音楽ナタリー PowerPush - the telephones
6枚のアルバムでたどる10年
4thアルバム「Rock Kingdom」(2011年10月12日発売)
──2010年はセンチメンタルな歌モノに寄せた「We Love Telephones!!!」を出したあとに、石毛さんのソロデビューもありますね。石毛さんがこっちでナイーブなものを吐き出したおかげで、そのあとの「Rock Kingdom」はだいぶはじけた感じになったのかなって思いました。
石毛 あ、それもあるかもしれないですね。今振り返るとやっぱりthe telephonesが最初ポストロックみたいな曲と、今みたいな曲を両方やってたっていうことは、僕の中で両方が必要だからなのかも。
──アレックスさんからのコメントも届いてますよ。
──本当にアレックスさんはthe telephonesのことが大好きだっていうことがよくわかるコメントですね。
岡本 めっちゃうれしいです。
石毛 ちゃんと“ワンテイク”も覚えてるんだね。
長島 これはアレックスの優しさだよね。アレックスはPOLYSICSとかのプロデュースもしてたから、フミさんから「アレックスは本当に厳しいから、特にリズム隊は気を付けろ」みたいなことを言われてたんですよ。この「ワンテイク」っていうのは、「お前は1回でできる。大丈夫だ大丈夫だ」っていう意味でアレックスが言ってくれてたと思うんですよね。
──実際は1回じゃなかったんですか?
長島 はい(笑)。1回で決まんなくても「OK。今のは練習だ」って言うんですよ。
石毛 で、OKが出たら「OK、ワンテイク!」って言うんです(笑)。
長島 そうそう。石毛さんにとってのナカコーさんみたいに、アレックスは僕の中ですごく出会いたいタイミングで出会えたプロデューサーだと思っていて。あのときは演奏面でも基礎的な部分でもレコーディングというものに対してのベースのあり方をすごく学びましたね。
そして夢のステージへ
──そんな「Rock Kingdom」を引っさげて、2011年12月23日にさいたまスーパーアリーナのワンマンライブ(参照:telephonesたまアリ3時間ライブ「伝説は始まったばかり」)ですね。今振り返ってどうですか。さいたまスーパーアリーナは。
石毛 夢のような舞台だったと今でも思います。しかもすげえ盛り上がって。
松本 その日に至るまでが全部そういうふうに結びついていく感じだもんね。
長島 2011年は本当にスーパーアリーナのための年だった。
──埼玉出身であることに、こだわってやってきたバンドですしね。
石毛 そうなんですよね。普通だったらここで武道館とかそういうタイミングじゃないですか。そうじゃなくて、埼玉の大舞台に立たせてくれたことに、プロダクションの愛も感じつつ。
──6000人ぐらいの規模でやったんでしたっけ?
石毛 そうですね。でも開場しても全然人が入ってこなくて、ヤバいなと思いながら会場の様子が映ってるモニターを観てました。
松本 結局あれはクロークが大混雑していて40分押しになったんだよね。俺、人がいない会場の様子を見て、「岩手からオヤジとおふくろを呼んだのにこれはヤバいぞ」と思って(笑)。
石毛 そうだね。でも実際SEが鳴ってステージに上がったときのあの光景はすごかった。
5thアルバム「Laugh,Cry,Sing… And Dance!!!」(2013年4月17日発売)
──で、2012年のリリースは「D.E.N.W.A e.p.」と会場限定盤のみ。振り返ってみると、2012年はライブが満載の年でしたね。そして2013年に5thアルバム「Laugh,Cry,Sing… And Dance!!!」を発売しますね。このアルバムのレコーディングエンジニア西川陽介さんからのコメントを見てみましょう。
長島 俺ね、ハイパーヨーヨーの話があると思うよ。
西川陽介
「Laugh, Cry, Sing... And Dance!!!」のレコーディングに携わらせていただいたレコーディングエンジニアの西川と申します。
2013年1~2月にかけてレコーディングが行われたこのアルバムで、初めてthe telephonesと一緒にスタジオ作業をさせていただきました。
それまで、音源やライブに触れた時の彼らの印象は「徹底的に楽しんでるなー!」というものでした。
その勝手な印象は、レコーディング期間中に記録的な大雪に見舞われ、交通事情により先に帰るメンバーの「お先にスミマセン…」というより「もっと作業し(遊び)たかったのに残念です…」という、まるで、おもちゃを取り上げられた子供の様な言動で、確信となりました(笑)。
スタッフの心情として、一生懸命に録音に取り組むメンバーを見ると全力で協力したい!と思うものです。
またメンバー皆が、本当に仲が良くて、笑い声が絶えず、時には騒がしいくらい(笑)、僕も毎日スタジオに行くのが楽しみでした。特に娯楽のないスタジオで、何故かヨーヨーが流行し、各自暇さえてあれば、新しい技を競っていたのも、楽しい思い出です。
リラックスして楽しく作業したいという彼らの気持ち、特に僕とのレコーディングは初めてでしたから、楽しくやりましょう!という、彼らのサービス精神の現れでもあったんだろうなと、いま振り返ると思います。
そんな楽しく、時に集中した空気感はしっかりと音源にも収録され、作業は快調に進みました。
「Keep Your DISCO!!!」のシングルver.のミックスの前日、準備をしている僕のところに、フラッと遊びにきた石毛君との雑談で感じた、メンバーの楽曲に対するこだわり、クリエイターとしての資質はしっかりと音に捉えられたと思います。(この曲のPVも秀逸です!)
