俺が一番「SDガンダム」への愛が強い
──「ボダレス」は、かわむらさんが作詞を担当されています。
かわむら 「俺が一番『SDガンダム』への愛が強い」と手を挙げて、歌詞を書かせてもらいました。ただ、「SDガンダム」の世界観に合わせて歌詞を書くのは不可能なんですよ。住む世界が違いすぎるというか。でも「SDガンダム」を楽しみにしている人たちの心は誰よりもわかるので、その人たちに向けて書こうと。この時代に「SDガンダム」を観ている人は、それが大人であっても子供であっても、でっかいロマンを夢見てる人間だと思うし、そいつらに「な! こうだろ!」という気持ちを届けられる歌詞になったんじゃないかなと。
──“そいつら”には、少年時代のかわむらさんも入ってるんですか?
かわむら そうですね。当時から僕はすごくオタクで、アニメやゲームが大好きで。アニメを観るときは、理想の自分を重ね合わせたり、憧れたり、発散してたところもあって。「ボダレス」の歌詞を書くときもそういう気持ちを大事にしてましたね。杉森は「10才の自分に」って言ってましたけど、俺はオタクの自分に向けたというか。
──水元さん、koyabinさんはガンダムに対する思い入れってありますか?
水元 僕はホントにわからないんですよ(笑)。大学に入るまでまったく観たことがなくて、とりあえず「機動戦士ガンダムSEED」は観たんですけど。
かわむら 名作だ。
杉森 めっちゃ面白いよね。
水元 ガンダムはそれしか知らないんですけど、「SDガンダム」のオープニングテーマを担当できることのすごさはわかりますし、うれしいです。
かわむら ガンダムに気を遣ってる(笑)。
koyabin 僕は「Zガンダム」が好きですね。人物像がしっかり描かれていて、かなり暗くて。「SDガンダム」には三国志の要素もあるんですけど、三国志自体もすごく好きなので興奮しますね。
──子供たちがTHIS IS JAPANの音楽に触れるのも楽しみですね。
koyabin 親戚に報告したら、「ウチの子供も観てる」って連絡がきて。これまでは20代のリスナーと音楽を共有することが多かったけど、子供たちに聴いてもらえるのはすごいことだなと。
かわむら 自分たちもそうですけど、音楽をやってる人間って、小学生くらいのときに聴いた音楽で価値観を変えられてる人が多いと思うんですよ。「SDガンダム」を通して、そういう体験を与えられる可能性があるのは夢があるし、音楽をやってる理由につながると思いますね。「これがベースの音か」って初めて知る子もいるかも。
koyabin ベースだけになるパートがあるからね。
水元 よかったです(笑)。
シンプルなものへの欲求
──2曲目の「chemical-X」は、杉森さん、koyabinさんの共作です。すでにライブで披露されている楽曲ということですが、がっつり踊れそうですね。
かわむら 「chemical-X」は「コロナ禍の中でできた曲」という印象ですね。演奏するのがめっちゃ簡単なんですよ。
koyabin (弦を)2本しか弾いてない(笑)。原型は僕が作ったんですけど、ループミュージックをやりたくて。The Psychedelic Fursみたいなイメージというか、単調なんだけど、アガれる曲にしたかったんですよね。「ボダレス」がかなり緻密な展開の曲だし、ストーリーもしっかりあるから、カップリングはシンプルなほうがいいかなと。
かわむら 最初から「これ、ええやん」って言ってたよね。で、気が付けばなくてはならない存在になってた。
──オーディエンスの反応はどうですか?
杉森 うーん、どんな気持ちで聴いてんだろう。
かわむら (笑)。客ウケもいいと思いますけど、それよりも演奏している我々が楽しいんですよ。
杉森 そうそう(笑)。ライブでやり始めた頃はギターを弾いてたんですけど、「いらないな」と思って。ますます簡単になりました。
水元 ベースも“ミ”と“ソ”だけなんで。誰でも弾けますよ(笑)。
杉森 単純な曲なんだけど、その中で「飽きさせないためには?」を考えるのも楽しくて。いつもとは違う脳みそを使ってる感じですね。
──バンドを続けてると、複雑なアレンジやフレーズを取り入れたくなったりしませんか?
