THE SUPER FRUITが1stアルバム「青い果実」をリリースした。
昨年8月に発表したデビューシングル「チグハグ」で、2022年のTikTok流行語大賞を受賞するなど、CDデビュー時からグループの知名度を一気に上昇させたスパフル。待望の1stアルバムには、「チグハグ」を含む既発曲に、初の7人歌唱曲「青い果実」など新曲6曲を加えた計12曲が収録されている。音楽ナタリーではアルバムの発売を記念し、アルバム収録曲の聴きどころについてメンバーにインタビュー。さらに、スパフルの名を押し広めた「チグハグ」のヒットについて今だから思うこと、8月に行われた1stワンマンツアーで「本気でアリーナ公演を目指します」と宣言するまでの葛藤を語ってもらった。
取材・文 / 倉嶌孝彦撮影 / はぎひさこ
いい意味で「チグハグ」を切り離している
──夏ツアーの初日公演で、皆さんはグループの目標として「アリーナ公演を目指します」と宣言していました(参照:スパフルの暑い夏が開幕!1stツアー初日に目標宣言「本気でアリーナ公演を目指します」)。大きな目標を宣言するまでに、グループ内ではどのような話をしていたんですか?
田倉暉久 僕らはまだまだ新人だし、「目の前のことを1つずつやっていこう」という話はいつもしていたけど、デビュー曲の「チグハグ」のヒットから、僕らの楽曲が思っていたよりも多くの人たちに届いて、ライブの規模感も大きくなって。たくさんの方がフルファミ(THE SUPER FRUITファンの呼称)になってくれたのもあり、みんなに初ワンマンツアーのタイミングで目標を伝えること、進みたい方向を赤裸々にすることが必要なんじゃないか、という話になったのがきっかけですね。
堀内結流 結成して間もない時期に“「チグハグ」旋風”が起こり、「僕らにはまだ実力が追いついていないんじゃないか」「こんな新人で目標はアリーナとか言っていいのかな」という葛藤はありました。だから自分たちの目標をしっかり伝えるのにも時間がかかってしまったというか。
──なぜスパフルは目標を「アリーナ」に設定したのですか?
阿部隼大 目標として掲げるのであれば大きいところにしたいという思いがありました。着実に少しずつ階段を上がっていくことも必要だと思いますが、僕らが覚悟を決めるという意味で高い設定が必要だと思い、アリーナという舞台を目標として公言することにしました。
──今、皆さんは「チグハグ」のヒットをどう受け止めていますか?
田倉 すごく恵まれたことだと思っています。もちろんうれしかったし、僕らがこうして活動させてもらっているのは「チグハグ」のおかげなのは間違いありません。ただ、感覚が狂わされたという部分もあると思います。「チグハグ」の勢いがすごかったから、今こうやって一歩ずつリリースイベントやライブなど着実に続けていても不安になることもあって。振り返ると、不思議な体験をしたなと感じています。
小田惟真 僕はいい意味で「チグハグ」のヒットを切り離して考えるようにしています。「チグハグ」でいいことはたくさんあったけど、僕が悔しいと感じているのは、あのヒットの勢いを自分の実力不足で十分に生かしきれなかったこと。本来であれば勢いそのままに僕らの音楽をもっと広く届けたかったけど、自分たちに何が起こっているか受け入れられないまま活動していた時期もあって。今ではそういう過去も、今の現実も受け入れて、じゃあ次はどうするか、どうしたいか、みんなで考えながら活動できていると思います。
スパフルの第2章開幕
──1stアルバムのタイトルは「青い果実」です。未熟という意味を帯びたこのアルバムタイトルを皆さんはどう解釈していますか?
松本勇輝 リンゴもレモンもピーチも、果実は熟す前と熟したあとで色が変わることに注目したタイトルだと捉えています。「青い果実」という言葉そのままの意味で、僕らは年齢的にもまだまだ未熟な存在だと思っていて。これからいろんな色の果実に熟していく。さまざまなことに挑戦して、もっとがんばっていくよ、と宣言しているアルバムなのかなと思っています。
鈴木志音 アルバムの中には初めて7人のボーカルで録音した曲も入っていて、これまで作り上げてきたスパフルのイメージをいい意味で裏切るような内容になっていると思います。まだまだ僕らはやれることがたくさんある、そういう伸びしろを示せる作品になっています。
──これまで3ボーカル4ダンサーという体制を築いてきたスパフルが初めて7人全員で歌唱する楽曲が、アルバム表題曲の「青い果実」です。
星野晴海 これまでは曲のイメージに合ったメンバーをボーカルにすることで、その曲の印象を強める傾向にあったけど、7人全員が歌うとなると、スパフル全体のイメージを全面に出すことになるんです。個人的には“スパフルの第1章の集大成”というような意味合いと感じるくらい、すごく意味のある曲だと捉えています。
──3ボーカル体制の中で常に歌唱を担当してきた田倉さんと小田さんは、7人全員での歌唱をどう捉えていますか?
