the pillows|覚悟を決めた山中さわお 再放送のない未来へ向かう

人生の集大成として完璧なライブがやりたい

──「眩しい闇のメロディ―」は映画「純平、考え直せ」の主題歌に採用されてますね。

これは10年前には作ってた曲で、映画の主題歌の話をいただいてストーリーを拝見したところ、「あれ? ぴったりの曲がもうあるじゃん!」と思ったの。弾き語りで録ってたのを映画の監督やプロデューサーに聴いてもらったら「これでぜひ!」と言っていただけて、やっと出番が来た感じなんだ。しかも、アルバムとの相性もよくて、入れられたってわけ。結果的に今まで僕の“心のオーディション”で「Brilliant Crown」「持ち主のないギター」「ムーンダスト」に負けてきた「眩しい闇のメロディ―」だけど、それでもすごく気に入ってたので。何か自分が行き詰まったり困ったりしたときにシングルで出せるくらいね。

山中さわお(Vo, G)

──「BOON BOON ROCK」「Before going to bed」の2曲がアルバムを締めるエンドロールっぽさもいいですね。いろんな人への感謝も見えて。

まあ、「BOON BOON ROCK」くらいの愛情表現はコンスタントに出してるつもりなんだよ(笑)。バスターズ(ピロウズファンの呼称)に対してね。「Before going to bed」は思いっきりドキュメンタリーとして書いて、30周年のアニバーサリーを意識した曲。こんなローファイサウンドもやってみたくてね。歌詞は自分の少年時代と、東京に来てピロウズが始まったばかりでまだいろいろうまくいってない頃、そして現在の心境って感じ。「REBROADCAST」というタイトルのコンセプチュアルなアルバムとしては、この思いを最後に入れてこそ完成だろうと。

──と言うのは?

実際の人生に再放送はないので、人生は一度きり。だからこそ、1秒1秒が大切でサボる時間なんてないし、その中でどう幸せに生きていくかってこと。いいラストだと思う。ギターソロも死ぬほどカッコいいよね。曲の構成をざっくり決めて、試し録りするときに真鍋くんがいきなりこのソロを弾いてさ。「すごくいい! これでいこう」って推したら、「じゃあ、この感じで家で練ってくるわ」なんて言い出したんで、「違う違う違う! 頼むから今のテイクのまま使わせてくだせえ!」ってお願いして(笑)。

──「Before going to bed」の終わり方も好きです。

あれね! フェードアウトにするつもりだったんだけど、結局しなかったんだよ。この曲のデモを家に持って帰るときに、エンジニアが間違えてフェードアウトしないでミックスダウンをしちゃったのがきっかけでさ。すっげえ締まりが悪くてぼんやり終わるのが逆にいいなと思って、なんか好きになってしまった。

──そう言えば、歌詞に出てくる「掃除のバイト」って、以前お話していた横須賀でやっていたバイトでしょうか?

そうそうそう。横須賀の米軍基地の中にある弾薬庫の壁のサビ落としってのをけっこう長いことやってた。2年くらい続く作業のところに配属になっちゃって、しんどい思いをしながらやってるうち、ピロウズでお給料をもらえるようになったと(笑)。新築のマンションをクリーニングする楽な仕事もあったし、としまえんとかも掃除に行ったかなあ。

──30周年に向けては、今はどんなことを考えてますか?

来年の9月におそらくアニバーサリーを飾るライブをやるので、それはがんばりたいな。現役感がある意味においてのアニバーサリーって、30周年が最後だと思ってるから。ピロウズ40周年になると、一番若い俺が60歳で、ほかのメンバーが67歳とかでしょ? 死んではないだろうが……まあドラムは死んでるな(笑)。続けてても現役感で言ったらギリギリだから。自分の人生の集大成として完璧な、1秒たりとも目が離せないライブを30周年の記念公演ではやりたいね。楽しみというよりちょっとプレッシャーがあるけど、プレッシャーを上回るような思いはあるよ。

──楽しみにしてます。30周年ではライブ以外にも何か予定はありますか?

企画としては大きな遊びが1つ決まってるけど、まだ秘密。それがあって、9月のライブに備える感じかな。本当に、集大成を見せられるようにしたいね。

山中さわお(Vo, G)