THE PINBALLS|今日が終わって美しい明日へ

アルバムの全体像を握る「風見鶏の髪飾り」

──先ほど「BEAUTIFUL DAY」の際にも話に出た「風見鶏の髪飾り」は、牧歌的なサウンドと物語のような歌詞が印象的です。

中屋智裕(G)

古川 僕、この曲のストーリーがアルバム全体で言いたいことなんじゃないかと思っていて。この曲の歌詞は風見鶏が一度死んで、“お嬢さん”に拾われて、髪飾りとして生まれ変わるというストーリー。再生をするために死は必要なもの、死を経験してこそ本当のよさが人に伝わるのかもしれない、ということを伝えたかったんです。それって僕たちの音楽もそうで。自分たちは本当にカッコいい音楽をやってるという自負があるんですけど、もしかしたらどういう形かはわからないけど、一度死を経験することで本当の意味でリスナーに届けることができるのかもしれないと。死ぬつもりもないし、バンドは健康なんですけどね!

──CDはバンドが解散したり、死んだりしても残りますしね。

古川 そうそう。リアルタイムでそのバンドのことを知らなくても、あとから存在を知って好きになることもよくあるから。それだけCDを作るということには意味があると思う。この“死と再生”というのがアルバム全体を通して歌いたいことなのかなと思っていて。

──“1日の一生”みたいなことですか?

古川 そうそう! 次の「回転する宇宙の卵」もまさに“死と再生”をテーマにした曲で。

──アルバム唯一のインストゥルメンタルナンバーですね。

古川 僕は今、曼荼羅というものにハマっていて。曼荼羅っていうのは、僧侶が言葉の通じない人に教えを伝えるための図像なんですけど、教えを砂で描いたあとにぶち壊しちゃうんです。その感じがライブに似ているなと思って、伝えたいことを音にして、ぶち壊すようなサウンドにしました。それがCDとして残るという。不思議です。

夕方から再び夜へ

──「DUSK」からは終わりに向けてエモーショナルな楽曲が続きます。

古川 「DUSK」は夕暮れで、一番好きな時間帯なので一番優しい曲にしたいなと思いました。夕暮れはなんだか切なくなるし、帰宅時間だから疲れた人を優しく癒してあげたいなと。

──なぜ夕暮れが一番好きなんですか?

古川 なんでなんだろう。なんか切なくて昔から好きでしたね。「あ、シチューの匂いがしてる」って敏感になったり、「帰らなきゃ」って思って寂しくなったり、その感じが好きでした。

──そして「COME ON」でまた夜がやってきます。

古川 はい、「繰り返しまた夜が来る」をテーマに考えていたら、蝶々が思い浮かんで来まして。蝶々は魂の生まれ変わりを象徴する生き物でもあるので、ここでも“再生する”ということを歌っています。

──終盤、テンポが速くなっていくことで、ラストスパートと言うか、終わりへ向かって行く感じが伝わってきます。

古川 次々と再生を繰り返していく様子が伝わればいいなと思って加速させています。

──そして最後は「銀河の風」。冒頭で「怪しい夜で始まって、優しい夜で終わる」のが自分たちらしいとおっしゃっていた通り、まさに優しい曲ですね。

古川 一番効率よく宇宙に行く方法は意識を飛ばすことだ、という話を聞いたことがあって。さっきから話している死と再生の話にも通じるんですが、例えば体が死んだとして魂だけになると、その形が一番遠くに飛べることになる。その様子を「銀河の風」に例えて書きました。最後にレコードを逆回転させた音が入っているんですが、それが生まれ変わりを表現していて、また1曲目「アダムの肋骨」……つまり女性の中の、新しい生命に戻っていくという。

森下拓貴(B)

──そしてまた夜になると。では最後に、本作が皆さんお一人ずつにとってどのような作品になったのか、教えてください。

森下 何も隠してない作品になったなと思います。本心をそのまま音にしたと言うか。これが嘘偽りないTHE PINBALLSなので、自信を持って「聴いてください」と言える作品ですね。アルバムの構成が左右対称になってたりとか、今まで温めていたけど実現できなかったアイデアもすべて出せたと思うので、隅々まで楽しんでもらいたいです。

中屋 「フルアルバムは、ミニアルバムの2倍の曲数が入ってます」という単純な感じではなく、古川が話した通り、ストーリーやこだわりがあって並んだ12曲。すごく思いも力もこめています。

石原 毎回そうですけど、シンプルにいい曲がいっぱい詰まっているので多くの人に聴いてもらいたい。それだけです。

古川 最初にも言いましたけど、とにかく聴いてくださる方へ「いつもありがとう」とか「愛してる」と言うために作ったアルバムです。テーマや細かい設定などを細かく考えてるのもすべて、「アイラブユー」を伝えるためです。それが少しでも伝わってくれたらうれしいです。

公演情報
end of the days tour
  • 2019年2月17日(日) 千葉県 千葉LOOK
  • 2019年2月23日(土) 長野県 LIVE HOUSE J
  • 2019年2月28日(木) 宮城県 enn 2nd
  • 2019年3月2日(土) 北海道 DUCE SAPPORO
  • 2019年3月7日(木) 福岡県 THE Voodoo Lounge
  • 2019年3月9日(土) 香川県 高松TOONICE
  • 2019年3月10日(日) 大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2019年3月16日(土) 岡山県 PEPPERLAND
  • 2019年3月17日(日) 愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
  • 2019年3月22日(金) 東京都 LIQUIDROOM