2016年にスタートしたTHE YELLOW MONKEYの“シーズン2”が、いよいよ佳境に入ってきた。19年ぶりのオリジナルアルバム「9999」を引っさげて、5カ月間で27公演に及ぶアリーナツアーを成功させたバンドはさらなる高みを目指し、12月28日の愛知・ナゴヤドーム、2020年2月11日の大阪・京セラドーム大阪、4月4日と5日の東京・東京ドームを巡る、バンド初のドームツアーへしっかりと照準を定めた。
音楽ナタリーでは、トランプのマークになぞらえた4種類のセットリストを用意した「THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2019-GRATEFUL SPOONFUL-」の総括、ツアー終了後にリリースした新曲「DANDAN」、アルバム「9999」の“完結版”となる「30th Anniversary『9999+1』-GRATEFUL SPOONFUL EDITION-」、そしてドームツアーについてメンバー4人へのインタビューを実施。結成30周年を迎え、「今が一番いい」と言い切る4人の本音を探ってみた。
取材・文 / 宮本英夫
4パターンのセットリストはまんべんなく楽しかった
──ツアーのセットリストを4つに分けるのは、ナイスアイデアでしたね。あれはコンプリート欲をそそりますよ。全部行きたくなる。
吉井和哉(Vo, G) あ、やっぱりそうですか。よかった。
──しかも4種類とも曲目が全然違う。数曲入れ替えとかじゃなく、構成もまったく別物で。
吉井 イベント色も増えるから、ツアーの形としては新しいものになりましたよね。単なるロックバンドのツアーというよりも参加型というか、ある意味フェスのような空気感もあるし。みんなやってほしいですね。
廣瀬洋一(B / 以下、ヒーセ) MCで言ってたもんね。「これ真似されるな」って(笑)。
──皆さんそれぞれで一番好きなセットリストはありましたか?
ヒーセ いや、まんべんなく全部好きですよ。そのセットリストごとに性格の違いもあって、全部いい形でできあがってるんだなと思いましたね。
菊地英二(Dr / 以下、アニー) でも一番「9999」のツアーのメニューっぽいのは、♢だったような気がする。僕の中ではこのセットリストが今回のツアーのテーマ的な感じでしたね。
吉井 比率はどうだったの? 「9999」の曲を一番たくさんやってるのはどのマーク?
ヒーセ まんべんなくやってるんじゃないの?
アニー 「Breaking The Hide」が入ってるメニューのほうが、「9999」の比率が高いんじゃない? そんなことないか。実はよくわかってない(笑)。
──5カ月間で27公演。けっこう余裕があるといえばあるし、とはいえテンションを保ち続ける必要もあっただろうし。振り返って、どんな5カ月間でしたか?
アニー ちょうどいい感じですね。変に疲弊することもなく、かといって途中でテンションが途切れることもなかったし。メンタル的にもフィジカル的にも、1つのライブが終わって次のライブに向かう準備もきちんとできたし、ちょうどいい感じでした。ほかの活動も若干やりつつ、ツアーも続けられて、これができるならずーっとやっていてもいい(笑)。そう思うぐらい、ライフワークとしてすごく頃合いがいいんじゃないかな。
菊地英昭(G / 以下、エマ) ツアーの初日と最終日を比べると、バンドの変化がすごかったなと思っていて、もう全然変わっていったんですよ。最初の何本かはすごい緊張感があって、それはそれでいいんですけど、後半に行くにつれて……。
吉井 適当になっていく。
エマ そうじゃない(笑)。新曲も全部ものにしてるというか、新旧の曲が混ざっていてもなんの違和感もないというか、なじみ方が後半はすごい。前半は前半で緊張感の塊みたいな雰囲気があったんですけど、その変化もすごくよかったですね。前半は赤いマークの♡と♢のメニューが多くて、メンバーの動きも多いしきらびやかな感じがするんですけど、後半の黒いマークの♤と♧のメニューのほうは、ライブハウスっぽい演出で曲の世界に入り込みやすい。ツアーの後半に黒いマークの比率が増えてくると、バンドの固まり方がすごかった気がしてます。どっちがいいとかではなく、まんべんなく楽しめました。
バンドが次のレベルに行った
──ヒーセさんはアリーナツアー、いかがでしたか?
ヒーセ いろんなことがプラスに働いたんだと思うんですよね。日程的に間隔が空くと、つかんだものを手放してもう1回初めからという感じになるんですけど、逆にそれが新鮮だったり。セットリストにしても、前半の赤いマークのほうはメンバーの見せ方が重要だったし、ステージセットもそれに則したものになっていたんですね。花道があったり、いろんなギミックがあったり、照明にしてもなんにしても。その全部がプラスの方向に作用して、♡と♢の素晴らしさが出たと思う。ツアー後半の黒いマークのほうは、セット自体はシンプルなんですけど、その分内面から出てくるものがあるというか、バンドのグルーヴをちゃんと見せられたから。両方やれてよかったと思うし、うまく行ったかなと思いますね。
──あの花道はよかったですね。客席に向けてスロープになっていて。
吉井 あの花道、大好きでした。
──お客さんの中に飛び込んでいくように見えるんですよ。上から見てると。
ヒーセ 0レベルですからね。お客さんと同じ立ち位置まで行けたからね。
吉井 ファンの反応がダイレクトに伝わると、相乗効果でこっちも興奮してくるので。ツアー後半の黒いマークのところは、花道がなくなっちゃったんでちょっと寂しかったりしたんですけど、そのせいでかえってライブ感が強かったりする。「今日はみんなの近くに行ける日だ」とか「今日は俺のギターが1曲多いぞ」とか、毎回違うのが楽しくて、こっちも飽きずに絶妙なバランスで回れました。ほんと、このスタイルをずっとやれたらいいよね。
ヒーセ アリーナといっても、大小の差があるんですよ。さいたまスーパーアリーナがたぶん最大で、逆に3000~4000人規模の体育館もあって、そっちはものすごく近く感じる。
エマ 福島とかね。
ヒーセ そうそう。ほかにも徳島、秋田とか、大都市じゃないとしても、特色のあるライブができたと思うし、「同じセットリストでも違って見えるのかな?」と思いますね。秋田は会場がすっごい暑かったんですよ。「なんでこんな暑いの?」って聞いたら、古い体育館だから空調が効かないらしい(笑)。でもみんな暑くても開き直っちゃって、汗びっちょりで盛り上がる状況になってるとか、それはその会場の特徴だと思うし、そういう意味でも全部がプラスの方向に進んだなと感じましたね。
吉井 僕は、何よりもバンドが次のレベルに行った気がして、それが一番うれしかったですね。今が一番いいなと本当に思いました。正直、2016年の最初のアリーナツアーはまだまだ生まれたてだったなと思ったし、再集結後の最初の東京ドームもまだ手探りだったり……でも次のドームは全然感触が違うと思います。こっちの意気込みと自信が違うんで、そういう意味でバンドが次のレベルに行ったと思いますね。
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「DANDAN」は何かやろうとしている若い方たちに響いてほしい