ナタリー PowerPush - ティーナ・カリーナ

1stフルアルバムで見せつけた“作家ティーナ”の真価と実力

ティーナ・カリーナが1stフルアルバム「田中らボタモチ」をリリースする。

デビューミニアルバムに収録され、その後シングルカットされた「あんた」や2ndシングル「あかん」、そして11月発表の3rdシングル「しもた」と、恋する女性の気持ちを関西弁で代弁するフォーキーなナンバーを発表し続けてきたティーナ・カリーナ。「田中らボタモチ」はそんな彼女がソングライター、ボーカリストとしての実力を満天下に見せつける1枚だ。

ティーナは同作において、一連の関西弁シングルシリーズとトーンやマナーを1にするラブバラードに加え、サーフロック、80~90年代ファンクやR&B、スウィングジャズの影響を感じさせる楽曲群をラインナップ。さらにボーナストラックにはジャスティン・ビーバーやブリトニー・スピアーズらの楽曲も手がけるグレッグ・オーガンとともにロサンゼルスでレコーディングした「あんた」の英語バージョン「Counting all the days」と、「あかん」の英語バージョン「How long」を収録している。

本人曰くまさに“棚からボタモチ”的な佳曲が目白押しの本アルバムはいかにして作られたのか。ティーナ自身に話を聞いた。

取材・文 / 成松哲 撮影 / 上山陽介

「ちょっと聴いてよ!」感覚で悲恋を歌う

──「田中らボタモチ」っていい意味で混乱させられるアルバムだなと思っていて。というのも、まずティーナ・カリーナという名前は“田中里奈”さんという本名のもじりで、言ってしまえばアルバムタイトルもダジャレで。そしてご自身のルックスも華やかで。

ティーナ・カリーナ

ありがとうございます(笑)。

──だからパッと見、すごくポップな人に映るんだけど、「あかん」「あんた」「しもた」という関西弁で歌った一連のシングルしかり、アルバム用に書き下ろした曲もしかりなんですけど、ことラブソングとなると、まあハッピーな恋愛を歌っていないという(笑)。

あはははは(笑)。もともと明るいタイプだとは思うんですけど……なんて言うんですかね? 強がっちゃうんですよ。

──だから「あれっ、この人、明るい人なのかな? 暗い人なのかな?」ってちょっと戸惑ったんです。

どっちも私なんです。気持ちの奥深くにネガティブな部分を抱えていたりもするんだけど、冗談を言うのも、人と楽しくおしゃべりするのも本当に大好きですし。だからどちらかというと歌で発散してるって感じなんじゃないですか。全部歌にして出せちゃっている感じっていうか。

──ただ、恋愛には当然楽しい時期もありますよね?

もちろんそうですね(笑)。

──でもそういう局面についてティーナさんはあまり歌わない。

もともとすごく切ない曲が好きで、聴くのはやっぱりしんみりというか、泣ける曲なんですね。だから自分が曲にするのも、なんかそういうふうになってしまうんです(笑)。あとは「ちょっと聴いて!」って感覚もありますね。

──「ちょっと聴いて」?

「あかん」がまさにそうなんですけど、あの曲はリアルタイムで遠距離恋愛に悩んでいた時期に書いた曲で。そのとき感じていた「もう! なんでよ!!」っていう気持ちを誰かに聞いてもらいたくて吐き出すような感覚で作ってるんです。

失恋すると「チャンス!」って感じなんですよ

──その「ちょっと聴いて!」感覚で生まれた曲が実際に多くの人に聴かれている状況、つまり有線放送のチャートでずっと上位に居続け、「輝く!日本レコード大賞」で新人賞を獲る状況ってご本人的にはどういうものなんですか?

