BiSH抜きの正直な話

──これまでにもWACKのグループが総出演するイベントを開催したことはあったと思いますが、今回は“Without BiSH”ということで、BiSHが解散前にもかかわらず不在となります。まずイベント開催の狙いを聞かせてください。

渡辺淳之介（WACK代表）　幕張イベントホールは、2017年7月にBiSHのターニングポイントとなった会場です（参照：BiSH、7000人の清掃員と迎えた“約束”の幕張ワンマン）。この中だと現ExWHYZだけはEMPiRE時代に幕張イベントホールでワンマンライブをやりましたけど（参照：EMPiREの進化が止まらない！幕張イベントホール360°ステージで見せた一大スペクタクル）、それ以外の子たちはやったことがありません。BiSHがいない状態のWACKのイベントとして、どれくらい客席が埋まるのかを知りたくてやってみたいと思ったのが開催に至った理由です。とは言え、集客の面ではもちろん厳しいだろうと思っていて、そういう現実をメンバーたちが知る機会にもなるので、がんばって少しでも埋められればそれはそれでいいと思っています。どちらに転んでもいいんです、でも赤字は嫌だな（笑）。みんなに聞いてみたいんだけど企業にとって最大の目的ってなんだと思う？

WACKメンバー一同　……？

渡辺　利潤を最大化することです。とにかく利益を追求することが企業にとっての目的で、特にBiSHがWACKに利益をもたらしてくれました。でも僕の中では、BiSHの成功はただの“まぐれ当たり”であって、実力を伴ってやってきたことだとは思ってないんです。メンバーたちや、会社のがんばりもありますが、それ以上に音楽自体はビジネスとしてはギャンブル性の高いもので、自分はギャンブルは一切やらないですけど、なぜやらないかと言えば、経営している会社自体がギャンブルみたいなものだからです。

BiSH解散に思うこと

──そのBiSHの解散を決めるに至った理由を改めて聞かせてください。

渡辺　BiSH解散に当てはまるのは、僕の哲学としてある“カッコいいまま散る”ということ。それは僕がサラリーマン時代に手がけた第1期BiSでもやったことです。それを踏襲しないと僕の会社じゃないなという考えがまずありました。また「BiSをもう一度始めます！」と宣言して始めたのがBiSHなので、“BiSの美学”のもとにやらないといけないと思っています。

──BiSH解散が発表されてから9カ月経ちますが、ここにいる皆さんは実感が湧いてきていますか？

トギー（BiS）　「MONSTER baSH」にBiSHが毎年出ていた力もあって、先日BiSも出させてもらいました。BiSHのメンバーとも少し話したんですけど、そのときに（セントチヒロ・）チッチさんから「次から『モンバス』を盛り上げるのは君たちだよ」と言われたときに「ああ、本当にいなくなっちゃうんだ」と実感しました。

mayu（ExWHYZ）　「解散するんだな」とわかってはいるし、自分たちのグループもがんばろうって思いますけど、実際にまだ“解散”という事実が起きてないから、実感はないですね。頭ではわかってるけど。

ヤママチミキ（GANG PARADE）　私は同じ事務所で長年一緒にやってきたからこそ実感がないんですよね。「本当になくなっちゃうのかな？」って。でも1月に12カ月連続リリース曲の第1弾で「FiNAL SHiTS」が出たとき、その内容も含めて「本当にいなくなるんだな」という気持ちになりました。

モグ・ライアン（ASP）　私はBiSHさんが好きでWACKに入ったんです。自分の中でBiSHさんの解散を受け入れたくない部分も正直あるし、ふと曲を聴いていると「解散しちゃうんだ」と思っちゃうし、事務所に飾られている12カ月連続リリースシングルが毎月1枚ずつ埋まるディスプレイを眺めていても、「こんなに埋まっちゃったんだ」と思う自分もいる。自分もWACKの一員になったから、BiSHではなく私たちががんばっていかなきゃいけない、でも……という葛藤があります。

ミユキエンジェル（豆柴の大群）　実感は湧いてないですね。知り合いに、「解散しちゃうんでしょ？」って言われても「するらしいね」としか答えられないくらい。なくならないのが当たり前だと思っていたから、解散すると知って、素直にもっともっと同じステージに立ちたかったし、学びたいこともたくさんあるし、お話ししたかったのにっていう気持ちでいっぱいです。最後まで最高を求めていることが本当にカッコいいし、BiSHさんがいない未来を受け入れて、豆柴をもっとカッコいいグループにしたいと強く思いました。

激変するWACK各グループの現状

──BiSH解散発表後、BiSの新メンバー加入、GANG PARADE復活、EMPiREのExWHYZへの移行、豆柴のメンバーチェンジの可能性もある新企画と、2022年に状況が大きく変化しているグループが多いです。WACK全体としては、オーディションの応募者の傾向が「アイドルになりたい」から「WACKに入りたい」という形でここ数年、大きく変化しているように思います。

渡辺　「この事務所はこうである」という意見は人それぞれで違うと思うんですけど、最近はいわゆる大手の事務所からWACKに応募してくる子がいたりもしますね。BiSHのおかげでWACKの認知度が上昇してきていることはありがたいです。

──WACKは11月で9年目になりますよね。BiSHの躍進をはじめ、得たものはたくさんあると思いますが、逆に失ったと感じるものは？

渡辺　“失うものができちゃったこと”自体が、失われたものかもしれないですね。僕が考えたことじゃないですけど、スクール水着でライブをやるなんて、今だったらブーイング起きますよね（参照：BiS、最後のスク水ライブで太ももぶるぶるダイエット / BiSH、初ワンマンツアーの完売受けて追加公演）。ミユキとかわがままだし。

ミユキ　本当に申し訳ないです。「水着は嫌」とか言っちゃうくらいにはわがままでした（笑）。

渡辺　でも僕だって水着は全然好きじゃないからさ。マイカ（キャン・GP・マイカ / GANG PARADE）くらいでしょ、「私、やりたい！」って言うの（笑）。エロスは好きじゃないんですけど、勘違いされることが多くなってきました。失っちゃいけないものが多いからがんばっているところもあるのに、事務所が過大評価されているから、メンバーの行動ひとつを取っても「事務所が悪い」と思われることが多いですね。

──なんでも事務所の指示で動いていると思ってる人が増えてきたと。

渡辺　僕の立場は弱いんですよ。所属しているメンバーたちが「もう辞めたいです」と言ったら、数カ月で辞められるけど、逆に僕の場合「もう辞めたい」って言ったら絶対に怒られるんですよ。僕のほうが立場的に弱いって意味、わかりますかね？ もちろん僕は責任を取らないといけない立場ではあるんですけど、昔から上下関係なく、一心同体でやってきましたし、その中でもどちらかというとメンバーたちのほうが強いんですよ。基本は何かお願いするとしたら説明したうえで取り組んでもらっているので、嫌でやってるということはないはずなんですよね。僕たちがやってることは運営側もアーティスト側も全部どれも一心同体。僕は辞めるという選択肢を失いました。いつでも辞めてやると思ってたんですけど（笑）。ヤママチに「辞めたい」なんて言っても「病気になってもやれよ！」って言われますもん。「しょうがないですよね」とか「休んでください」とか絶対言わないでしょ（笑）。

ヤママチ　いやいや、まあそれは病気の重さによりますよ（笑）。

渡辺　はははは（笑）。だから「治療期間どれくらいですか？ いつ戻ってこれますか？」って話に絶対なるはず。僕だってメンバーがいなくなったら困りますから（笑）。