ナタリー PowerPush - THIS IS FOR YOU - THE YELLOW MONKEY TRIBUTE ALBUM
祝・結成20周年! 伝説のバンドの魅力を語り尽くすトライセラ吉田×椿屋中田対談
肉食の人たちがガチンコで演るとこういうことになるんだなって
吉田 THE YELLOW MONKEYと言えば、実はヒーセ(広瀬洋一/B)さんとも同じステージに立たせてもらってるんですよ。今回の夏のツアーの中で、吉井さんの携帯サイト向けの特別なライブみたいなのがあって。ちょうどツアーの合間で、そのライブ用にツアーとはまったく違うセットリストを用意したんです。
中田 うわっ、それは大変ですね。
吉田 そのライブのスペシャルシークレットゲストとしてヒーセさんが登場して。アンコールのときに、ベースの(三浦)淳悟くんが「あ、ちょっと、ちょっとすいません。腹が、腹が痛い」っていきなり小芝居を始めたんです(笑)。吉井さんが「お前何言ってんの? 腹が痛いって! ライブ中に!」と言うと、「ホントごめんなさい、10分、10分、ホントすいません」と言ってステージからいなくなっちゃう。そして吉井さんが「じゃあしょうがないから、代わりの人に来てもらうしかないな」と言ったら、ヒーセさんがいきなり登場して「ROCK STAR」「HOTEL宇宙船」の2曲を演奏したんですよ。
中田 おお、すごい!
吉田 すると、人ってこんなに盛り上がるの? って思うぐらいドカーン! って盛り上がって。吉井さんとヒーセさんが同じステージに立つのは、どうも解散してから初めてだったみたいなんです。
中田 ですよね。エマ(菊地英昭/G)さんは吉井さんのツアーにも参加してましたけど。
吉田 だよね。なんかね、客席に泣いてる人はいるし、白目になってる人はいるし、ヨダレ垂らしてる人はいるし、片乳出てる女の人もいるし。そういうお客さんたちを観て、すごい力を持っているなというのを感じましたね。トライセラではまだ経験ないですもんそういうの(笑)。
中田 すげえそれ!
吉田 すみませんね、しょうもない話ばっかりで。どんどんみんなが引いていくのがわかる(笑)。
中田 僕はついていってます!(笑)
吉田 吉井さんのソロツアーのリハーサルをやってるところに、ヒーセさんがサンダーバードのレプリカとビンテージのベースを1本ずつ持ってやってきて。サポートベーシストのアンプをいじって、自分の音を作っていくんです。「あ、こんな感じかな。じゃあお願いしまーす」とか言ってリハーサルしたら……「ブオオオオオオオオンッ!」って、出てくる音が単音なのに壁みたいなんですよ。俺はそのとき初めて生ヒーセさんの音を聴いて、背中側に置いたモニターから出てくる音にもうずっとグーッと押されてるみたいで。音の存在感と弾いてる存在感がデカすぎて、ずっと飲み込まれてましたね。ついていくのも必死で、肉食の人たちがガチンコで演るとこういうことになるんだなって、初めて体験しましたよ。そんな中、吉井さんは歌いながらメンバーを見て(片手を顔の前に挙げて)すいませんね、って(笑)。ヒーセさんのベースについて「なんかもう、何もわかんないでしょ? あれと120本ぐらいライブ演ってたから、もうなんかうわあああって感じになっちゃって」とか言うんですよ。
中田 あはははは(笑)。
吉田 メンバーそれぞれ、めちゃくちゃキャラが立ってますしね。いちバンドのドラマーとして、すごいなって思いますよ。
中田 僕もヒーセさんとアニー(菊地英二/Dr)さんと一緒に演らせてもらったことがあるんですよ。だからその“押される”感じはすごくわかります。自分のバンドとぜんぜん違って、後ろから「お前行ってこいよ!」って言われてる感じなんですよ。だから、あのリズム隊でステージに立つと、ちょっと強気になるというか、自然とそういう感じになってました。
