音楽ナタリー Power Push - Thinking Dogs
一大プロジェクトの主人公の野望
Thinking Dogsのデビューシングル「世界は終わらない」がリリースされた。
本作の収録曲はすべて秋元康が作詞を担当している。シングル表題曲はドラマ「ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~」の主題歌として話題を呼んだロックナンバー。そしてカップリング曲の1つ「あと100マイル」はロッテのCMソングに選ばれ、ゲストコーラスとして指原莉乃(HKT48)が参加した。華々しいデビューと処女作のリリースについて本人たちはどんな思いを抱いているのか。メンバー4人に話を聞いた。
取材・文 / 鵜飼亮次 撮影 / 新井潔
バンド誕生のユニークなきっかけ
──まずはThinking Dogsの結成のきっかけを教えてください。
TSUBASA(Vo) 2014年6月に前身となるバンドをわちゅ~、Junと結成して、そのバンドで「イナズマロックフェス」のオーディションに出演して。そこで準グランプリになり、メンバーチェンジを経てこの形になりました。
大輝(Dr) 僕はもともと別のバンドをやってて、前身バンドにはサポートドラマーとして参加してたんですけど「メンバーとしてやっていこうよ」「一緒にやったら後悔させないから」ってずっと勧誘されてて(笑)。そこまで言われるんだったらやろうってことで加入を決めました。
──4人が満を持してThinking Dogsを結成。時期でいうといつ頃ですか。
TSUBASA まだ短くて、今年の3月くらいですね。
──今回のデビューにあたって、さまざまな方が携わっていると思うのですが、資料によると「伝説のプロデューサー・サイモン利根川氏に見出され」と(笑)。
TSUBASA はい(笑)。すごくたくさんのアーティストの中から彼のインスピレーションで僕らを選んでくださって。
──なるほど(笑)。皆さんも出演しているロッテ「ウェル噛む!プロジェクト」のCMにサイモンさんが出ていますが、すごく個性的な出で立ちで。プロフィールもユニークですね(笑)。
伝説のプロデューサー「サイモン利根川」とは!?
1980年代、イーストエンドの小さなアパートの一室で始めたファッションブランド「グリーンガム」が大ヒット。
1990年代、カムデンタウンのライブハウスの仲間と作ったレコード会社「キシリトール」からデビューした何組ものアーティストが音楽チャート誌を席巻、主要な音楽賞を総ナメにする。
2000年代、アメリカに映像制作会社「Fit's」を作り、数々のヒット映画、ヒットドラマを手掛ける。出演者がほぼ全編、ガムを噛みながら歌い踊る実験的ミュージカル「ACUO」が興行的に大成功を収めたのは記憶に新しい。ここ数年はアジアに目を向け、日本でも空前のブームとなった「鼻歌」は、彼が仕掛けたと言われている。
TSUBASA そうなんです(笑)。彼の光るアイデアと一見奇抜に思える一言などなどによってバンドがどんどんブラッシュアップされていきましたね。
メンバーの音楽的ルーツ
──皆さんの音楽的なバックグラウンドを教えてください。
TSUBASA 10代のときにGACKTやL'Arc-en-Cielっていう、いわゆるJ-ROCKが好きになったんです。聴いても歌っても、観てもトータルでカッコよくて、いつしか彼らを目指すようになりました。でも真似になったらいけないと思って、いろんなものを吸収するためにLostprophetsとか海外のバンドも聴きはじめました。歌うことはちっちゃい頃から好きで、お風呂場で思いきり歌ってましたね。田舎だと怒られないから(笑)。
わちゅ~(B) 僕は小学校6年生の頃に「ファイナルファンタジーX」の「ザナルカンドにて」っていうピアノの曲に感動したのが音楽にどっぷりハマるきっかけで、ゲームやドラマで流れるBGMを好きになることが多くて。いいなと思った曲はすべてサントラを買ってたので、音楽ジャンル的にはまんべんなく聴いてました。そして中1のときに低音がズシッとくる音が好きになって、自分の好きなものが表現できるベースをはじめました。高校生になったら洋楽を聴き出して、Evanescenceの「Fallen」というアルバムをきっかけにLinkin ParkやLimp Bizkitみたいなヘヴィで重いロックにハマって。それ以来はさらに低音のよさ、ベースの大事さにずっと惹かれています。
