音楽ナタリー PowerPush - The Verbs
レジェンドたちが奏でるこだわりの「Cover Story」
奥田民生がギタリストとして参加するThe Verbsの3枚目となるアルバム「Cover Story」がリリースされた。
The Verbsは“レジェンド”と呼ばれるスティーヴ・ジョーダン(Dr)と、その妻であるミーガン・ヴォス(Vo, G)の2人を中心に結成されたバンドで、現在は奥田とウィリー・ウィークス(B)を加えた4人編成で活動している。
今回ナタリーは、今年1月に行われたThe Verbsにとって初めてのアメリカライブを取材(参照:明日にでもまたやりたい!“The Verbs”奥田民生、初海外ライブに手応え)。あわせてメンバーにインタビューを行い、名曲をカバーした「Cover Story」制作中のエピソード、そして気になるThe Verbsの“今後”について聞いた。
取材・文 / 中野明子
パーフェクトなタイミングが来た
──現在の体制になってライブを行うのはこれが初めてとのことですが、感触はいかがですか?
スティーヴ・ジョーダン(Dr) 最高だよ!
ウィリー・ウィークス(B) スティーヴ、ミーガンと僕の3人は何年も前から一緒にセッションをしてきたけど、民生が加わったことでより素晴らしいグルーヴが生まれたよ。4人で演奏するのはこれが初めてだけど、ずっと一緒に演奏してきたように自然なんだ。やっと夢が叶った感じだよ。
──相性抜群みたいですね。さてThe Verbsにとって実に4年半ぶりの新作「Cover Story」が完成しましたが、今回のアルバムはウィリー・ウィークスさん加入後初めての新作となりますね。どういった経緯で今の体制になったんでしょうか?
スティーヴ まずは民生が加入した経緯から話したいんだけど、僕は民生の最初のソロアルバム(1995年3月リリースの「29」)で演奏させてもらってね。彼はニューヨークにテレキャスターとレスポールとスーツケースだけ持って来て。一緒にThe Power Stationっていうスタジオでレコーディングをしたんだ。そのときのレコーディングがものすごく楽しかったから、そのあともやり取りを続けて。日本に行くことがあれば必ず連絡を取って、食事をしたり、会ったりしてたんだ。2000年代の前半にソニー・ロリンズと日本に行ったときに、日本のロック雑誌で民生が僕をインタビューしてくれて。そのときに民生がThe Verbsの音を気に入ってくれて、「日本には演奏しに来ないの?」って聞くから、「君がメンバーになってくれたら演奏しに行くよ!」って答えたんだ。それで実際に2010年にThe Verbsとしてツアーをすることになったときに「バンドに入らない?」って誘ったら、「いいよ」って彼が答えて。それが民生加入のきっかけかな。
──民生さんはThe Verbsに誘われたときのことは覚えていますか?
奥田民生(G) スティーヴとは昔から一緒にやっていたので、誘われて、あの……うれしかったです。
──いわゆる“レジェンドドラマー”と呼ばれるスティーヴさんとバンドを組むにあたって、プレッシャーはありませんでしたか?
奥田 あんまりなかったんですよね。The Verbsで僕はあくまでもギタリストなんで、やることだけやっていればいい、というところもありますしね。わりとのんきなんですよ。英語ができないんでレコーディングでも意思の疎通ができているようなできていないような感じなんです(笑)。でもそれがまた面白くて。演奏している間は、言葉が通じないことも気にならないし。
──民生さんが感じるスティーヴさん、ミーガンさん、ウィリーさんの魅力ってどんなところですか?
奥田 すごいミュージシャンっていっぱいいると思うんだけど、プレイ自体がすごくてもそのプレイがどこに向かってやってるのか、なんのためにやってるのかによって、聴き手が感じるものが違うと思うんだよね。3人はテクニックやうまさを披露するためにただプレイしてるんじゃなくて、ちゃんと好きな音楽に向き合っているというか。
──ご自身の音楽への向かい方と近いものがありますか?
奥田 そうですね。あとはもともと好きな音楽が似てるので、一緒にやっていて楽しいですよ。
──改めて伺いますが、ウィリーさんはどういう経緯で加入されたんですか?
スティーヴ ウィリーとはこれまでもテレビ番組の収録や、ほかのアーティストのレコーディングで何年も一緒に演奏してきて。The Verbsで日本ツアー(2010年10月に開催)をやるときにベーシストとして誘ったんだけど、そのときはスケジュールが合わなくてね。代わりにピノ・パラディーノが参加してくれたんだ。それから何年か経ってウィリーを誘ったら入ってくれることになって、パーフェクトなタイミングが来たって感じだね。
ウィリー そうだね。僕もThe Verbsに入れてとてもうれしいよ。
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収録曲(カッコ内はオリジナルアーティスト)
- Till The End Of The Day(The Kinks)
- Baby Blue(Badfinger)
- Black Is Black(Los Bravos)
- Easy Now(エリック・クラプトン)
- United We Stand(Brotherhood of Man)
- Glad All Over(The Dave Clark Five)
- I Saw The Light(トッド・ラングレン)
- You Showed Met(The Byrds / The Turtles)
- Have You Ever Seen the Rain(Creedence Clearwater Revival)
- I’m Not Lisa(ジェシー・コルター)
The Verbs(ヴァーブス)
エリック・クラプトン、ボブ・ディラン、B.B.キングといったアーティストのレコーディングやライブに参加するドラマーのスティーヴ・ジョーダン(Dr)と、その妻であるミーガン・ヴォス(Vo, G)が2006年に結成。2010年に奥田民生が正式メンバーとして加入した。現在はエリック・クラプトンをはじめ、矢沢永吉、チャカ・カーンらとの共演経験を持つウィリー・ウィークス(B)を含む4人編成。2015年3月に1960~70年代の名曲をカバーした3rdアルバム「Cover Story」を発表した。