「JAM」は1回演奏するたびにすごい気力を使う
──今回のトリビュートアルバムでは、TRICERATOPSが「JAM」をカバーしてますよね。先程も話に上がった吉井さんとの共演があったので、何となくこの曲をカバーするんじゃないかと思ってたんです。
中田 俺も絶対やると思ってました。
吉田 あ、そう? 「JAM」ってやっぱりすごい曲だから、俺たちよりふさわしい人は絶対いるだろうなって思ってたんだよね。でも実は、「JAM」をやるという話は1回なくなりかけたんですよ。最初にトリビュートの話をいただいたとき、「何がいいと思います?」って俺、直接吉井さんに相談したんだけど「やってもらえるんなら、何でもいいです」ということになって。で、ツアー中に「JAM」にまつわるいろんな話を聞かせてもらったことがあったんで、それを改めてうちのメンバー2人に話をして、「JAM」をやろうと決めたんです。でも、もう1組「JAM」をやる可能性のある方がいると聞いて、じゃあ別の候補も考えようかという話になったんだけど、最終的にはその話がなくなったので、トライセラがやらせてもらうことになったんですよ。
中田 それ誰なんだろう……。
吉田 そこは秘密でしょう(笑)。「JAM」は曲自体も深いんだけど、この曲がシングルになるときのエピソードにもすごく深い話があって。そういう曲を巡り巡って自分たちがやらせてもらうことで、実はレコーディングするときにはただならぬ空気が3人の間にあったんです。1回演奏するたびにすごい気力を使って、3人とも「しんどい……」ってグッタリしてた。いつもは多くても1曲2~3回録り直すぐらいなんだけど、「JAM」のときは「ちょっといつもと違うよね」と言いながら、「これなら大丈夫じゃないか」っていうテイクが録れるまで5~6回録ったんです。気合を入れてやるんじゃなくて、本当に心を込めて演奏する……曲にそうさせられてるんだろうなと思ってもおかしくないぐらいに。つい先日、自分たちのツアーの追加公演で1回だけ「JAM」を演奏したんですよ。自分たちのアレンジで演ってみて、改めて「JAM」ってすごい曲だなと実感しましたね。
中田 お客さんは盛り上がってました?
吉田 もちろん。最初に吉井さんが自分たちを指名してくれてオールナイトニッポンのイベントで演奏した「JAM」と、吉井さんのツアーでやった「JAM」と、トライセラバージョンの「JAM」と、「JAM」だけで3パターンもやらせてもらっていて、自分にとっても大切な曲になりましたね。
イエモンの大ファンだからファンの立場としてコピー
──椿屋四重奏は「BURN」を選んでますが、中田さんはこの曲について「THE YELLOW MONKEYの金字塔だ」とコメントを寄せてますよね。大ファンだった中田さんとしては、このオファーをいただいたときどう思いましたか?
中田 「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」の楽屋で、吉井さんにいきなり「トリビュートやるよね?」って言われて、そのときから絶対「BURN」を演るって自分の中で決めていて。このアルバムでもそうですけど、トリビュート企画って原曲のアレンジを変えたりする人がけっこう多いですよね。でも、俺はTHE YELLOW MONKEYの大ファンだし、原曲の良さも自分なりにいろいろ分析してわかってるつもりなので、ファンの立場としてコピーしようと思って。それが自分のTHE YELLOW MONKEYに対する礼儀というか、感謝の気持ちかなと。実際レコーディングもあっという間に終わりました。それまで10年くらい歌い込んできたから、歌入れでも2回しか歌ってないし(笑)。
吉田 実際に若い頃にライブでコピーをやったりした?
