

──KERAさんとの対談も含めてここまでのお話を聞く限りでは、とつかさんは「他人にどう思われるか、どこにカテゴライズされるか」という意識がすごく高い人という印象があるんですけど、そういう意味ではその計算があまり感じられない音ではあるなと。

やる音楽に関しては、それはまったく考えてないです。本当にただ好きだからこれをやっているというだけで。その計算をするのであれば、たぶん今のやり方は完全に間違ってると思いますし(笑)。そういうことよりも、例えばメロディに関して言えば普遍的であること……「普遍的」って言うと偉そうですけど、あまり悪い印象を与える余地のない、人が聴いたときにスッと「いいね」と思ってもらいやすいものを作ろうとしていますね。

──そのメロディ感についても、朗々としていてなんとなく90年代っぽさを感じます。

だと思います。狙いとかでは全然ないんですけど、本当にギターを弾きながら適当に出ちゃってるだけのもので。

──世間的にはもっと複雑で忙しい感じの、淡々としたメロディ感が主流ですよね。

そういう温度感の低い音楽とかはあんまり……良し悪しではなく、自分は感情移入できないなっていう。この言い方で合っているかわかりませんけど、カラオケっぽいというか、90年代くらいの時代のメロディに心を惹かれてきたから。よく思うのは、いつの時代もリバイバルとかがあって歴史が繰り返されてきてるんだから、BOØWYみたいな音楽がど真ん中に来るタイミングだって今後いつ来てもおかしくないだろうということで。それは昔からずっと思っているので、トレンドに合わせたりあえて外したりするんじゃなくて、自分のやりたいことに向けてまっすぐ進んでみる、みたいなイメージでやっていますね。

──ボーカリストとしても、今のトレンド的にはあまり類を見ないタイプに思えます。

もともと自分で歌うつもりじゃなかったから、というのも大きいと思います。ただ、図らずも歌わなきゃいけなくなったことで、「自分で歌うんだったらこういうふうに伝えたい」という気持ちは出てきましたね。そもそもみんなが歌唱力という意味でのうまさだけを求めてるんだったら誰もポップミュージックは聴かないよねっていうのもあるし、僕は全然声は出てないですけど、それでもがんばって歌っているところに共感してくれる人もいるんで、そう思ってくれる人に対して真摯に向き合うべきだなと思っています。

──今主流の、スマートに歌うスタイルにはあまり興味がない?

まったく興味ないです。一生懸命作った曲だから一生懸命歌うっていう。もちろん、単に技術の問題もありますよ? これ以外のやり方ができないだけって話でもあるんですけど、自分の作る曲の表現方法としてはこれが正解かなっていう思いもあって。例えば、今いるのかいないのかわからないボーカルのいざわあばれというメンバーは僕より歌はうまいですけど、曲のポテンシャルを引き出せている度合いで言うと、自分で歌ったほうがイメージに近いんです。ポップミュージックって、歌のうまさに感動するものではないじゃないですか。技術を評価するジャンルではないから、何が正解かは人それぞれ違うと思いますし。

とつかうまれ(Tiki-Taka Technics)

目立ちたいわけではない

──そういう意味では、受け取る側の“面白がり力”が要求される音楽ではあるんですよね。特に若い世代は、ほとんどの人がこういう音を聴いたことがないと思うので。

そうだと思います。

──でもとつかさんはターゲットに合わせて自分の音楽を曲げることはしたくないから、少しでも幅広い層に聴いてもらうためにいろんな策を練って外堀を埋めようとがんばっているわけですよね。

そうです。それが伝わってよかった(笑)。別に目立ちたいとか、すごいことをやってると思われたくて派手なイベントを打っているわけじゃないんです。今回のアルバムにしても、「有名ミュージシャンが参加しててすごい」と言われたいがために柏倉隆史さんや在日ファンクホーンズ、アヤコノさんとかに入ってもらったんじゃなくて、あくまで僕自身が実力を付けていきたいから、「そのためには高いレベルに飛び込んでいかなければ」という気持ちで能力の高い人たちにお願いしただけなんです。

──その方々が音楽的な必然性で呼ばれているというのは、ちゃんと音を聴きさえすれば一発で伝わりますけどね。クレジットだけを見てああだこうだ言う人もいるかもしれませんが。

だって、嫌ですもん。中高生時代の自分が今の僕を見たら、「名も知られてないような若造が急に出てきてすごい人たちとイベントなんかやって、気にく食わねえ」と絶対に思いますから(笑)。

──ただ、そうやって理解されないけどがんばっていること自体を、ご自身は楽しいと思えていないんですよね?