koyabin 逆な気がしますね。初めの頃はほかと違うことをしたくて、複雑な曲を作りがちだったんです。いろんな要素が詰まったキメラソング的なものが多かったんですけど、4人で音を出し続けてるうちに、“ミ”と“ソ”だけの曲でも「自分たちの音だ」という実感を持てるようになって。
杉森 ムズい曲はずっとムズいからね。「練習したら簡単になるのかな」と思ってたけど、全然そんなことなくて(笑)。
かわむら 必死に難しい曲をやろうとしてた時期もありますけど、だからこそ、シンプルなものへの欲求が高まっているのかも。
──「chemical-X」というタイトル、かなり攻めてますよね。
koyabin この曲名を決めたのは僕なんですけど、「パワーパフ ガールズ」のパワーの源になってる物質なんですよ。ドラッグ系の話ではありません(笑)。
──なるほど。歌詞に「DANCING IN THE HELL」というフレーズもありますが、これは“地獄みたいな現実の中で踊ろう”ということですか?
杉森 いや、そんなメッセージはないです(笑)。なんていうか、気分がふさぐこともあるけど、そんなときこそ踊って元気になろう、みたいな。ポジティブソングですね。
初収録のリミックス音源
──今作には「new world」のリミックスバージョンも収録されています。リミキサーは、15歳のボカロP・皆川溺さんです。
かわむら カッコいいですよね。
杉森 うん、すごい。
かわむら リミックス曲を収録するのは初めてで、正直どうなるかわからなかったんですよ。でも、皆川くんにリミックスしてもらう話がきたとき、「ぜひお願いしたい」と思って。作ってる音も聴かせてもらって「絶対に面白くなる」と。珍しく、メンバー4人とも直感でそう思ったんですよ。
杉森 嫌な予感はまったくなかったよね。会って話して、好きになったし。
koyabin 皆川くんはDAWネイティブ世代というか、バンドを通らず、パソコンで1人で作るところから始まってて。自分たちには絶対に思いつかないようなアイデアもあるし、すごく面白いんですよ。数秒間、完全に無音にするとか。
水元 うん。コードも変えてますよね?
杉森 そう、違うコードも入ってて。
水元 次は自分たちがこのコード進行で演奏してみたいですね。
koyabin リミックス自体も好きだし、時代に合ってるとも思うんですよ。ドナ・サマーの「Hot Stuff」をKygoがリミックスしたトラックもよかったし、既存の曲を新しく提示することにも興味があって。
かわむら インターネット界隈にも、ゲームの音をミックスする文化があって。以前から憧れもあったんですけど、今回、そこに足を踏み入れることができたのはうれしいですね。
そのときどきで好きなことをやっていけたら
──シングル「ボダレス」のリリース後、9月23日には下北沢SHELTERでワンマンライブ「リビングデッドの夜明け」が開催されます。ようやく活動が軌道に乗りそうですね。
杉森 やっとですね。去年、ライブができない禁断症状が出て(笑)。散歩やボクシングを始めて、「ライブがなくてもやっていけるかも」と思った時期もあったんだけど、2周目というか、また「ライブやりてえな」って思い始めたんですよね。ちょうどいいタイミングでワンマンがあるのはよかったです。
水元 ワンマンなんて、いつぶりかわからない……。
──1年半ぶりらしいです。今は制作と並行してライブの準備を進めている状況ですか?
koyabin とりあえずライブ優先ですね。練習もしたいし、新しいエフェクターも買ったので。
水元 ギターも改造してたよね。
かわむら 制作はずっとやってますからね。曲を作ることを止めたことがないし、その時々で好きなことをやっていけたらなと。そこは変わってないですね。
公演情報
- THIS IS JAPAN“リビングデッドの夜明け”
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- 2021年9月23日(木・祝)東京都 下北沢SHELTER
- THIS IS JAPAN(ディスイズジャパン)
- 杉森ジャック(Vo, G)、かわむら(Dr)、koyabin(G, Vo)、水元太郎(B)の4人によるロックバンド。2011年に東京・新宿Motionを中心にライブハウスでの活動をスタートさせ、2012年9月に1stミニアルバム「ジャポニカ学習装置」をリリース。2014年8月に初の全国流通盤となるアルバム「THIS IS JAPAN TIMES」を発表する。2020年2月に配信シングル「Not Youth But You」でKi/oon Musicよりメジャーデビュー。同年5月に2nd配信シングル「HEARTBEAT」、7月にメジャー初となるCDシングル「new world」をリリースした。2021年8月には「SDガンダムワールド ヒーローズ」第2クールのオープニングテーマ「ボダレス」を発表。9月に東京・下北沢SHELTERで約1年半ぶりのワンマンライブ「リビングデッドの夜明け」を行う。