中田 いや、ライブはずっとオリジナルでやってきたから、イエモンのコピーをライブでやったことはないです。でも、コピーは好きでやってたんですよ。
──椿屋四重奏のバージョンを聴くと、ボーカルの節回しがライブバージョンのそれだったりして、中田さんは本当にTHE YELLOW MONKEYが好きなんだなというのが伝わってきます。
中田 ファンには「あ、こいつファンだな」っていうのがわかると思います(笑)。でも、以前はそういうのを出しちゃうのが正直嫌だったりしたんですけどね。今はもうそういうのはないかな。THE YELLOW MONKEYに育ててもらったという思いが大きいですし。
吉田 自分を形成する血になってるもんね。
──このアルバムに参加しているアーティストの中には直接のファンではない人もいるとは思うんですけど、聴いているとどの曲からもTHE YELLOW MONKEYに対する愛情がすごい出ていて、彼らのオリジナルアルバムとはまた違った気持ち良さを感じました。
中田 全体を通してTHE YELLOW MONKEYに対する愛が満ちあふれているところがあるんですよね。だからイエモンファンの人にもそこは伝わると思うし。
吉田 中田くんもTHE YELLOW MONKEYファンとして参加してるようなもんだしね。その中田くんが愛にあふれているって感じたんだったら、ファンの皆さんもそう思っていただけるんじゃないですかね。
DISC 1
- WELCOME TO MY DOGHOUSE / SCOOBIE DO
- LOVE LOVE SHOW / 奥田民生
- SUCK OF LIFE / 毛皮のマリーズ
- SPARK / 秦基博
- JAM / TRICERATOPS
- 空の青と本当の気持ち / 星羅
- SEA / 山田孝之
- BURN / 椿屋四重奏
- カナリヤ / tacica
- 4000粒の恋の唄 / あがた森魚
- PUFF PUFF (instrumental) / MORGAN FISHER
DISC 2
- FOUR SEASONS / フジファブリック
- パール / 黒猫チェルシー
- TVのシンガー / 9mm Parabellum Bullet
- 楽園 / KREVA
- SHOCK HEARTS / metalmouse
- 球根 / THE BACK HORN
- 追憶のマーメイド / ムック
- 離れるな / 金子ノブアキ
- SO YOUNG / シュリスペイロフ
- メロメ (instrumental) / MORGAN FISHER
- バラ色の日々 / Nothing's Carved In Stone
- プライマル。 / フラワーカンパニーズ
収録内容
- メカラ ウロコ・7
(1996年12月28日 日本武道館) - メカラ ウロコ・9
(1998年12月28日 日本武道館) - メカラ ウロコ・10
(1999年12月28日 日本武道館) - メカラ ウロコ・8
(2001年1月8日 東京ドーム)
特典
- BONUS DISC
- メカラ ウロコ・15パンフレット縮刷版付
収録内容
- オリジナルの音源のデジタル・リマスター盤 Blu-spec CD™仕様。
- 渡英前にレコーディングされた未発表デモ・トラックス音源。
- 日本でのデモ・レコーディング、ロンドン・レコーディングの秘蔵映像を収録したDVD。
THE YELLOW MONKEY
(いえろーもんきー)
1989年12月に吉井和哉(Vo)、菊地英昭(G)、広瀬洋一(B)、菊地英二(Dr)の4人で本格始動。グラマラスなビジュアル&サウンドと歌謡曲にも通じるキャッチーなメロディを武器に、渋谷La.mamaを拠点に精力的なライブ活動を行う。1991年にはインディーズから初のアルバム「Bunched Birth」をリリース。翌1992年5月にはシングル「Romantist Taste」でメジャーデビューを果たす。その後も着実に知名度を高め、1995年4月には日本武道館で初のワンマンライブを実現。「太陽が燃えている」「JAM」「SPARK」といったヒットシングルを連発し、5thアルバム「FOUR SEASONS」は初のチャート1位を獲得する。その後も「FUJI ROCK FESTIVAL '97」への出演や海外公演、野外スタジアムツアーなどを実施。1998年から1999年には、計112本を1年がかりでまわるロングツアーも敢行し、トップバンドの名を欲しいままにする。しかし、2000年11月に活動休止を突如発表。翌2001年1月の大阪ドーム(現・京セラドーム大阪)&東京ドームでのライブをもって、長期間の充電に突入する。多くのファンから復活を熱望されていたが、2004年7月に正式に解散を発表。現在もなお、伝説のロックバンドとして多くのロックファン、ミュージシャンからリスペクトされている。