ナタリー PowerPush - ティーナ・カリーナ
関西弁の話題曲「あんた」で注目 気鋭女性シンガーソングライターの素顔に迫る
♪あんたがおれへんから……と歌う関西弁のストレートなラブソングを、最近耳にしたことはないだろうか? その切なく正直すぎる歌詞で、ここ数カ月の間テレビや有線を中心に話題を集めているのが、26歳の女性シンガーソングライター、ティーナ・カリーナだ。
彼女の魅力は、一聴しただけでも強烈な余韻を残す歌。そして、国籍すら謎なアーティスト名からは想像も付かない親しみやすいキャラクターだ。歌手デビューするまでの彼女の音楽人生を振り返りつつ、10月17日に急遽シングルカットが決まった「あんた」、自身の名前を冠したデビューミニアルバムについてじっくり語ってもらった。
取材・文 / 川倉由起子
CARPENTERSを聴いて、こういう歌を歌いたいなって
──今日はまず、ティーナさんの音楽遍歴からひも解いていきたいと思います。
はい、よろしくお願いします!
──資料によると、お父さんがオペラ歌手で中学校の音楽教師、お母さんがピアノとエレクトーンの先生と……バリバリの音楽一家ですね。
あははは(笑)。まあ、そうなるんですかね。
──お母さんの影響もあって、ピアノは幼稚園くらいから習っていたとか。
はい。でも当時はあまり好きじゃなく、今もそんなに弾けるわけじゃないんですよ。よく考えると少しもったいなかったなって(笑)。
──でも小さい頃から音楽は常に身近にある環境だったんですよね?
はい。楽器はそこそこだったのかもしれないけど(笑)、歌はずっと好きで聴いたり歌ったりしてましたね。小学校5~6年のときは担任の先生が終わりの会でいつもギターを弾いてくれて。スピッツやサザンオールスターズの名曲をみんなで歌って、それが楽しかったです。個人的には、小6くらいにSPEEDやMAXをめっちゃ聴いてましたね。
──当時、彼女たちの勢いはすごかったですからね。
はい、もうクラスみんなが好きって感じで。私もそういう曲を好んで聴いてはいたんですけど、中学になって吹奏楽部に入部したんですよ。そこでCARPENTERSのメドレーみたいなものを演奏する機会があって、最初はメロディしかわからなかったんですけど、すごいきれいなメロディやなって思って。オリジナルはどんな歌なんやろって気になったので、初めて自分でCDを買いに行ったんです。
──CARPENTERSの、どのアルバムを?
そのときはラブソング集「LOVE SONGS」を選びましたね。で、それを聴いたときに、メロディだけじゃなく「綺麗な声やな、温かい声やな」っていう印象もすごいあって。自分もこういう歌を歌いたいって思ったんです。
──CARPENTERSに衝撃を受けて、歌への思いが加速したというわけですね。
はい。でも、そこから早速何かを始めたというわけでもなくて、中3くらいのとき母親から「ボイトレ行かへん?」って話をされて、やっと歌を習い始めたんです。
──お母さんは、なぜ勧めてくれたんでしょう?
私が歌が好きやったから、そこを伸ばしてあげようと思ったんですかね。母もピアノの先生やったから、やりたいならちゃんと技術を身に付けなさいっていう、ちょっと教育熱心なところがあったのかな。
海老せんべいと音楽だけの生活
──ボイトレは中3からいつまで習ってたんですか?
高校へ行って、大学受験前に辞めるまでずっと習ってました。そこでは、歌がうまくなっていくことはもちろん、いろんな曲を課題曲として練習するのがすごく楽しかったんです。ちなみに「これやりたいです」って最初に先生に持って行ったのは、FAYRAYさんの「tears」。中3のまだ色気も何もない小娘が……多分、棒読みみたいになってたと思いますけど(笑)。
──あははは(笑)。その後、いろんなアーティストをカバーして歌う時代が続いて、初めてオリジナル曲を作ってみたのはいつだったんですか?
最初は19~20歳くらいのときですね。当時はギターをやってる友達と一緒にユニットを組んでて、ライブに出るためにはオリジナルがいるってことでなんとなく1曲作りました。
──当時のユニット活動は大学に通いながら?
そうですね。でも大学が夜間部だったので、昼間はアルバイトをしつつ、その空いた時間で音楽をやる……みたいな。
──あ、そのアルバイトっていうのが資料にも載ってる「元阪急百貨店サービス優秀販売員(金バッヂ受賞)」というやつですか?
そうです! 海老せんべい屋さんで働いてました。実は大学卒業後もバイトは続けてて、デビューするまでの数年はずっと海老せんべいと音楽だけの生活でした(笑)。
──そういう生活から歌手デビューのきっかけをつかんだいきさつは?
ちょいちょい歌手のオーディションは受けてたんですけど、デビューにはなかなか至らなくて。気付けばもう25歳というときに突然おじいちゃんから「結婚せえへんのか?」っていわれて、「あ、私はもうそんな年齢なのか」ってハッとして。
──すごくわかります(笑)。身近な人に言われてやっと自覚するんですよね。
はい(笑)。で、このままダラダラとアルバイトをしながら歌を歌っていくっていう、ちょっとハッキリしない状態はダメだなって思って。夢を追いかけるなら本気でやらなきゃってことで、50本のデモテープをいろいろな音楽事務所に送ったんです。漠然とずっと自分の中にあった「歌を歌い続けていきたい」という思いを、ちゃんと仕事にしようと考えたのが25歳のときでした。
ニューシングル「あんた」/ 2012年10月17日発売 / 500円 / EPICレコードジャパン / ESCL-3990
CD収録曲
- あんた
- あんた(Instrumental)
ミニアルバム「ティーナ・カリーナ」/ 2012年9月12日発売 / 1500円 / EPICレコードジャパン / ESCL-3957
CD収録曲
- 輝いて
- 帰り道
- あんた
- みつけて
- 始まりの朝に
- Power of Love
- むすんで ひらいて
ティーナ・カリーナ
大阪府池田市出身の女性シンガーソングライター。大学時代より音楽活動を始め、卒業後は大阪市の阪急百貨店で販売員をしながら楽曲制作やライブ活動を行う。2011年春、プロデビューを目指して約50社にデモテープを送付。その中の1社、エドワード・エンターテインメントとの契約が決定し、活動拠点を同社の所在地である仙台に移す。2012年4月にはデビュー前にもかかわらず、POLAのテレビCMソングに彼女の楽曲「輝いて」が抜擢され、話題を呼んだ。2012年9月、ミニアルバム「ティーナ・カリーナ」でメジャーデビュー。この中の収録曲「あんた」は女性の気持ちを関西弁で歌ったラブソングとして大きな注目を集め、10月17日に急遽シングルカットされた。