Twitterで話題を集めた菊池遼の“しゅきぴ”
──菊池さんのTwitterの面白さよりも、音楽が正当に評価されてほしいなと思います。
菊池 本当ですよー! Twitterのこと知ってたんですか? 出ちゃったよ、この話が。
前田・斉藤 あはははは!(笑)
菊池 なんかもう、すいません……。
斉藤 音楽性もそうだけど、こっちもかなりギャップあるんで(参照:菊池 遼 ( the quiet room ) (@quiet_vo) | Twitter)。
菊池 1年ちょい前くらいかな。ボーカルというのもあって歌詞的、ポエム的なツイートはたまにしてたんですけど、そういうのをポロッとつぶやいたら思ったより反応がよかったんですよ。それを事務所の方が気に入ってしまって。
斉藤 「めっちゃいいよ! 文化にしよう」ってね。
菊池 「ちょっとチャレンジしてみます」と軽いノリで言ってたら、本当に火が点いちゃって。僕のつぶやいた言葉でグッズまで作ることになったり。
──“しゅきぴ”ですよね。
菊池 “しゅきぴ”は僕が作った言葉ではないですから! 女子高生とかが好きを「しゅき」って言うのと、彼氏のことを「彼ピ」と言うのが合わさって、好きな人を「しゅきぴ」って呼ぶらしくて。でも自分は歌詞を書く人間として、そうやって日本語が簡略化されていくのはよくないと思ったんですよ。「若い頃からちゃんとした日本語でしゃべるべきだ」「日本語という文化をもっと大事にすべきだ」みたいなことをツイートしたかったんですけど、それだけじゃつまらない。で、最後に「僕はしゅきぴですけどね!」ってオチを付けたら、またもや思ったより拡散されちゃって。
前田 それで味を占めたんだ。
菊池 いやいや、違うから。いつの間にか俺が「しゅきぴ」って呼ばれるようになってるのおかしいでしょ!
斉藤 僕らの曲では「ぴ」なんて歌ってないんですけどね(笑)。
菊池 本を読むのも好きだし、日々いろいろインプットして歌詞を書いてるのに、Twitter上だと「ぴ」の人みたいな扱いをされてて困ってる部分はあるんですよ……。
最近の若い世代は「好きです」のことを「しゅきぴ♡」と言うのが流行りだと聞いたんですけど本当ですか?
— 菊池 遼 ( the quiet room ) (@quiet_vo) 2018年1月7日
もし本当だとしたら凛々しく奥ゆかしい「日本語」という文化が崩れていってしまうことに強い危機感を覚えますし、僕はそういうのすごく好きなので沢山言われたいですね。ねえねえ、しゅきぴ~♡
──実際はそれこそお茶の間に受け入れられるようなバンドなんですよね。「胸キュンスカッと」発のコンピでも錚々たるメンツと肩を並べてますし(参照:miwa、いきものがかり、エビ中ら楽曲収めた「胸キュンスカッと」アルバム第2弾発売)。
菊池 ありがとうございます! そう、音楽を聴いてもらえるとうれしいですね。今のthe quiet roomは茶化せないくらい、すごくいい曲ができてますから。
楽曲構成にバリエーションが生まれた「White」
──改めて、新作ミニアルバム「White」はどんな仕上がりになりましたか?
菊池 今回ピアノを取り入れられたことがやっぱり大きいです。もはや王道ギターロックではないというか、変に頑なだった部分を1つ抜け出せたアルバムだと思います。特に「夜中の電話」はピアノと歌から始まるんですけど、そういうのを恐れずチャレンジできるようになってきてるし。
斉藤 ギター以外の楽器を真ん中に据えた構成が新鮮でした。そういったアレンジでギターを弾いてみたい気持ちはあったので。ただ、もともと前に出ていきたいタイプのプレーヤーだから「どうなるのかな?」という不安もありましたけど。
菊池 むちゃくちゃ我慢してたもんね、弾くの。
斉藤 我慢してフレーズダイエットして、それでも「まだ弾いてるね」って言われました(笑)。
菊池 足し算でずっとやってきたバンドだからね。「音数が多いほうがカッコいいに決まってるだろ!」みたいな感じで、言葉にしても詰め込んでしまいがちだったんですよ。
斉藤 いいフレーズが出てきちゃったら、迷わず全部入れたくなるスタンスでした。
──前作までに比べたら、かなり引き算ができていますよね?
前田 「夜中の電話」の始まり方とか、自分たちでもびっくりするくらいです。今までならあり得ないほど引いてるから。僕らのバラードはシューゲイザー的な轟音系が多かったんですけど、そうじゃないものにできましたし。
菊池 「夜中の電話」と「パレードは終わりさ」では僕、エレキギターを弾いてなくてアコースティックギターだけだし、パッと聴いただけでもだいぶ印象が違いますよ。少しずつ大人になってきたと思う(笑)。
前田 とはいえ、さっき話に出たいわゆる激しい曲ももちろんあって。
菊池 3人とも男らしい部分をどこかで出したい性格ではあるからね。そういう捌け口になった曲が「Tansy」です。
──確かに「Tansy」は男らしさを感じます。
菊池 いっそ全曲ポップにまとめてもいいのかなとも思ったんですけど、2人に断固拒否されました。
斉藤 「何を日和ってんだ」と。
前田 「絶対にヤダ!」ってなったね(笑)。
菊池 激しい曲を作るとき、「ちょっと休憩してくるわ」みたいな感じで僕は一旦スタジオから出るんですよ。で、戻ってくるとイントロが完成してるっていうくだりが毎回あるんです(笑)。
斉藤 「Tansy」もそのパターンなので、ほかの曲と違ってどうしてもアレンジ先行になるんです。「こういう展開にしたいから歌メロを増やしてよ」「Aメロをラップっぽくしよう」みたいに作っていく感じ。完全にミクスチャーのテイストにしちゃったんで、「そう歌ってもらわないと演奏が面白くなくなっちゃうからさ」と菊池にお願いしました。
菊池 韻を踏むラップ調の歌い回しも初めてですよ。
斉藤 このアレンジになったのって、歌詞がなかなか上がってこなかったのも大きいよね。曲名だけ決まっててさ、「Tansyってどういう意味なの?」と聞いたら。
菊池 タンジーは花の名前で、花言葉が「抵抗」なんですよ。
斉藤 あと「怒りの感情の曲なんだ」という話を聞いて、それだけをヒントにフレーズを考えたんです。
前田 ベースも8割くらいスラップで弾いてますね。バスドラのキックと合わせて、点を押し出す感じにしてみました。
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女性的な目線を培ったバックグラウンド