メンバーをナメないでほしい
mayu 私はグループで活動するからには、ほかの人の人生も背負っていると思ってるんです。自分の判断で簡単に辞められる仕事ではないと思うので、そこはメンバーも同じだと思います。
ミユキ 豆柴は今、がんばり具合が足りなければグループを辞めなきゃいけないくらいのタイミングなので、豆柴からしたらそのカードを持つ渡辺さんは強い存在です。グループとしてのメンバーの人生を握ってるから、そこはいいものを見せて、這い上がらないといけないと思います。
渡辺 確かにそのカードは握ってるにしても、やっぱりメンバーのほうが強い立場ではあるんです。お客さんの中には彼女たちをすごく弱い立場の存在として見ている人もいると思うんだけど、僕が特に言いたいのはメンバーのことをナメないでほしいなってことです。「メンバーは強いんだぞ!」ということを示したい。先日、ASPのライブが台風の影響で中止になってメンバーが土下座した写真をアップしたんですけど、「土下座なんてさせるな!」って批判がこっちに来るわけですよ。僕が「土下座しろ」って指示してメンバーが動いてると思ってる人がいるとしたら、それはメンバーのことをナメてるなあって思うんです。「何もできない、いたいけな子で事務所のいいなりだと思ってるからそういう批判になるんだろうな」って、そんなわけあるかと(笑)。
モグ 中止の発表がギリギリになってしまって、ホントに申し訳ないって気持ちだけが先立ってしまい。「私たちもここでライブがしたかった、悔しい」という気持ちをちょっとでもコミカルに伝えられたらと思って写真を上げたんです。批判というか、「あなたたちは悪くないのに!」といったコメントが来ていたときは、誤解を生んでしまったなと思いました。発信してどう伝わるか、もっと判断しないといけないなと思いました。
ミユキ 豆柴はバラエティ番組から生まれたグループだからこそということもあるかもしれないんですけど、世間の反応がわかりやすいです。豆柴は特にYouTube、TikTok、TwitterなどSNSを通していろいろな意見を目にします。WACKが大好きな人からは言われたことがないような、「怖そう」「悪い人たち」「かわいい路線を辞めるならもうファンやめる」とか、けっこうきついことを言われたりもします。初期の頃は、傷付いて、それが怒りに変わって反撃する気満々でした。でも「アイドルってかわいくなきゃいけないの?」「見た目だけで決めつけているの?」「ライブに来たことないのに何がわかるの?」「名前が個性的だから何?」って思うんです。これこそがWACKだと思うし、唯一無二だからカッコいいんじゃん! こんなに愛があふれている事務所なんてどこにもないでしょ?って今は世間に大声で言ってやりたいです。切り抜きだけで勘違いされたくないです。
トギー そういうところは知ってもらいたいですね。
mayu 本当にそうだと思う。
渡辺 もちろん止められなかった僕もいけないけど、ライブができなかったことはメンバーだって事務所だってもちろん悔しいんです。「運営の落ち度」と言われたらそれまでなのかもしれないけど、「土下座させないでほしい」なんて意見はね、「お前、何様やねん!」って思うわけです。ファンだからこそ言いたいということもあると思いますけど、メンバーだって意思を持った人間ですよ。僕もそのメンバーたちと対等に接しているし、メンバーそれぞれに意思があって動いてます。そんなになんでもかんでもやらせているわけでもない。逆に言うと、事務所が過大評価されて、メンバーが過小評価されていて悲しくなるんですよ。みんな1人の人間だし、自分を擁護するつもりはないけど、僕はメンバーたちを虐げようと思ってるわけじゃない。メンバーが意志を持ってやってることに対して、落とすようなことはしないでほしいですね。
BiSHメンバーに学ぶ“受け身ではない”活動スタイル
──BiSHのメンバーは大人が用意したレールがありつつも、最近ではアイナ・ジ・エンドさん、モモコグミカンパニーさんをはじめ、それぞれが個のポテンシャルを発揮していますね。
渡辺 付け焼き刃ではできないことがいっぱいあるし、やってみて反応がなかったこともたくさんあるんですけど、ひたむきに物事に取り組む姿勢、日々の努力はすごく大事ですね。もしかしたらここにいる君たちがTikTokを始めて、数年後にものすごいTikTokerになるかもしれないけど、それも毎日続けることでありえるかもしれないって話なの。例えばアイナは昔から自分で作っていた曲があるからこそソロで何枚も作品を出せるし、いつだって誰に言われなくてもやってるんですよね。君たちは曲も歌詞もプロモーションプランも用意してもらえるし、ツアーだって制作チームに準備してもらえる。そういうときに自分に何ができるかを自分で考えて動かないと引き出しが増えていかないわけです。「やらされている」という状態だから、BiSHと差が付いたというのは正直あるんじゃないかな。モモコのエッセイ出版に関しても、モモコが自発的にテキストを書いていたというのが始まりでそれが編集部の目に止まって「出したいです」と言ってもらえました。モモコ自身がそのあとにまたエッセイを出したいと思っていたのかはわからないけど、1冊目が出たあと、彼女はとにかくそのあともずーっと書き続けていたからもう1冊エッセイが出せたし、小説まで出版できました。どれだけ集中してやれるかなんだよね。みんなが目指さなきゃいけないのは、「プロとしてできる」ところまでやり切るということです。なんでもやるならプロレベルにならないとうまくいかないです。あとBiSHの展覧会「美醜秘宝館」で、昔のライブMCの台本があって、ひさしぶりに目を通してみたらビックリしたの。BiSHのメンバーが当時マジでうまく話せなかったから、MCを全部台本に書いて覚えてたんだよね。でも本物になろうとして努力を重ねるというプロセスが大事だったと思います。そういう意味での自分磨きをしないと、個性は出ないと思うよ。
トギー 耳が痛いですね、本当に。
渡辺 すごく忙しい中でやってくれてすごいと思うけど、今でもモモコは「この曲は僕が歌詞を書く」って言ってるのに、歌詞を送ってくるからね。そういうのはBiSH以外のメンバーには見られないことかも。やってと言われたことはやるから、みんな真面目だとは思うけど、モモコの場合は「私も書いたんで読んでください」と送ってくる。「書いちゃったからごめんね」って返事をしても、「私のもちょっとくらい使ってくださいよ」なんて言ってくる。幕張のイベントは失敗してもいいんだけど、圧倒的に足りないものが何かってことに気付いてほしい。
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渡辺淳之介が説く、BiSH以外の各グループの現状