ナタリー PowerPush - the pillows

22年目も戦闘的に突き進め! 最新アルバム「HORN AGAIN」

「Movement」はピロウズらしくない?

──バンドとしては、むしろ若返りさえしてるような印象があるんですよね。

山中 でもね、シングルの「Movement」とか、あれは本来結構大人っぽい曲なんですよ。スガシカオさんみたいな雰囲気のアレンジがハマる曲なんです、ホントは。それをピロウズのアルバムに収めるべく完成させるのには、実は結構時間がかかってる。

──結果的にアルバムの中でもとりわけピロウズっぽい曲になっている気がします。

山中 いくつかインタビュー受けて「あ、そうなんだな」って思ったけど、自分ではすごく浮いてる曲だなと思ってたんです。そんなことない?

インタビュー風景

真鍋 個人的にはあるよね、うん。使ってるコード感とか。

山中 最初はもっとソウル的な雰囲気で、ベースも裏で鳴らすのがハマる感じだったんだけど「いや、ポール・ウェラーよりはTHE JAMの後期みたいにしよう」って伝えて、ようやくアルバムに収めても自然なサウンドになった。

──最初のイメージをメンバーに伝えるときは、キッチリ作り込んだデモ音源を渡したりするんですか?

山中 いや、いつもスタジオで弾き語りで聴いてもらうだけ。

──じゃあ今回のように、レコーディング作業中に全然違う仕上がりになることも結構あるんですか?

山中 ありますね。パっとやってみて面白くなかったら、みんなに丸投げして。予想外の球が返ってきて「おー、なるほど。自分の中のスイッチ入れ替えるわ」みたいな。

“つじつま合わせ”が名曲に

──アルバム全体の流れは、大量に作った曲の中から絞り込んでいくわけですよね。その絞っていく作業の中で、あらかじめテーマを決めていなくても、自分たちの中にある共通のムードみたいなものが浮き上がってくるんじゃないでしょうか。

山中 違うんですよ。それはすごく簡単な理由で。「歌詞が書けたら」っていうことなんです。

──あはははは(笑)。それはぶっちゃけちゃって大丈夫なんですか?

山中 大丈夫、大丈夫。

──歌詞ができた10曲がここに入っている。

インタビュー風景

山中 そういうことですね。今回のアルバムだと「EMERALD CITY」とか「Lily, my sun」はものすごく古い曲なんです。「EMERALD CITY」なんてMDで残ってたぐらいだから。それは僕にとって珍しいことではなく、アルバムには必ずそういう「ようやく歌詞が書けた曲」があって。歌詞なんて書けと言われれば15分後に完成するけど「それでいいのか!?」って思うんだよ。昔作った曲で今歌詞が出てきたというのは、そこに何かの答えがあるんじゃないかな、今やる意味がそこにあるからなんじゃないかなっていう。

──その作り方だと、意識的にまとめていくのとはまた別の、コアな部分がアルバム全体のムードとして出てくるかもしれませんね。

山中 そうだと思います。ま、例外はありますけどね。あまりにも無計画なんで、どうしても曲順並べるとどこかがうまくいかない、つじつまが合わないってときに、やっぱそのまま出すのはイヤなので。今回つじつま合わせに書いたのが「Biography」で、代わりに歌詞まで書いてた曲を1曲外したんです。レコーディング後半にパパッとセッションして「いいんじゃねえの?」みたいな感じで。

真鍋 そのね、つじつま合わせの曲がいつもいいんですよ。レコーディングの現場で短期間で作ったときにね、意外とサラッといい曲が生まれるんです。

人間の一般的な集中力の限界は……

──フルアルバムというと、今はCDの容量に合わせた6~70分ぐらいのものが多いですけど、ピロウズのアルバムは基本的に4~50分、曲数も10~12曲というサイズですよね。カセットテープの46分、54分サイズに収まるような、昔からよく知っているアルバムのサイズ、という感じがします。これは意識してのことですか?

山中 あっ、そうですね。これは好みです。尺の長いアルバムがリスナーとして好きじゃないというか、絶対に早送りする曲が出てくるし。そんなに集中力が続かないよね、きっと。

インタビュー風景

真鍋 人間の一般的な集中力の限界は40分だそうです。

山中 またテキトーな(笑)。

佐藤 だから世の中でヒットした映画は全部40分なんだよ。

山中 そんなわけねえじゃん! でもなんでみんな長いんでしょうね。あれってみんなやりたくてやってんのかな。それともメーカーの人が「15曲ぐらいで」とか言うのかな。

──1曲の長さも、3分台のものが多いですよね。僕は「ロックは3分」っていうイメージが未だにあるんです。

真鍋 人間の一般的な集中力の限界は3分だそうです。

一同 あっはっはっはっは!!(爆笑)

山中 まあ、それも好みですね。もちろん曲によりますけど。「Limp tomorrow」みたいにイントロの長い曲は「ライブのド頭にやればすごく決まるな」とか、それこそライブを想定して作ったりもしますけど、ほっとくと短くなっちゃいますね。2分台ぐらいでいい。ちょっと短すぎるって注意されるぐらい、短くしようとしちゃうかな。好きな曲でもアウトロを早送りしちゃうぐらいせっかちなんで。アウトロはアウトロしかないフレーズを入れてくんないとダメ、同じだけどドラムだけ変えてくれないかとか……そんなちまちま考えたらそれはロックンロール的ではないね、全然(笑)。

ニューアルバム「HORN AGAIN」 / 2011年1月26日発売 / avex trax

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  • 通常盤[CD+DVD] / 3000円(税込) / AVCD-38201 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. Limp tomorrow
  2. Give me up!
  3. Movement
  4. Lily, my sun
  5. Biography
  6. Sad Fad Love
  7. Nobody knows what blooms
  8. EMERALD CITY
  9. Brilliant Crown
  10. Doggie Howl
the pillows(ぴろうず)

山中さわお(Vo,G)、真鍋吉明(G)、佐藤シンイチロウ(Dr)の3人からなるロックバンド。1989年に結成され、当初は上田ケンジ(B)を含む4人編成で活動していた。1991年にシングル「雨にうたえば」でメジャーデビュー。初期はポップでソウルフルなサウンドで好評を博すが、上田脱退後の1994年以降は徐々にオルタナ色を取り入れたサウンドへと変化していく。一時は低迷するが、精力的なライブ活動を続ける中で固定ファンを獲得。2005年には結成15周年を記念して、ELLEGARDEN、BUMP OF CHICKEN、ストレイテナー、Mr.Childrenなどが参加したトリビュート盤を制作。the pillowsの存在を知らなかった若年層にもアピールすることに成功する。また、2005年にはアメリカ、2006年にはアメリカ/メキシコでツアーを敢行。海外での人気と知名度も獲得する。結成20周年を迎えた2009年9月には初の日本武道館公演を行い、大成功を収めた。キャリアを重ねるごとに勢いと力強さを増し、今や日本のロックシーンには欠かせないバンドとしてリスペクトされている。2011年1月26日に通算17枚目のオリジナルアルバム「HORN AGAIN」をリリース。