野外フェス「夏の魔物2017 in KAWASAKI」が、9月10日に神奈川・川崎市東扇島東公園で開催される。2006年から青森で行われてきた「夏の魔物」が関東に上陸するのはこれが初めて。ジャンルを超えた独自のラインナップで支持を集める同フェスが、開催地を変えて新たな一歩を踏み出すことになる。
これを受けて音楽ナタリーでは、同フェスの主催者であり、“ペンライトが振れるロックンロールバンド” THE 夏の魔物を率いて活動する成田大致と、同じくフェスに長年深く関わるTHE 夏の魔物のメンバー、アントーニオ本多と大内雷電の計3名にインタビューを行った。初の関東開催に至る経緯や、今年のフェスに向けた意気込みなど、熱意あふれる発言をぜひチェックしてもらいたい。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 草場雄介
日本一行きづらいフェスが関東に
──これまで11年にわたって青森で行われてきた「夏の魔物」が、今年初めて関東で開催されます。まずはその理由から教えてもらえますか?
成田大致 「夏の魔物」は、もともと青森に住んでた俺が、ライブハウスで定期的に行なっていたイベントの拡大版みたいな感覚で始めたフェスだったんですけど、運営的な部分は自分の家族とか身内だけの少人数でやっていて。でも、続けていくうちにフェスがどんどん大きくなって、身内だけでは全く回らなくなってきたんですよ。だから、俺が2012年に上京してからは、東京のスタッフに手伝ってもらって一緒に準備や運営をするようになっていて。自分1人じゃジャッジできないことも増えたし、単純にスタッフみんなで青森に行く新幹線代とかもすごくかかるし、そういう状況の中、青森で続けていくのが難しくなってしまったんですよね。
大内雷電 例えばフジロックだって第1回は富士山でやって、そのあと豊洲でやって、今は苗場で定着してる。コミケも昔は幕張や晴海でやってたこともあるわけで。イベントがそうやって形を変えていくことは悪いことじゃないと思ってるんです。
──アントンさんは初の関東開催についてどういう印象を持っていますか?
アントーニオ本多 はい、やっぱり「夏の魔物」っていうフェスは日本一行きづらいフェスだったと思うんです(笑)。
──宿泊や交通の便を考えると、確かに参加のハードルは高いですよね。
本多 単純にお金も時間もかかりますし、特に私はフェスの次の日にプロレスの試合がある場合が多くて。だから申し訳ないですけど今回川崎でやることになったおかげで、その日のうちに自分の家に帰れるのはありがたいです(笑)。
クロスカルチャーが普通になった
──「夏の魔物」は独特の空気感を持ったフェスとして音楽ファンや出演アーティストに支持されてきました。青森を離れることによって、これまで培ってきた「夏の魔物」らしさがなくなってしまう心配はないですか?
成田 むしろ「夏の魔物」とはこういうものですっていうのを関東で見せたいんです。関東だからできることもたくさんあると思ってるので。
──関東だからできることというのは?
成田 青森開催のときはスケジュール的にも厳しいって言われることも多くて。例えば、上坂すみれさんとかもずっとオファーしていたり、あちらも出たいとは言ってくれていたんですけど、なかなか予定が合わなくて。あとは、やっぱり今年、町田康さんとか戸川純さんや有頂天が初めて出てくれることになったのはデカいですね。
──青森開催のときに出られなかった人がけっこういたんですね。
成田 はい。レギュラーの皆さんの濃さに隠れていますが、実は今年は半分以上初出演の方が出てくれたり、(遠藤)ミチロウさんやスチャダラパーや大森靖子さんとかひさしぶりに出ていただく方が多いんですよ。
大内 この出演者のラインナップだけ見れば「あ、『夏の魔物』だ」ってわかりますからね。そういうフェスもなかなかないと思うので。
──ラインナップに「夏の魔物」の独自性が出ているということですね。
大内 すごくわかりやすく言うなら、例えばロックバンドもアイドルも出てるとか、今はそういうイベントも珍しくないですけど、5年前は「夏の魔物」以外ほとんど誰もやってなかったので。今や「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」にもアイドルが出たりしてるけど、それだってここ数年の話ですからね。
成田 「夏の魔物」みたいなクロスカルチャーフェスが普通になったんだなっていうのは感じますね。
大内 でも単にいろんなジャンルの出演者が出るっていうことだけじゃないんです。それはあくまで表面的な部分で。
成田 うん、あの空間と出演者が作り出す流れみたいなものがあって。うまく言葉にできないですけど、それが1日に凝縮されてることによって「夏の魔物」らしさが生まれてるのかなっていうのは思いますね。
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フェスの空間で物語が生まれる
- 夏の魔物2017 in KAWASAKI
- 2017年9月10日(日)神奈川県 川崎市東扇島東公園 特設ステージ
