the peggiesがニューシングル「センチメートル」をリリースした。表題曲はテレビアニメ「彼女、お借りします」のオープニングテーマで、恋人代行サービス“レンタル彼女”を題材に主人公・木ノ下和也の恋愛模様を描くラブコメディを華やかに彩っている。

このたび特別企画として、北澤ゆうほ（Vo, G）とアニメのヒロイン・水原千鶴を演じる雨宮天が弾き語りと朗読でコラボレーションする映像がthe peggiesのYouTube公式チャンネルで公開された。音楽ナタリーではこの収録と共に行われた対談の模様を届ける。

取材・文 / 須藤輝　撮影 / 塚原孝顕

これがプロか！

──先ほどまでお二人は、北澤さんは弾き語りを、雨宮さんは朗読をそれぞれ収録なさっていたんですよね？

北澤ゆうほ（the peggies）　はい。私は弾き語りで何度も「あ、間違えた」とかやっていたんですけど、雨宮さんは少ない回数でOKをもらっていたからさすがだなって。

雨宮天　いやいやいや。だって北澤さんは、弾き語りをしながらBGM的なポワポワーンみたいな音もギターで作られているじゃないですか。それにびっくりして。

北澤　エレキとアコギをどっちも使って。

雨宮　こういうやつですよね（エフェクターのスイッチを踏む真似をしながら）。足で踏んで音を変えるやつ。

北澤　そうそうそう。エレキでそれをやって「うん、OK」と思ったらアコギに持ち替えて。いやでも、私は声優さんのお仕事の現場を初めて見させてもらったんですけど、「これがプロか！」とすごく感動しました。うちのスタッフも、雨宮さんがちょっと歩きながら練習しているところを見て「あ、千鶴の声だ」って言ってました。

雨宮　わ、うれしい。千鶴はわりと自分の地声と近い部分で演じているので、だからこそああいう内容の朗読でいかに千鶴感を出すかというのはけっこう難しかったりして。台本は基本的にずっとモノローグみたいな感じだったので、どこか一部をセリフ化してみようかとか個人的な戦いがいろいろあったんですけど、千鶴を感じていただけていたのなら本当によかったです。

北澤　めちゃめちゃ感じました。

雨宮　ありがとうございます。

北澤　かわいい。

雨宮　えええええ！（笑）

北澤　今の笑顔すごい素敵でした（笑）。

和也にすごく共感した

──北澤さんは「彼女、お借りします」のオープニングテーマである「センチメートル」をどのようにして作られたんですか？

北澤　オープニングテーマを担当させてもらうことが決まってから、まず原作を全部読んで。原作の主人公を曲の主人公にもするというのはよくあることではあるんですけど、なんか読んでいるうちに和也にすごく共感したというか、応援してあげたくなるような感情移入の仕方をしてしまったんですよ。それで、この人を主人公にしたら、私もあんまり気負わずに自分の中にあるものをナチュラルに曲に昇華できると思って。実際、考えすぎずに、本当にひさしぶりにメロディも歌詞も素直に出てきたんですよね。

雨宮　へええ。そうだ、北澤さんは以前「かのかり」の生配信で、リモートでご一緒したときも和也のことを“推しキャラ”とおっしゃっていましたよね？

北澤　和也が一番好きです。

雨宮　私はちょっとそれが信じられなくて（苦笑）。原作を読み始めたとき、私はけっこう和也にイライラしていたタイプだったので「センチメートル」の歌詞を見て、原作者の宮島（礼吏）先生には申し訳ないんですけど、「よくあの和也からこんなにいい感じの歌詞が……」って。

北澤　ピュアな恋心が抽出されたと。

雨宮　そうそう。正直、「センチメートル」のおかげで私も和也を応援したくなるような気持ちになれたと思うんですよ。

北澤　うれしい。じゃあ、全国のちょっと和也にイライラしている方々に対しても、和也の好感度アップに貢献してるかもしれない。

雨宮　してると思います。私だったら、とてもじゃないけど和也からあんなに素敵な歌詞は出てきませんし、もし「センチメートル」を聴いてから原作を読み始めていたら、和也の見え方もずいぶん違ったんじゃないかなって。だから私が言うのも変ですけど、北澤さんが和也のことを好きになってくれてよかったです。

私、和也のことを好きになれるのかな？

北澤　和也にイラついている人って、多いんですか？

雨宮　そこはけっこう意見が分かれるみたいです。

北澤　私は原作を読んでいて、一瞬もイライラしなかったです。

雨宮　本当に？ 1巻の1話から？

北澤　うん。もしかしたら、私自身が小学校から大学までずっと女子校で、あんまり男の子と触れ合う機会がなかったから「へえ、大学生の男の子ってこういう感じなんだ」みたいな感じで受け入れちゃったところもあるかもしれない。

雨宮　私は、さっきもちょっと言いましたけど、最初のほうはキツかったんですよ。

北澤　「キツかった」って（笑）。

雨宮　そう、キツかったんです（笑）。原作を読み進めている間、「私、和也のことを好きになれるのかな？」って本当に不安だったし。それこそアニメが放送されてまだ序盤の頃は、私のラジオでもファンの方から「和也がイライラするんですけど大丈夫でしょうか？」みたいなお便りをいただいたりしたんですけど、そのたびに私は「後半になると許せるようになるから大丈夫だよ」とお返事していたんですよ。

北澤　許せるようになるのは、慣れかな？ それとも物語が進むにつれて和也の人間らしさみたいなものが徐々に見えてくるからなのかな？

雨宮　やっぱり和也はもともとすごく思いやりがある子だったりするじゃないですか。その対象が千鶴になっていくにつれて、おっしゃる通り和也の優しさとか男らしさというのがより表に出るようになってきたから許せるようになったのかな、と自分では思います。