音楽ナタリー Power Push - The Skateboard Kids×美濃隆章(toe)
“名古屋のオルタナがつなぐ架け橋
愛知県在住の大学生4人によるバンド・The Skateboard Kidsが、テイチクエンタテインメントの新レーベル・I BLUEよりメジャーデビューを果たす。11月23日発売のデビュー作「NEWTOPIA」にはエンジニリング全般で美濃隆章(toe)が参加しており、バンドの繊細なサウンドに力強さと説得力を与えている。音楽ナタリー初登場となる今回のインタビューでは、メンバー4人に美濃を交え、バンド結成の経緯からアルバム制作の裏側までじっくりと語ってもらった。
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 笹原清明
The Skateboard Kids誕生の経緯
──アルバムを聴かせていただいて、楽曲とサウンドのクオリティにまずは驚いたのですが、これが活動歴2年に満たないバンドの音だと聞いてさらに驚きました。2015年の結成からメジャーデビューまで、なかなかの急展開ですね。
日置逸人(Vo, G, Syn) それは僕ら自身も驚いてます(笑)。
──まずはバンド結成のいきさつから教えてもらえますか?
日置 僕は中学、高校と同じバンドを続けてたんですけど、大学に入ってそのバンドを辞めたタイミングで、花井を誘って始めたのがこのバンドの原型です。
花井淳巨(G, Cho) はい。そのあとすぐ田保くんが入って。
田保友規(Dr) 2015年の2月に最初の音源をリリースして、僕が入ったのが3月か4月かな。
──音楽的な方向性は日置さんが以前やっていたバンドから地続きなんですか?
日置 前のバンドはもう少しポップな、歌モノのギターロックみたいな感じでした。昔から好きなものは今やっている音楽に近かったんですけど、技術的に追い付かないところもあったんです。だんだん技術的にも上がってきた頃に、前のバンドと並行して新しいことを始めようと思ってたんですけど、そんなタイミングでバンドは解散してしまって。
──このバンドでは、作りたい音楽に見合ったポテンシャルを持ったメンバーを探した?
日置 いや、そんなことはないですけど(笑)。技術的なことよりも、まずは音楽の趣味が合うかどうかが大事で。同じものを聴く必要はないんですけど、例えば1つのライブを観て、これはカッコいい、カッコ悪いという判断が共有できる人じゃないと一緒にバンドはやれないなと思います。
──バンドの方向性を確認する上で例に挙げたアーティストは?
日置 ポストロック系ですね。Sigur RósとかKyteとか、そのへんを当時よく聴いてたので。
──そこに呼応したのが花井さん、田保さん、岡さんだったと。
岡大樹(B) はい。みんなそれぞれ根底にある部分が似ていると思うので、バンドはそこに向かって自然と進んでいる感じですね。
メンバーそれぞれのルーツ
──では皆さんそれぞれのルーツを教えていただけますか? 子供の頃どんな音楽を聴いて育って、どのようなきっかけで楽器を始めたのか。
田保 ドラムをちゃんと始めたのは大学に入ってすぐの頃で。最初は普通のロックをやっていたんですけど、一旦落ち着いた頃にジャズやインスト系に走って、いろいろ漁っているうちにポストロック系のロックにたどり着いた感じです。
──ドラムを選んだきっかけは?
田保 高校で楽器を演奏する授業があって、たまたまドラムに……。
日置 高校の授業で目覚めたの?(笑)
田保 たまたまだったんですけど、それが楽しかったので。
日置 僕は父親や兄が超音楽マニアで。父親は特にプログレが好きで、Yes、Pink Floyd、King Crimson、Genesisあたりが延々流れているような家だったんです。そこから音楽に入ったので、逆にJ-POPにはあとから衝撃を受けたんですよ。「こんな音楽があったのか!」と。プログレのほうがポピュラーなものだと思ってたから(笑)。
──とんだ英才教育ですね(笑)。
日置 「4分で終わる曲なんてあるの!?」みたいな(笑)。曲って15分から20分ぐらいあるのが普通だと思っていたので。あと、兄はけっこう歳が離れていて、僕の世代では聴かないようなCDをたくさん持ってたんです。中でも最初にハマったのはグランジ系で、Pearl JamとかSoundgardenが好きになって、そこからスマパン(The Smashing Pumpkins)とか。ギターも兄の影響で、兄が持っていたからすぐに始められました。今になって思えば、かなり恵まれた環境ですね。
花井 僕も親がギターをやっていて、最初に触ったのは父のクラシックギターでした。近所の小さな音楽教室に小学生の終わり頃に入って。中学生のときに、同じくギターをやっていた兄が近所の友達とバンドをやるから「お前も入れ」みたいな。そのときはELLEGARDENとかをよく聴いてましたね。
──お父さんはクラシックギターを演奏していたということは、音楽的には……。
花井 いや、好きなのはキャロルとかだったんですけど(笑)。親からの影響は特にないですね。
──岡さんはなぜベースを?
岡 中学3年生の頃に、仲がよかった友達と「バンドをやろう」という話になって、ボーカルをやりたい奴、ドラムやりたい奴、ギターが2人……で、最後に残った僕がベースで。
──よくあるパターンですね。
岡 けっこうベタな感じで。やってたのはRADWIMPSかBUMP OF CHICKENかELLEGARDENみたいな。僕ら以外の周りにいたバンドもみんなそんな感じでした。高校生の頃にポストロックに触れる機会があって、そこからKyteだとかSigur Rósを聴いたんですけど、当時はよくわからなくて。このバンドに入る直前は、宇多田ヒカルとかYUKIとかaikoとか、そのへんばっかり聴いてました。結局「J-POPが最高!」みたいな感じだったんですけど(笑)、このバンドを始めて改めてSigur Rósとかを聴き返してみたら、すごく理解できたというか。
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収録曲
- Laundry Lighting
- Somewhere
- 1994
- Dieving
- Interloper
- Bonfire
- Coastal Hill
ワンマンライブ情報
NEWTOPIA Release ONE MAN LIVE
- 2017年1月9日(月・祝)愛知県 K.D ハポン
The Skateboard Kids(スケートボードキッズ)
愛知県在住の日置逸人(Vo, G, Syn)、花井淳巨(G, Cho)、岡大樹(B)、田保友規(Dr)からなるロックバンド。2015年2月にデモ音源集「Chanpaul」を発表し、活動をスタートさせる。Bandcampを通じて配信リリースされた同年8月発表のデモ音源集「Spiritus」はアメリカのラジオ局でオンエアされるなど海外でも反響を集める。2016年11月にはテイチクエンタテインメント内の新レーベル・I BLUEよりメジャーデビュー作となるミニアルバム「NEWTOPIA」をリリース。2017年1月には愛知・K.D ハポンにてワンマンライブを行う。
美濃隆章(ミノタカアキ)
1974年生まれ、神奈川県出身のアーティスト。popcatcher、REACHを経て、toeのギタリストとして活動中。またエンジニアとして、toeのほかクラムボン、mouse on the keys、dry river string、Spangle call Lilli line、ゲスの極み乙女。、Charaなどのレコーディング、ミックス、マスタリングでその手腕を発揮している。さらに音楽レーベルMachupicchu INDUSTRIASを主宰し、toeやmouse on the keysの音源をリリースしている。