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出演者新しい学校のリーダーズ / 上坂すみれ / 有頂天 / うつみようこ / Wienners / SA / 大槻ケンヂと橘高文彦with高橋竜(Ba)、河塚篤史(Dr) / 大森靖子 / おとぼけビ~バ~ / ONIGAWARA / ガガガSP / 奇妙礼太郎 / CY8ER / ZAZEN BOYS / Sundayカミデ / スチャダラパー / 3B junior / ぜんぶ君のせいだ。/ CHAI / 戸川純 with Vampillia / DOTAMA / 中村一義 / 汝、我が民に非ズ / 二丁目の魁カミングアウト / Negicco / 般若 / BILLIE IDLE / MOROHA / ゆくえしれずつれづれ / ギターウルフ / GANG PARADE / クリトリック・リス / The Idol Formerly Known As LADYBABY / THE END(遠藤ミチロウ、ナポレオン山岸、西村雄介、関根真理) / 椎名ぴかりん / スーパー・ササダンゴ・マシン / 杉作J太郎 / SCOOBIE DO / せのしすたぁ / 曽我部恵一 / THE 夏の魔物+シン・マモノBAND(越川和磨、えらめぐみ、中畑大樹、ハジメタル) / DJピエール中野(凛として時雨) / TVBros.フェスボルタ / にゃんごすたー / 人間椅子 / ニューロティカ / PassCode / バンドTOMOVSKY / BiS / ヒトリエ / ベッド・イン / 三上寛 / Maison book girl / ゆるめるモ! / 吉田豪 / LAUGHIN' NOSE / ROLLY / ロマンポルシェ。 / 暴動(グループ魂) / RONZI(BRAHMAN) / 高野政所×倉持由香 / 週刊ファミ通 / 高田馬場ゲーセン・ミカド / バニラビーンズ / おもちエイリアン / ファイヤープロレスリング / The MANJI / 奥澤村 / さくちゃんとじぃじ / はちみつロケット / マジェスティックセブン / リーフシトロン
- THE 夏の魔物「THE 夏の魔物」
- 2017年10月25日発売 / VAP
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TYPE A [CD]
3240円 / VPCC-81986 -
TYPE B [CD]
3240円 / VPCC-81987
- 収録曲
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- 魔物BOM-BA-YE ~魂ノ覚醒編~
[作詞:只野菜摘、前山田健一 / 作曲:前山田健一 / 編曲:浅野尚志] - 涙。
[作詞:森雪之丞 / 作曲:玉屋2060%] - 僕と君のロックンロール
[作詞:只野菜摘、成田大致 / 作・編曲:浅野尚志] - リングの魔物
[作詞:只野菜摘 / 作曲:玉屋2060%] - RNRッッッ!!!
[作詞:只野菜摘 / 作・編曲:浅野尚志] - わたし
[作詞:高橋久美子 / 作曲:浅野尚志、成田大致 / 編曲:浅野尚志] - 東京妄想フォーエバーヤング
[作詞:山内マリコ / 作曲:曽我部恵一] - バイバイトレイン
[作詞:大槻ケンヂ / 作曲:YO-KING] - SUNSET HEART ATTACK
[作詞:アントーニオ本多 / 作曲:大隅知宇] - どきめきライブ・ラリ
[作詞:只野菜摘 / 作曲:大森靖子 / 編曲:浅野尚志] - over the hill
[作詞:アントーニオ本多 / 作曲:浅野尚志、成田大致 / 編曲:浅野尚志 / Special Thanks:THE WAYBARK] - シン・魔物BOM-BA-YE ~魂ノ共鳴編~
[作詞:只野菜摘、前山田健一 / 作曲:前山田健一 / 編曲:浅野尚志] - THE 夏の魔物のテーマ
[作詞:THE 夏の魔物 / 作曲:浅野尚志、成田大致]
- 魔物BOM-BA-YE ~魂ノ覚醒編~
- THE 夏の魔物対バンツアー 全国の魔物
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- 2017年10月16日(月)千葉県 千葉LOOK ※バンド編成
- 2017年11月9日(木)宮城県 SENDAI CLUB JUNK BOX
- 2017年11月19日(日)北海道 SOUND CRUE
- 2017年11月30日(木)愛知県 CLUB UPSET
- 2017年12月1日(金)大阪府 CONPASS
- 2017年12月8日(金)福岡県 THE Voodoo Lounge
- 2018年1月17日(水)東京都 WWW ※バンド編成
- THE 夏の魔物ワンマンライブ クアトロの魔物
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- 2017年10月26日(木)東京都 渋谷CLUB QUATTRO ※バンド編成
- THE 夏の魔物(ザナツノマモノ)
- 野外フェス「夏の魔物」の主催者である成田大致を中心に2017年1月に結成。メンバーは 成田大致、泉茉里、麻宮みずほ、大内雷電、鏡るびい、アントーニオ本多の6名。同年7月にはミニアルバム「シン・マモノボンバイエ EP」を発表。10月25日に 1stフルアルバム「THE 夏の魔物」をリリースし、翌10月26日には東京・渋谷 CLUB QUATTRO でワンマンライブを実施する。