田倉 今までだったら3人目のボーカリストのことを意識して、その曲の強みを引き出すことを考えていましたが、この曲ではシンプルに7人の声を入れるので、誰かに合わせるのではなくて単純に自分が今持てるすべての力を出そうという気持ちになりました。おそらくみんな同じ気持ちだろうから、スパフルの持てる力を集結させたのが「青い果実」という楽曲だと思います。すごくインパクトのある曲だし、僕らの解放されていなかった部分がこの曲には詰まっていますね。
小田 活動初期はなぜ僕らは3ボーカルなんだろうと疑問に思っていたくらいだったので、こうして7人で歌うと聞いたときに違和感のようなものは全然なくて。むしろこのときのために7人で歌える曲を残しておいたのかなと思いました。これまでのスパフルの曲は誰かを励ます応援歌が多かったけど、「青い果実」は自分たちのことを伝える歌詞が多い。今のスパフルを歌った楽曲だから、7人で歌えることがすごくうれしいです。
──今年3月発表の2ndシングル「サクラフレフレ」は“大人になること”をテーマにしていましたが、「青い果実」は未熟であることの肯定が歌われています。これはスパフルのメンバーの年齢が“大人と子供の狭間”にあるからだと思いますが、皆さんは“大人”という概念をどう捉えていますか?
星野 小さい頃は20歳の人ってすごくカッコよくてキラキラしていたイメージだけど、いざ自分が19歳になってみると周囲の大人も普通に見えてくるのが不思議で。自分でも大人のことを抽象的なものとして捉えていたんだなって気付かされました。「青い果実」では「『大人』という2文字で決めつけないで。僕は僕だよ」という肯定的なメッセージを伝えていて、それはすごくスパフルらしい前向きな発信なんじゃないかなと思っています。
──すでに成人している最年長メンバーの阿部さんも同じ感覚ですか?
阿部 うーん。僕はそんな深く考えたことがなかったなあ。
田倉 年上だけど、中身は一番末っ子なんですよ(笑)。
──20歳を超えると「もう大人だね」と言われません?
阿部 こういう活動をしているからか、あまり言われないですね(笑)。
田倉 隼大より学年が1つ下の僕が代わりに。最近、「大人ってなんだろう」と考えたことがあって、おそらくですが、責任というものがわかるようになり、それを踏まえてどう行動できるかで大人かどうかが決まるのではないかと考えています。社会に出て働いたとしても、きっと自分の未熟な部分はいつまで経ってもついてくるものだと思うんですよ。だからその未熟さを否定するんじゃなくて、それも受け入れて大人になっていく。「子供だろうが大人だろうが、楽しんだ者勝ち」という「青い果実」のメッセージ性は、すごく純粋で魅力的だから、こういう大人になりたいなって素直に思います。
田倉振り付けの「ポップコーンフィーバー」
──アルバムの2曲目「ポップコーンフィーバー」は、小田さんと田倉さんのボーカルに堀内さんを加えた3ボーカルの楽曲です。今年9月発表の3rdシングル「サマー☆★げっちゅー」のように、“にぎやかな楽曲は堀内さんが歌う”という流れが定着してきましたね。
堀内 アップテンポでめっちゃテンションが上がる曲を任せてもらえるのはうれしいですね。特に「ポップコーンフィーバー」は僕が帰国子女であることを生かして、随所に英語が入れてあるのがめちゃくちゃ楽しかったです。レコーディングでちゃんと英語を吹き込んだのは初めてじゃないかな。
──英語のみならず、堀内さんが兼ねてからライブのMCなどで語っている「宇宙」に関する歌詞も入っていますね。
堀内 そう! もう僕のための楽曲だと思ったからうれしくて。
田倉 「宇宙まで飛び出して」という歌詞を見たときは、「ここは結流が歌うんだろうな」ってすぐわかったよ(笑)。
小田 結流くんは歌うと声が低くなるから、僕がオクターブ上で歌うパートもあって、そこは聴きどころですね。普段の曲よりもちょっとキーが低めだし、結流くんとの3人だからこそ表現できる響きがあると思っています。それと、この曲はメンバーの暉くんが振付を考えてくれて。
田倉 デモを聴かせてもらったときに一瞬でこの曲の虜になって、すぐ「振付を考えさせてください」ってチーフマネージャーさんに連絡しました。その時点で振付師の方に依頼していたようなんですが、「そこまで言うなら」と挑戦させてもらえることになって。僕の考えた振付のビデオを送り、それを観て検討してもらいました。
──無事、田倉さんの振付が採用されたんですね。
田倉 厳正な審査の結果、使ってもらえることになりました。もちろん修正するところもたくさんあったけど、曲を聴いて自分なりに表現したいダンスを思い描いて、それを形にできたのはいい経験でした。そこまで難しい振付にはあえてせず、みんなで一緒に騒げるようになっているので、ライブで披露されるのを楽しみにしてほしいですね。
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“叫べない隼大”が歌う失恋ソング