そして完成したアルバムは「笑って、泣いて、歌って…そして、踊れる」素敵なアルバムになりました。
10周年おめでとうございます!
みんなから愛されるバンド、the telephones!!
僕も大好きです!!!
石毛 ああ、そうだ。雪だったな。やっぱりヨーヨーのこと書いてあったね。西川さんが言ってる俺との雑談っていうのはたぶん、メンバーが最高なんでいいものを作りたいっていうのを俺が言ったことだろうな。音は絶対妥協したくなくて、違うところでキャッチーなところ作っていきましょうみたいな話をした気がします。なんかちょっと恥ずかしいからちゃんと言えないですけど。
──西川さんも言ってるようにスタジオの楽しい感じはこのアルバムによく表れてますね。
石毛 やっぱいい現場って笑いが絶対あるんですよね。雰囲気の作り方とかはこれまで関わってくれた各プロデューサーから学んだことだと思います。
──バンドのモードってこの頃はどうでした? ここまで上り調子でガーッと来て。
石毛 並行して走ろうと思ってた海外のロックシーンが死んで、どうしようみたいなときですね。それで、the telephonesっていう4人の人間性が出るものを作ろうと思い始めた頃だと思います。
──the telephonesは同時代性みたいなものをすごく考えてたイメージがあります。
石毛 俺はずっと洋楽が好きだったから、洋楽コンプレックスみたいなものがあったんですよ。でもこのときはもう俺たち日本人で何が悪いの?みたいな感覚でやれるようになってきて、前の年に日本語詞も取り入れた「D.E.N.W.A e.p.」とかを作って。
──海外のシーンをずっと意識して走ってきて、このタイミングでPOLYSICSとのヨーロッパツアーに行くと。
石毛 ホントこのタイミングで行けてよかったなと思いますね。その年の2年前だったら「DISCO」って言うことに対して、勝手に罪悪感みたいなものを感じて胸張ってライブができなかったと思います。このタイミングだったから自分たちの誇りを持ってちゃんとやれて、“We are DISCO!!!旋風”を巻き起こして。
松本 ちゃんと言ってくれるんですよね。
石毛 たぶんYouTubeとかで聴いてくれてたと思うんですけど、イギリスのライブで「I Hate DISCOOOOOOO!!!」をやったときに客が歌ったんですよ。「おー、外国人、めっちゃ歌ってる!」みたいな(笑)。
岡本 ライブ終わったあとには、俺らの周りにみんな集まってきてさ。自分のiPodの画面とか見せながら「なんでこれやんないの?」とか言ってきて。
石毛 俺もそれ覚えてる。俺が見せられたのは「JAPAN」に入ってる「fu~shit!!!」だった。それはやんねえよ! 2008年だから!って(笑)。
松本 またチョイスもすごくて(笑)。
岡本 持ってったCDも全部売れたよね。
石毛 あれはうれしかったな。ホント思い出深いですね。
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- ベストアルバム「BEST HIT the telephones」 / 2015年3月18日発売 / 3024円 / Virgin Music / TYCT-69078
- ベストアルバム「BEST HIT the telephones」
収録曲
- happiness,happiness,happiness
- sick rocks
- FREE THROW
- Love & DISCO
- Monkey Discooooooo
- Urban Disco
- HABANERO
- A.B.C.DISCO
- kiss me, love me, kiss me
- I Hate DISCOOOOOOO!!!
- Yeah Yeah Yeah
- A A U U O O O
- D.E.N.W.A
- Odoru~朝が来ても~
- Keep Your DISCO!!!
- It’s Alright To Dance (Yes!!! Happy Monday!!!)
- Don’t Stop The Move, Keep On Dancing!!!
