THE YELLOW MONKEYのライブBlu-rayボックス「THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019 -GRATEFUL SPOONFUL- Complete Box」が7月20日にリリースされる。
2016年1月に再集結したTHE YELLOW MONKEYは、2019年4月に19年ぶりとなる新作オリジナルアルバム「9999」をリリースした。今回の映像作品には、このアルバムを携えて全27公演にわたって開催されたアリーナツアー「GRATEFUL SPOONFUL」の模様が収められる。
「GRATEFUL SPOONFUL」ツアーの大きな特徴は「♦」「♥」「♣」「♠」という全4パターンのセットリストを用意し、それぞれでまったく異なる世界観を提示したこと。Blu-rayボックスには4パターンすべてのライブ映像のほか、2019年8月に東京・渋谷La.mamaで行われた、結成30年を記念して入場料30円30分の250名限定ライブ「Private Gig」の映像、さらに3月に東京・日本武道館で「9999」の先行試聴会として行われ、メンバーがサプライズでアルバム全曲を生演奏したイベントの模様も収録。再集結発表から3年を経て充実した活動を繰り広げた2019年当時のTHE YELLOW MONKEYの姿を余すことなく楽しめる作品となっている。
音楽ナタリーでは本作のリリースに際し、「GRATEFUL SPOONFUL」ツアーの映像演出を手がけた山田健人、ライブカメラマンを務めた横山マサトへのインタビューを実施。山田は2017年12月に行われた東京・東京ドーム公演「THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2017」でのオープニング映像演出をきっかけにクリエイターとして参加し、同公演のライブ映像作品および「DANDAN」のミュージックビデオのディレクションなども担当。横山は「GRATEFUL SPOONFUL」ツアー初日の静岡公演から同行し、その後のライブ撮影にも携わっている。
最新作を携えてのアリーナツアーという一大プロジェクトを、それぞれの感性を通じて支えた若手クリエイター2人から見て、このツアーの意義、今年デビュー30周年を迎えたTHE YELLOW MONKEYという存在はどのようなものであったのか。またこのツアーでの経験はそれぞれのクリエイティブにどんな影響を与えたのか。間近で大プロジェクトを見届けた2人に語ってもらった。なお特集の最後には、これまでTHE YELLOW MONKEYに関わってきたクリエイター5名からのデビュー30周年に寄せたコメントも掲載している。
取材・文 / 宮本英夫
自分たちの存在は時代感を表現するため
──山田さんは2017年から、横山さんは2019年から、THE YELLOW MONKEYに関わられています。それぞれ、この数年間をどのように感じていますか。
山田健人 THE YELLOW MONKEYさんとの5年を経て、めちゃくちゃ貴重な経験をさせてもらいました。僕は5年前の「SUPER BIG EGG 2017」の頃は25歳とかで、映像の仕事もまだほとんどやってなかったんですよ。それなのに「東京ドームの映像をやってください」と急に言われて、「なんのことですか?」というところから始まって。THE YELLOW MONKEYさんとお仕事をすることで、最近の仕事にもその経験値を生かさせていただいていますし、初めての体験をいろいろさせてもらったので、本当に勉強になりました。
横山マサト 僕は「GREATFUL SPOONFUL」ツアーからご一緒させてもらったので、3年目なんですけど、最初は「まさか僕が?」と思っていましたし、その後も撮れるとは思っていませんでした。THE YELLOW MONKEYさんはずっと、オフィシャルで撮っている方がいらっしゃって、僕が入ることは無理だろうなと思っていたんですけど、気に入っていただけて本当にうれしかったです。たぶんInstagramで写真を公開したり、今の時代感を表現するために若い世代がいいということで、僕が選ばれたと思うんですけど。
──チーム全体として、再集結後のTHE YELLOW MONKEYは若い世代のクリエイターと組みたいという意志があったんでしょうか。
横山 どうなんですかね? 直接聞いたことはないので僕はわからないですけど。
山田 たぶん、チームを新陳代謝させていこうという目線があったんじゃないかと思います。特に青木さん(アーティストマネージメント / コンサート企画制作の青木しん氏)に。THE YELLOW MONKEYのライブスタッフチームは照明、PA、舞台とすべてが大御所ぞろいで、映像も「SUPER BIG EGG 2017」の本編は別の方がやられていたんですけど、そことはちょっとイメージを変えたいとか、いろいろあったんだと思います。だから僕は「SUPER BIG EGG 2017」のオープニングを担当したときが“試験運用”だったと思うんですね。
横山 ああー。なるほど。
──横山さんも最初はツアー序盤の静岡公演2公演のみを撮影予定だったとのことですが、もしかして山田さん同様に試験運用だった?
