the quiet room|現体制初、新たな一歩踏み出す覚悟の新作

the quiet roomが6月26日にミニアルバム「White」をリリースする。

「White」には、日本テレビ系の情報番組「バゲット」のエンディングテーマに起用されたリード曲「パレードは終わりさ」をはじめ、初の本格バラード「夜中の電話」など、随所で新たな試みを取り入れた全5曲が収録される。

音楽ナタリーではthe quiet roomのメンバー全員に初のインタビューを行った。現在の彼らはどんな状況にあって、何を表現しようとしているのか。これまでの活動も振り返りつつ、新作について話を聞いた。

取材・文 / 田山雄士 撮影 / 斎藤大嗣

the quiet roomの今

──バンドの結成が2010年なので、活動歴はけっこう長いですよね。オリジナルメンバーの菊池さん、前田さんは高校のときに知り合い、斉藤さんが正式加入してからでもすでに5年以上ということで。今のthe quiet roomはどういう状況にあると感じますか?

菊池遼(Vo, G) 前作のミニアルバム「色づく日々より愛を込めて」(2018年7月発表のアルバム)のツアーファイナルだった渋谷CLUB QUATTRO公演(2018年9月2日開催)のあとにドラマーが抜けて新体制がスタートしたんですけど、それを前向きに捉えられたのがよかったというか、音楽的に変わるきっかけになったと思います。今までは4人で鳴らすギターロックにすごくこだわりがあって、音源もなるべく4人だけで再現できるものにしていたのを、新作ではピアノやパーカッションを入れることに挑戦してみたんです。従来のthe quiet roomも大切にしつつ、いいバランスで作れたのが「White」で。

斉藤弦(G) 個人的には「もっと歌を立たせるためにギターを弾かない」という感覚をやっと覚え始めた気がします。最近はドラムのアプローチにもいろいろ意見を言うようにしてるんですけど、そうなるとやっぱり「自分の考え方も変えていかなきゃな」と思うので。

前田翔平(B) 今の体制になってからいろんなドラマーの方にサポートしていただけたので、ベーシストの僕としてはスキルアップできたと思います。

the quiet room

菊池 「White」の1曲目「パレードは終わりさ」は赤色のグリッターでドラムをやってたクラカズヒデユキくんにお願いしました。ライブサポートはしてないんですけど、この曲に合いそうだったので。それ以外の曲は2人(前田、斉藤)の大学の後輩の古田くんに叩いてもらってます。彼の紹介できるプロフィールがあまりにないのですが……(笑)。

斉藤 同じ音楽サークルにいた後輩だからね。僕がthe quiet roomに入った理由として、前田とそのサークルで一緒だったのが大きかったんで、それに近い感じで今回サポートしてもらうことになったんです。

前田 ライブを含めて、もう4、5カ月はやってもらってるよね。

菊池 ほかにバンドをやってなかったから頼みやすかったし、スタジオで合わせてみたら僕らもすごくやりやすくて。

前田 なので、思った以上にいい感じで活動できています。

──新体制になって、この8カ月くらいは止まらずに走り続けてきましたもんね。

菊池 渋谷CLUB QUATTRO公演のあとにすぐワンマンライブをやりましたし。東京へ出てきた頃に拠点としてた下北沢MOSAiCで、原点回帰の意味も込めて開催しました(参照:the quiet room、新体制初ライブ&サーキットイベント開催)。

斉藤 振り返ってみても、ポジティブに乗り越えられたと思います。

菊池 今までの経験が糧になってるのかもしれないです。今だと「よかったらサポートやるよ」と向こうから言ってきてくれるバントマンの仲間がいたりして。そんな声にもすごく助けられました。

時間にとらわれないライブを見せたい

──ここに来て初の全国ワンマンツアーが決定していますし、バンドとして過渡期を迎えてるんじゃないでしょうか?

菊池遼(Vo, G

菊池 僕ら、東京の大きい会場でワンマンをやるのが1つの目標だったんですよ。渋谷CLUB QUATTROでのワンマンを3回やってきて、この前の3回目でようやくソールドアウトできたので、やっぱり止まらずにステップアップしていきたい。ワンマンツアーもずっと目標にしていたし、ここで勝負に出たい思いがありますね。最近は対バンとかの30分のステージじゃ物足りなくて、the quiet roomの音楽を表現し切れていない感じがするんです。「本当はもっといろんな曲を演奏したかったのにな」とか、そういう気持ちが強くなってきていて。1、2時間のロングステージに挑戦してもお客さんを飽きさせないバンドになってきた実感が少しずつ出てきて、それが音源にも表われてるのが今なのかもしれません。新作の5曲も聴き応えのある、飽きさせない音楽が作れたと思うので。

斉藤 いろんな面を見せたいよね。「これだけじゃないんだぞ!」みたいな気持ちが強くて、30分のセットでも盛り上がる曲ばかりを演奏することは少なくなったし、時間にとらわれないステージが次の目標になってきてます。みんなが思うthe quiet room像ってたぶんあるんですけど、僕らにとってはどの曲も自分たちっぽいから、分け隔てなくライブでやりたくて。

前田 ミュージックビデオが上がっている何曲かだけを知ってる人からすると、きっとポップでさわやかなイメージが強いバンドだと思うんですけど、僕らには激しい曲もあるし、ライブだとその多面性がわかりやすいと思います。「なんでそんなバチバチにベースの弦引っぱってんの!?」「ギターもめちゃくちゃギュイーンとやってるな」と思わせるようなパフォーマンスもするので(笑)。

菊池 自分たちがやるべきことが見えてきた感じはしますね。すごく大きい夢なんですけど、お茶の間に受け入れられる国民的なバンドになりたいんですよ。例えばMr.Childrenやスピッツみたいなバンドって、曲の幅が広いですよね。タイアップソングでポップなものを聴かせたかと思えば、アルバムでは激しい曲もアンビエントっぽいのもやっていたりする。なんでもできて、どんな層にも評価してもらえる。そういうのに憧れがあるんです。その幅広さを僕らもちゃんと出せるようになってきました。