- Hyper Jump
- Say DISCO
the telephones(テレフォンズ)
2005年に埼玉県浦和にて結成されたロックバンド。メンバーは石毛輝(Vo, G, Syn, Programming)、岡本伸明(Syn, Cowbell, Shriek)、長島涼平(B, Cho)、松本誠治(Dr)の4人。ポストパンク / ニューウェイブにも通じるダンスロックサウンドで各地のフェスを席巻し、2009年にEMIミュージック・ジャパン(現:ユニバーサルミュージック)と契約。同年7月にアルバム「DANCE FLOOR MONSTERS」でメジャーデビューを果たした。2011年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでのワンマンライブ「SUPER DISCO Hits FINAL !!! ~そして伝説へ~」を開催した。その後もコンスタントに新作をリリースし、2013年7月には初となる東京・日比谷野外大音楽堂でのワンマンライブ、9月にはPOLYSICSと合同で初のヨーロッパツアーを敢行するなど、ワールドワイドに活動を展開する。結成10周年を迎える2015年3月にキャリア初のオールタイムベストアルバム「BEST HIT the telephones」をリリースし、同年5月21日に東京・日本武道館で単独ライブを開催。また同年をもって無期限で活動を休止する。
武道館 DE DISCO!!! ~SUPER DISCO Hits 10!!! the telephones 10th Anniversary~
2015年5月21日(木)東京都 日本武道館
OPEN 17:30 / START 18:30
Alex Newport
the telephonesと「Rock Kingdom」を制作したことは、僕にとって、とてつもなく良い経験だったよ。曲の初期のデモを聴いた段階で、これはすごいアルバムになるぞってすぐにわかったんだ。the telehphonesの4人はみんな全然違ったユニークな個性があり、それぞれ自分のスタイルがあり、違う音楽的な影響を受けているんだけど、どういうわけか集まって一丸となり、曲に立ち向かったときに4つの個性が合わさりとても素晴らしい音ができあがる。セイジはバンドのリズムの根幹でグルーヴを駆り立てて行く存在。リョウヘイはグルーヴをさらに上のレベルへ高める存在(そしてベースパートを最初の1発で終わらせるから「ワン・テイク・リョウヘイ」として名を馳せたよ)。ノブは独特な雰囲気の、時には踊り出したくなるような、時にはびっくりするようなシンセを奏でるんだ。アキラは優秀でセンスのいい、ギタリストでありシンガーだ。常に曲のキャラクターを引き出すために新しいサウンドやアイデアを探し求めている。
アルバム制作中においては、的確なパートやアレンジを追求したりで常に問題だらけで、スタジオでの時間はつらかったり、時に退屈であったりもする。でもthe telephonesとのスタジオ作業で一番覚えているのは、いつもいつもみんながただとても楽しんでいたこと。もちろんみんなとてもよく働き、作品には熱心に打ち込んでいるんだけど、常にジョークや笑顔がいっぱいで、その素晴らしいユーモアが僕やアシスタントのアツオにまで移ってきて、いつも笑いが倍増していたね。最高の時間を過ごしながら、素晴らしいアルバムを作ることができる──なんて素敵な気分なんだろう。
the telephonesは類稀であり、みんなを元気づけるバンドだ。これからもROCKし続けることを!
Alex Newport
(原文)
the making of "Rock Kingdom" was an incredible experience for me. from hearing the early demos of the songs I knew right away it was going to be a great album. The thing about the telephones is that they are 4 very different and unique personalities, and they each have their own unique style and musical influence, and in some ways it shouldn't work together, but it does, the 4 members become one unit when it comes to the song, and the 4 personalities mix together to make one, new amazing sound. Seiji is the rhythm backbone of the band and propels the groove.. Ryohei pushes the groove further (and became known as "one-take-Ryohei" for delivering all his bass performances in one take, first time.
Nobu brings an atmospheric, sometimes dancy, sometimes crazy influence with his synth playing. Akira is an excellent and tasteful guitarist and singer, always looking for new sounds and ideas to bring out the character of a certain part.
When making an album there are often problems to overcome, such as trying to find the right part or arrangement - and many moments in the studio can be a bit mundane and painstaking. What I remember most about working with the telephones was that no matter what was going on in the studio, they always, always had FUN. Although they are very hard working and dedicated to their craft, there was always time for a joke, a smile, there is a wonderful humor that the whole band share and it is very infectious, as myself and my assistant Atsuo constantly found ourselves doubled up in laughter. To be able to make an excellent record, whilst having a great time - what a great feeling.
the telephones are a unique and inspiring band, and long may they ROCK!
Alex Newport