ナタリー PowerPush - The Mirraz

勝負曲「この惑星のすべて」完成までの葛藤

ポップすぎたらThe Mirrazでやる意味がない

──「この惑星のすべて」は、そういうバランスを踏まえて作られた曲だというのはすごく伝わってきます。とにかく歌のスケールが大きくなってるから。メロディを強調するためのサウンドが鳴っているし、新しいアンセムになると思う。でも、“J-POP70”っていうほど露骨ではないと思うけど。

そうっすね。そこはThe Mirrazらしさをちゃんと生かせている証拠だと思うんですけど。

──ちなみに、畠山氏は今の日本のシーンってそんなに面白いとは思ってないでしょ?

畠山承平(Vo, G)

ああ(笑)。

──そこに寄せていくことがストレスにならなきゃいいんだけど。

でも今の日本のシーンを客観的に見て、「なるほどな」って思う部分もすごくあるんですよ。

──例えば?

まあ、今の日本のロックって「四つ打ちばかり」とか言われてるじゃないですか。でも四つ打ちの曲をやるロックバンドなんて前からいっぱいいたし。テンポが速いのも流行ってるって言われてるけど、それも昔からみんな好きだよなと思って。だから今のシーンの流れは当然だと思う。

──なるほど。

でも、ただ「流行ってるからそれをやろう」ってやって売れる時代でもないし、その中でThe MirrazはThe Mirrazでやるべきことはあって。だから、結局やることは一緒。もうちょっとわかりやすいものを作らないとなっていう話で。

──っていう話を踏まえて、「この惑星のすべて」はどのようにできていったんですか?

わかりやすい曲をって考えたときに、「ハッピーアイスクリーム」とか「シスター」みたいなタイプの曲でちゃんと勝負してみたいなと思ったんです。

──メロディアスな曲で。

そう。最初に「この惑星のすべて」というタイトルを思いついて、歌詞の1行目ができたんです。これはいい曲になりそうだなと思ってバーッと勢いで作っていって、メンバーにデモテープも聴いてもらって1回プリプロもしたんです。でも完成した仮音源を聴いて、なんか違うなと思って。

──どういう部分で?

さっきの話にもつながってくるんですけど、ポップすぎるというか。わかりやすいものを作ろうという発想ではあったけど、ポップすぎたらThe Mirrazでやる意味がない。だから“The Mirrazらしさ”と“わかりやすさ”のバランスをちゃんととらないといけないなと思ったんです。それから歌詞もメロディもアレンジも全部直したんですよ。曲のテーマ以外の部分を。

とにかく完成させたいと思った

──それでもこの曲を完成させたいと思った。というか、完成させなきゃいけないと思ったんでしょうね。

そうそう。今まで同じテーマの曲を作り直すなんてしたことなかったんだけど。この曲はテーマも気に入ってたし、とにかく完成させたいと思ったんですよね。

──作り直すうえで肝になったのは?

The Mirrazの曲の難しいところって、言葉数が多いところなんです。もちろんそれは武器でもあるんだけど、メロディが立ちづらくなるんですよね。

──グルーヴ重視で言葉を転がしていくと、いわゆるフロウ寄りの歌唱になってくるし、旋律は立ちづらくなりますよね。

そう。だから、そのバランスをどこまでとれるかみたいなところが肝になりましたね。結果的にそれがすげえうまくいったなってメンバーとも言ってるんですけど。The Mirrazらしさを失わずにメロも立てるっていう。あとね、1月にPhoenixの来日公演を観たんです。

──どうでした?

畠山承平(Vo, G)

最前列で観たんですけど、Phoenixってライブでめちゃくちゃ盛り上がるバンドではないと思ってたんですね。

──オシャレなポップバンドというイメージが強いしね。

そうそう。でもすごい盛り上がっていて、俺、最前列で失神しそうになって(笑)。

──想定外だった(笑)。

完全に想定外。

──下がればよかったじゃん(笑)。

いや、下がるのも無理な感じで。そんな中で、「The Mirrazのライブと変わんないじゃん」って思ったの。

──海外のお客さんだとまた違うのかもしれないけど。

そう、そこで感じたのは、日本人ってエモーショナルなのがすごく好きなんだって。あとPhoenixもここは盛り上がるっていうわかりやすいポイントを用意してるんですよね。そこに日本人はすごくハマる。自分たちの曲でも、そういうことも考えなきゃなって思いましたね。

──なるほどね。

俺らがJ-POPのバンドだったらそこまで考える必要ってないと思うんです。歌詞がよくてメロディで盛り上がればそれでいいというか。でもThe Mirrazのファンに関しては、ロック的でエモーショナルなものを求めている人が多いと思うんですよね。あと、今ってバンドが増えていて、お客さんもライブに行くのは当たり前だし、ライブハウスは楽しい、みたいな感覚だと思うんです。でも、俺が若い頃はライブハウスに行くのが怖いみたいな感覚もあって……。

ニューシングル「この惑星のすべて」/ 2014年5月21日発売 / Virgin Records
初回限定盤 [CD+DVD] 1728円 / TYCT-39024
初回限定盤 [CD+DVD] 1728円 / TYCT-39024
通常盤 [CD] 1080円 / TYCT-30026
CD収録曲
  1. この惑星のすべて
  2. らぶりー
  3. ステーキを食べに行こう
初回限定盤DVD 収録内容
  • Vo.畠山の~一人でお手製アニメ~動く絵本シリーズ No.1~「ステーキを食べに行こう」MUSIC VIDEO
  • ドキュメンタリー「この録音(レコーディング)のすべて」
ライブ情報
The Mirraz「~運が悪いってかなり不利だよねこの惑星じゃ ミニライブツアー2014ss~」
  • 2014年6月2日(月)愛知県 APOLLO BASE
  • 2014年6月3日(火)大阪府 難波ROCKETS
  • 2014年6月5日(木)東京都 原宿アストロホール

※CD購入者先着ライブ

The Mirraz(ミイラズ)

2006年9月に畠山承平(Vo, G)を中心に結成された4人組結成ロックバンド。2008年12月に1stアルバム「OUI! OUI! OUI!」、2009年10月に2ndアルバム「NECESSARYEVIL」とリリースを重ね、UKロックの影響を感じさせるサウンドや攻撃的なパフォーマンスで注目を集める。2011年、自主レーベル「KINOI RECORDS」の立ち上げと同時に、佐藤真彦(G)と中島ケイゾー(B)が正式加入。2012年7月にEMI Music Japan(現Virgin Music)への移籍を発表し、10月にメジャー第1弾シングル「僕らは / 気持ち悪りぃ」をリリースした。2013年2月にメジャー1stアルバム「選ばれてここに来たんじゃなく、選んでここに来たんだ」を、同年6月にはミニアルバム「夏を好きになるための6の法則」を立て続けに発表。同年10月に新ドラマー新谷元輝の正式加入をアナウンスし、2014年5月に新谷加入後初音源となるシングル「この惑星のすべて」を発売した。