Jun(G) 僕は主にハードロックですね。小学校くらいから鈴木亜美とかをMDに入れて何度も聴くJポッパーな人生を歩んでいたのですが、高校でVan Halenとかスティーヴィー・レイ・ヴォーン、あと布袋(寅泰)さんやCharさんといったギターヒーローの音楽に触れて衝撃を受けて。その衝撃が今の自分のギターを作ってる感じですね。自分もギターヒーローになってキッズをうならせてやりたいっていう夢があります。
大輝 父親が趣味でバンドをやってて、自宅に電子ドラムがあったんです。高校で軽音部に入ったんですが、ドラムをやりたい人が少ないから「家で練習できるんだったらドラムやってよ」って言われて「うん……いいよ」って(笑)。それからドラマーとして音をあわせてたらだんだん「バンドって楽しいな」と気付き、高3の頃には「オレやりたいこと音楽しかないな」って思って音楽大学に進学しました。SIAM SHADE、LUNA SEA、X JAPANとかそのあたりを聴きつつ、父親の影響でQueenとかLed Zeppelinとか洋楽も聴いてましたね。
1人でも多くの人に自分の音を
──お話を伺うと、皆さんのルーツにはそれぞれ90年代のJ-ROCKやハードロック、ゲーム音楽などのいわゆる良メロが特徴の音楽という共通点が見出だせるような気がします。今回のシングルで制作陣が用意した3曲もまさにその系統というか、いずれも一度聴いたらすぐ口ずさめる、メロディアスでキャッチーなナンバーになっていますね。
TSUBASA ホントその通りで、みんなキャッチーなものに惹かれてるんです。今回作っていただいた3曲はそのド真ん中をつくものだったのでみんな「これだ!」って気持ちになりました。僕らはみんな自分たちの音を1人でも多くの人に聴いてほしいっていう気持ちがあるので。
わちゅ~ デモを聴いて、懐かしい感じというか、音が自分にスッとなじむ感じがしました。そこに秋元先生のストレートな歌詞があって。言葉の選び方がすごく面白いし情景も浮かぶ。すごく前向きに、誰にでも親しんでもらえそうな曲だなって思いましたね。
──大輝さんは以前やっていたバンドの音とサウンド面でどんな違いが?
大輝 以前やってたのはもうちょっとゴリッとした感じのロックだったんですけど、それだとお客さんが限定されちゃうんですよね。だから今回の曲を聴いたときに「自分の音を聴いてくれる人の層がガッと広がるな」って感じました。
──Junさんはギタリストとしてどう感じましたか?
Jun 自分たちで曲を作ってたときに比べたらゲインが5ぐらい下がってますね。
TSUBASA 細かいな(笑)。
──具体的ですね(笑)。アンプから出力する歪みをそこまで抑えたと。
Jun はは(笑)。あとは「世界の始まり」みたいに耳通りのよい歌詞のインパクトと、サビ始まりで1回聴けば覚えちゃうようなメロディと、最初から畳み掛けてくるような感覚がすごいと感じました。
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- デビューシングル「世界は終わらない」 / 2015年6月24日発売 / Sony Music Labels
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1620円 / SRCL-8847~8
- 通常盤 [CD] 1080円 / SRCL-8849
CD収録曲
- 世界は終わらない
- あと100マイル
- 悲しみ以上
- 世界は終わらない -instrumental-
- あと100マイル -instrumental-
- 悲しみ以上 -instrumental-
初回限定盤DVD収録内容
- 世界は終わらない MUSIC VIDEO
- 世界は終わらない MUSIC VIDEO -Dance Version-
- Making of 「世界は終わらない」MUSIC VIDEO
Thinking Dogs(シンキングドッグス)
TSUBASA(Vo)、わちゅ~(B)、Jun(G)、大輝(Dr)の4人からなるロックバンド。前身のバンドで2014年夏に行われた野外ロックフェスティバル「イナズマロック フェス 2014」連動型のオーディション「イナズマゲート 2014」 に出場し、そのライブパフォーマンスが評価されて準グランプリを獲得。“伝説のプロデューサー”サイモン利根川に見いだされメンバーチェンジを経て改名。TBS系ドラマ「ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~」の主題歌「世界は終わらない」、指原莉乃(HKT48)がコーラス参加したロッテCMソング「あと100マイル」などを収録したデビューシングルを2015年6月にリリース。