楽しくないんですよね。全然楽しくない。

──それが不思議なんですよね(笑)。KERAさんもおっしゃっていましたけど、普通に考えたら楽しいはずなんですよ。やりたいことのために努力をしていて、しかもそれがちゃんと形になっているわけですし。

ライブをやり切る“裏方力”はすごいなと自分でも思うんですけど、それが果たしてプラスに働いているのかは全然わからなくて。それに、「愚直にがんばってます」みたいなことを言ったら「そういうアピールキモい」って言われるし、それに対して僕も「わかるわー」って返しちゃうんですよね(笑)。そう言いたくなる気持ちがわかっちゃうから。そこで「うっせえボケ」って言えたらもう少しマシになるのかもしれないんですけど、見ている以上に壮絶なんだよってことはなかなか伝わらなくて。

──その苦労が人に伝わるか伝わらないか以前に、その状況自体をとつかさん自身が楽しめさえすればいろいろ解決しそうな気もするんですけどね。

そうですねえ……でもやっぱり、突き詰めると結局「求められて音楽をやりたい」というところに行き着く気がするんですよね。去年、下北沢シャングリラで「Tiki-Taka Jamboree!」をやったとき、眉村ちあきさんやPIGGSさん、水中(、それは苦しい)さんとかのお客さんが入ってくれた前でライブができて、反応もすごくよかったんですよ。それがすごく楽しかったんです。5年間バンドをやってきて、楽しかったのが唯一その日しかないっていう。

──それもすごい話ですけどね……。

あの状況を常に作れたらいいなと。ライブハウスでお客さんの入りを心配せずに「みんなが待ってるからな」って気持ちでやれたら、もっと面白いものが作れるんだろうなとすごく思っていて。今は自分の音楽を楽しみに聴いてくれるリスナーが見えていない状況なんで、もうちょっとお客さんの顔が見えてきたら楽しくなるかもしれないです。「そこにこういうものを届けたい」と思えたら、もっとスムーズにいろいろできるんだろうなって。

とつかうまれ(Tiki-Taka Technics)

公演情報

Tiki-Taka Jamboree! 2022

2022年12月29日(木)東京都 WWW X
<出演者>
Tiki-Taka Technics / KERA(有頂天、KERA & Broken Flowers) / サイプレス上野とロベルト吉野 / D.W.ニコルズ / ホフディラン / B.O.L.T


2022年12月30日(金)東京都 WWW X
<出演者>
Tiki-Taka Technics / 水中、それは苦しい / femme fatale / FINLANDS / and more


First Album「MAZE」お披露目会 & Tiki-Taka Technics 5周年記念パーティー↑↑
~Tiki-Taka Technics 5TH ANNIVERSARY “FIVE ARROWS” Vol.1

2023年1月21日(土)東京都 下北沢Daisy Bar
<出演者>
Tiki-Taka Technics(とつかうまれ & いざわあばれ)

プロフィール

Tiki-Taka Technics(ティキタカテクニクス)

2018年に活動を開始した、とつかうまれを中心とした音楽プロジェクト。シニカルな歌詞と鋭いギターサウンドを特徴としたポップミュージックを得意とする。活動3周年を機に主催イベント「Tiki-Taka Jamboree!」を始動させ、2021年12月には東京・下北沢シャングリラ、2022年には東京・WWW Xでそれぞれ2DAYS公演を実施。2022年12月28日に1stアルバム「MAZE」をリリースする。

2022年12月28日更新