なんていうか、ラッキーだなあと(笑)。自分の恋愛に対する悩みを書いて、それを大声で歌ったら、みなさんが聴いてくれる。すごく特殊でラッキーな職業に就かせてもらったなあ、っていう気がしています。インストアライブなんかで「私の気持ちを歌ってくれてる!」「なんで私の気持ちがわかったの?」って言ってくださるお客さんに会うと痛みを分かち合えてる気もしますし(笑)。

──たださらに混乱させられるのが、ティーナさんのラブソングってただただ「痛い」「悲しい」と歌っているわけではない。例えば「あんた」の中で「あんたがおれへん」ことに対する寂しさをなんと表現するかといえば「何食べても味ない」「独り言も多なるし」「冬はもっと寒いし」と……。

もうただのボヤキですよね(笑)。

──いやいやいや(笑)。むしろ好きな人がいないと寂しいっていう感覚をこうもユーモラスに表現するかってビックリしたんです。あと2曲目の「愛の声」の「携帯の向こうの 世界へと飛んでゆく」っていうフレーズにもやっぱり驚いて。確かにネットの向こうにはパソコンやケータイがあるだけじゃない。そのまた向こうには確実に世界の人々がいるわけで。

ティーナ・カリーナ

そうですね。

──そういう事実をたったこれだけの言葉で説明できている。だから混乱したんです。「単に悲しい歌を『悲しい』って歌う人じゃない……この人、かなり優秀な作詞家だぞ」って。

あはははは(笑)。でもどうなんですかね? 自分ではそんなに深く考えていないというか……。あんまり考えすぎると逆に言葉が出てこないんですよ。「あんた」も「愛の声」も、もう詞を書くときに感じてたことをそのまま歌っただけ。「あんた」は本当にボヤキというか、以前のインタビュー(参照:ティーナ・カリーナ「ティーナ・カリーナ」インタビュー)でもお話させてもらいましたけど、ほろ酔い気分で書いた詞ですから(笑)。

──むしろ「酔っ払っていてもこのクオリティか!」ってビックリしますけどね。

実は難しいことは考えてないんです(笑)。本当はそういう自分の中のボキャブラリーやテクニックみたいなものを自分自身にしっかり紐解けておいたほうが作詞がラクになるはずなんだとは思うんですけど(笑)。

──じゃあ「こういう詞は書きやすい」とか「こういう詞は書くのにちょっと苦労する」みたいな傾向も特にない?

失恋すると歌詞がワーッと出てきますね(笑)。

──あはははは(笑)。

だから別れたりフラれたりすると「チャンス!」って感じなんですよ(笑)。

1stフルアルバム「田中らボタモチ」[CD] 2013年12月11日発売 / 3059円 / DefSTAR Records / DFCL-2048
1stフルアルバム「田中らボタモチ」
収録曲
  1. あんた
  2. 愛の声
  3. あかん
  4. フリージア
  5. Juliette
  6. いつかきっと
  7. 真夜中の独り言
  8. every
  9. しもた
  10. 流れる涙はそのままで
  11. How long
  12. Counting all the days
ティーナ・カリーナ
ティーナ・カリーナ

大阪府池田市出身の女性シンガーソングライター。大学時代より音楽活動を始め、卒業後は大阪市の阪急百貨店で販売員をしながら楽曲制作やライブ活動を行う。2011年春、プロデビューを目指して約50社にデモテープを送付。その中の1社、エドワード・エンターテインメントとの契約が決定し、活動拠点を同社の所在地である仙台に移す。2012年9月、ミニアルバム「ティーナ・カリーナ」でメジャーデビュー。この中の収録曲「あんた」は女性の気持ちを関西弁で歌ったラブソングとして大きな注目を集め、10月に急遽シングルカットされた。同年、「第54回 輝く!日本レコード大賞」で新人賞を受賞。2013年3月には「あんた」が読売テレビ開局55年記念ドラマ「泣いたらアカンで通天閣」の主題歌に起用され、主人公の同僚役でドラマ出演も果たす。同年5月に2ndシングル「あかん」を、11月には関西弁で歌うシングルとしては3作目となる「しもた」を発表。壇蜜を起用したプロモーションビデオで大きな話題を集め、同12月には1stフルアルバムとなる「田中らボタモチ」をリリースする。