横山 絶対そうですよ(笑)。試してみて、どうかな?という感じだったと思うんですけど、でも吉井(和哉)さんがすごく気に入ってくれたみたいです。本当に、この静岡公演で撮影したソロカットで決まったっぽくて、それからスケジュールを一気に全部押さえられました。試験に受かってよかったです(笑)。
山田 あの写真はヤバい。カッコいい。
──そういう話を聞くと怖いですね(笑)。取材者としても身を引き締めないと。
山田 あれからチームとして何年もやっていられているのは、いつ首を切られるかがわからない緊張感があるからかもしれないです。いい意味で。次のツアーもご一緒できるかどうか、僕もわかってないですし、そういういい緊張感を持ちながら刺激し合えるのは一番いいことだと思います。ずっと同じだとどうしても凝り固まっちゃうから。向上心がないといけないな、というふうには思います。
映像で時間をかけたのは質感と色使い
──では「GREATFUL SPOONFUL」ツアーでのそれぞれのクリエイティブについて聞かせてください。山田さんの映像はモダンでハイファイで、ダンスミュージックのカルチャーの要素も多いですし、ある意味THE YELLOW MONKEYの持っている古典的なロック美学とは異質なものという印象があったんですが、このツアーの映像を作るにあたって、そのあたりのバランスを取る作業はいかがでしたか。
山田 難しくはありましたね。THE YELLOW MONKEYの楽曲に映像を付けるのは、けっこう難しいです。
横山 そうだよね。
山田 単純にサウンド感として、直球のロックミュージックでもあるから、CG映像とかがハマる感じでもないので。だから「GREATFUL SPOONFUL」ツアーの映像に関しては、質感と色使いにめちゃくちゃ時間をかけた記憶があります。まず全体的に、ザラッとしてるんですよ。ノイジーで、色も絶妙なラインで。
横山 ステージセットも金網みたいなビジュアルだし。
山田 そうそう。そこに今回の映像の質感を織り込むことで、THE YELLOW MONKEYの音楽と混ざれるようになるんだな、と気付けたツアーでした。最先端っぽい、パキパキ、ヌルヌル動くハイスペックなCGはたぶんハマらないから使ってないんですよ。そうじゃなくて、もっとアナログ味があって、2Dで、背景としてただ背負うものでいいんだと。この手応えを生かしてドームツアー(「THE YELLOW MONKEY 30th Anniversary DOME TOUR」)にも臨みました。
──横山さんの写真もそうですか? 質感のザラつきや、アナログ感や、そういったものを重視して?
横山 Instagramに載せたものを見ていただけるとわかると思うんですけど、質感は毎回変えていました。同じトーンだと、20何公演を撮るのは絶対に無理だと思ったので。「♥」パターンの最後の公演はモノクロで撮ってますね。ツアー中にずっと「モノクロで撮りたい」と言っていたんですが、「まだ待って」と言われ続けて、最終日でようやく実現しました(笑)。あと「♣」パターンでは、フィルム調を強くしたりしています。ステージがそういうイメージだったんで。「♥」パターンはメンバー同士の絡みのある写真をよく使ってます。
山田 曲的にもそういう感じだしね。
横山 そうそう。愛がテーマだから。そんなふうにトーンはけっこう変えました。
山田 マサトくんのPCを見せてもらうと、世に出ていない、俺的にはヤバい写真がまだまだいっぱいあるんですよ(笑)。