ナタリー PowerPush - The Mirraz

畠山承平が語るメジャー進出の理由

音楽性やキャラクター性を伝えられるものを目指した

──今回のニューシングルは、メジャーへ移籍するにあたって、いろんな人のいろんな意見や視線がバンドに注がれる中で、バンドの核を力強く再提示するものになっていると思う。「僕らは」は、間違いなく新しいアンセムになると思うし。

うん、そうですね。

──どういう意識でこのシングルの制作に臨んだんですか?

やっぱりこのタイミングで初めてThe Mirrazの曲を聴くリスナーが増えると思うので。それを想定して、名刺代わりじゃないけど、わかりやすくThe Mirrazというバンドの音楽性とかキャラクター性を伝えられるシングルにしたかったんですよね。

──自分たちのキャッチーな部分に自覚的に着眼して、それを打ち出した。

そうですね。そこはやっぱり考えました。

ダブステップから始まった「僕らは」

──まず1曲目の「僕らは」は、ダークなリフ、サウンドの疾走感、歌詞の言葉数の多さ、キャッチーなサビなど、バンドの武器を総動員してさっき言ったように新たなアンセムを狙い撃ちした曲だなと思うんです。この曲はどのようにできたんですか?

インタビュー写真

EMIと契約しようという話になったのが今年の2月頃で、3月から始まる「言いたいことはなくなった」のツアーに出る前だったんです。ツアー後、EMIからすぐにリリースできるように、ツアーに出る前の1カ月の間にいっぱい曲を作っておこうと思って。それで1カ月で100曲くらい作ったんです。

──100!?

はい。いろんなパターンの曲を作って。「僕らは」みたいな曲を20くらい、もっとポップな曲を20くらい、その他にもいろんなタイプの曲を作りまくって。で、その1曲目に作ったのが「僕らは」だったんです。この曲は、さっき言ってもらったように、とにかくThe Mirrazらしい、それこそ「check it out! check it out! check it out! check it out!」とか「CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい」みたいなものを作ろうと思って。いわゆるリフものですよね。リフものなんだけど、よりスケール感のあるもの。音楽的にも新しいことに挑戦したいなと思っていたので、最初はダブステップを取り入れることも考えていて。

──そうなんだ。

デモの段階だとビートにもっとディレイがかかってたり、ベースラインはダークで、ちょっとダブステップっぽかったんです。結果的にミックスのときにエンジニアさんと話して、聴きづらいということで最終的にその要素をなくしたんですけど(笑)。今までのThe Mirrazだったら、音楽性の新しさを前に出したがっていたと思うんですけど、今は「僕らは」っていう曲ができるきっかけがダブステップだったから、それでいいという考えで。

──経緯はしっかり踏んでるから。

そう。その事実があればいいと。結果的に曲が聴きやすいほうがいいと思うから。話を戻すと、この曲は歌詞とか歌メロを全然乗せていない段階で、メンバーやスタッフからはすごく良い反応があって。それからさらに曲を作りまくって、その後ツアーに出て、ツアーが終わったときに「一番最初にできたあの曲がいいね」って話になって。「じゃああの曲をちゃんと形にしよう」って話し合いがあった帰り道に歌詞を考えたんです。そのときに出てきた言葉を歌ってみたものが、そのまんま歌詞になったんですよね。

音楽を必要としている人に届く曲を作ろう

──勢いで生まれた割にはメッセージ性の強い歌詞だなと思う。特にサビの「愛がないと泣いて耐えてないで踊り続けよう 僕らは」「『I』がないと泣いて耐えてないで歌い続けよう 今夜は」というフレーズの強さには、今リスナーにこの言葉を伝えたいんだという畠山さんの強い意思を感じる。

インタビュー写真

まず言葉数の多いサビを作りたいという思いが先にあって、仮の歌メロに乗りやすい言葉を選んだらこうなったという感じなんですよね。言葉数は多いけど、一度聴いたら自分も歌いたくなるようなキャッチーさを大事にして。その結果、こういう歌詞になって、意味深でいいなと。「僕らは」っていうタイトルも自然と浮かんできたもので。今までは意識的に自分の言いたいことは何か考えて歌詞を書いていたんですけど、この曲に関してはなんとなく書いたものなんです。そのときになんとなく思っていたことをバーッと書いていった感じというか。

──でも、リスナーを扇動する力をたたえている歌詞だと思う。

そうですね。そこは去年1年の経験や考えたことが影響しているんだと思います。早く次のステップに行かなきゃいけないとか、端的に言えば、もっと売り上げを伸ばさなきゃいけないって焦る気持ちの中で、音楽をやってもつまんねえなとか、苦しいと思う瞬間が今までないくらいいっぱいあって。学生時代はバンドを組んで、ギターを鳴らして、デカい声を出して歌うだけですごく楽しかったのに、それがバンドを続けていく中で特別なことではなくなっていって、だんだん音楽活動が自分が苦しむ場所にもなってきて。去年は「なんで音楽をやってるのかな?」って考える時間があったんですよね。でも、その一方でライブでお客さんの反応を見て救われもして。音楽をやることが楽しいというよりも、音楽が自分の救いになる瞬間がいっぱいあったんです。だから歌詞でも「音楽っていいよね」みたいなことを言いたかったのかもしれない。「踊り続けよう」「歌い続けよう」って、音楽好きにとっては、さっき言ってもらったようにすごくシンプルで強いメッセージだと思うから。

──そうですね。

震災後にアーティストだけじゃなく、リスナーも音楽の存在意義について考えた人は多いと思うんですけど。音楽が大好きな人にはやっぱり絶対に必要なものだし、そこまで音楽に興味のない人は本当にいらないものになっちゃったのかもしれない。でも、音楽がまだあり続けるのは必要な人がいるからで。必要な人が欲しているだけでいいじゃんって俺は思ったんです。じゃあ俺は音楽を必要としている人に届く曲を作ろうと思って。そういう、潜在的に考えていたことがこの曲の歌詞に出てきたのかもしれないですね。

──「僕らは」ってリスナーに対する共闘宣言の曲だと思うんですよ。自分は音楽を愛しているあなたたちにこの曲を届けたい、あなたたちと踊り、歌いながら上を目指したいっていう。

ああ、そうですね。今「よし、やるぞ!」っていう意識が高まってるのもあるし。かなり手応えのある曲ができたなって思います。

The Mirraz(みいらず)

畠山承平(Vo, G)、佐藤真彦(G)、中島ケイゾー(B)、関口塁(Dr)からなるロックバンド。2006年9月に畠山が中心となって結成。2008年12月に1stアルバム「OUI! OUI! OUI!」、2009年10月に2ndアルバム「NECESSARYEVIL」とリリースを重ね、洋邦ロックファンから注目を集める。2011年、自主レーベル「KINOI RECORDS」の立ち上げと同時に、中島と佐藤が正式加入し現在の4人編成に。同年6月に初のシングル「観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは」、9月に2ndシングル「ラストナンバー」をリリースし、2012年1月にアルバム「言いたいことはなくなった」を発表した。同年7月にEMI Music Japanへの移籍を発表し、10月にメジャー第1弾シングル「僕らは / 気持ち悪りぃ」をリリース。