音楽ナタリー Power Push - THE LET'S GO's
とびきり「HATE」な関係から生まれたニューアルバム
今、自分たちのやってることがブーム
──今回、4年8カ月ぶりとなるオリジナルアルバム「I HATE THE LET'S GO's」がリリースされました。この作品はTHE AUTOCRATICSとのスプリットシングル「THE LET'S GO's × THE AUTOCRATICS」に収録されていた楽曲や配信限定シングル「サマーガール」「Ticket To Mars!!」「Tiny Tot Rain」といった楽曲に3曲の新録曲を収録した内容になっていて。この中で一番古い曲はスプリットシングルに収録されていた「222」になりますか?
COCO 制作した時期がわりとバラバラで、自分たちでもどの曲が一番古い曲かわからなくなってるところもあるんですけど(笑)、リリース的には「222」が一番古いですね。
──この曲の中に出てくる「77年のオリジナルパンク」っていうセリフもそうだし、あとライブでThe Damnedの「Neat Neat Neat」をカバーしていますよね。やっぱりみなさん共通して好きなのは、いわゆるオリジナルパンクだったりするんですか?
COCO 確かに好きではあるんですけど、決してそれだけってわけでもなくて。
モエコフ そう言われてみると、共通して好きなアーティストの話で盛り上がったこととかって今まであんまりなかったかも。
COCO 例えば私はずっとPUFFYが好きなんですけど、わりとそれぞれ好きなアーティストはバラバラで。あ……でもミィちゃん、Sex Pistols好きだよね?
ミィ 好き!
モエコフ 私も曲名とかはわかんないけど、ピストルズは好きだよ。そういえばこないだ初めてシド・ヴィシャスの「My Way」聴いた。
COCO えー! こないだ聴いたの?(笑)
モエコフ うん。すごいカッコよかった。
COCO みたいな感じで、それぞれの趣味がたまにリンクすることがあるぐらいなんですよね(笑)。
ミィ でも最近、自分の中では改めてパンクがすごくグッときていて。その影響でライブでのパフォーマンスが激しくなってるのかもしれないですけど。今、自分たちのやってることがブームなんですよね、私は。
COCO それは最高だあ。
──実際、アルバムの冒頭に入ってる「おつかれさまソング」「What I Want」「SNAKEY SHAKEY」といった新録曲はスピーディで直情的なパンクナンバーに仕上がっていますよね。サウンドの質感もすごくラフで力強いし。
COCO この3曲に関しては、今のバンドの勢いがそのまま出てるかもしれないですね。
どこかカッコ悪さがあるようなアーティストに惹かれる
──その一方で、オールディーズ風のコーラスで始まるスイートなサマーチューン「サマーガール」や、モータウンポップ風の「Monkey Monkey」や「Ding Dong」といった楽曲が収録されていることで作品全体の印象としてはすごくカラフルで起伏に富んだ仕上がりになっていますよね。
COCO 本当に好きな曲を1枚に詰め込んだという感じで。私はアメリカンポップスみたいな音楽も大好きで、ぱっと出てくる曲調が自然とそういう感じになっちゃうんですよね。父親が車の中でよくオールディーズを聴いていたので、もしかしたらその影響があるのかもしれないですね。
モエコフ ちなみに今回、新しいアルバムを作ることになって既発の曲は全部歌入れをし直してるんですよ。マスタリングもアルバム用にやり直して。
COCO だから今のモードがどの曲にも反映されているんじゃないかと思うんです。
──新たに歌を録り直してみていかがでしたか?
COCO それまでいかに自分がかわいこぶって歌ってたかがよくわかりましたね(笑)。意識してそうしてたわけじゃないんですけど。
ネモト・ド・ショボーレ(プロデューサー) 1曲目の「おつかれさまソング」の歌入れをしてるとき、ココスがクレヨンしんちゃんみたいな声で歌って(笑)。あれがすごくよかったんだよね。
COCO 悪ガキっぽい感じというか(笑)。あの歌い方を身に付けたことでボーカルの新しい方向性が見えてきた気がします。
モエコフ 今回の歌入れでは、かわいらしい要素をどんどん減らしていくっていう作業が行われていきました(笑)。
COCO そうだね(笑)。
──とはいえ、バンド本来の持ち味であるキュートな魅力は、今回のアルバムでもまったく損なわれていなくて。“女だてらに”みたいなものを一切感じないし。
COCO あはは(笑)。がんばってもそうなれるタイプじゃないんで。今回のアルバムでは、今の自分たちの感じがそのまま自然な形で音に表れればいいかなと思って。
──ちなみに目標としているバンドは誰かいますか?
COCO Ramonesですね。シンプルなことをひたすらやり続けてきた姿勢がすごくカッコいいなって思います。メンバーのキャラもバラバラなんだけど、ステージに全員そろった瞬間、ギュッてひとつのバンドになるじゃないですか。あと、バンドのイメージ自体もイケてるかと言えば決してそんなこともなくて、どこかボンクラっぽい感じもありますよね(笑)。そういう人たちがステージに立って全力でプレイしてる姿がカッコいいなと思って。本当にロックンロールが大好きなのが伝わってくるっていうか。
──それって「おつかれさまソング」の中に出てくる、「うまくない かっこよくない ギターやめられない」っていうフレーズと、どこかリンクしてるところがありますよね。
COCO ロックンロールってカッコいいとも言えるけど、カッコ悪いとも言えるっていうか。私はスタイリッシュでバチバチに決めてるアーティストよりも、どこかカッコ悪さがあるようなアーティストに惹かれるんですよね。
──演奏を通じて、よくも悪くも、その人の人間性がにじみ出てきてしまうようなアーティストに。
COCO そうなんですよ。必死でカッコ付けてるけど、どこかちょっとダサいみたいな(笑)。自分たちもそういうバンドになれたらいいなと思うんですよね。
──最後に、それぞれアルバムについての感想を聞かせていただけますか。
COCO 自画自賛になっちゃいますけど、本当にカッコいいアルバムができたと思います。今自分たちがやりたいことをちゃんと形にできた実感もあるし。
モエコフ 聴いてると、なんか……笑っちゃう。ゲラゲラ笑いながら作業することが多かったし。私としては自分の殻を破ることができた作品だと思うんで、前のアルバムとは比べ物にならないくらい、積極的に作品に取り組むことができた実感が強いです。
ミィ 「どや!」っていうアルバムができたと思います。これを聴いて、「THE LET'S GO'sって、そうでもないな」って思う人がいたら、その人とはもう一生縁がないんだろうなって(笑)。それぐらい思い入れのある作品になったと思います。
──そういう作品にあえて、「I HATE THE LET'S GO's」というタイトルが付けられている理由というのは?
ミィ ひと言で言えば「LOVE」ということですね。「LOVE」を超えて、好きすぎて「HATE」というか。前作からの間に、バンドの中で、いいことはもちろんつらいこともたくさんあって、それこそケンカしたことだって何度もありましたし。でも、いろんなことをひっくるめても、やっぱりこの3人でステージに立って演奏するのが何よりも一番楽しいんですよね。もう私たちは逃れられない関係になっているんだなって最近本当に思うんです。
- ニューアルバム「I HATE THE LET'S GO's」 / 2016年1月20日発売 / 2700円 / DECKREC / UK.PROJECT / DCRC-0086
- ニューアルバム「I HATE THE LET'S GO's」
収録曲
- おつかれさまソング
- What I Want
- SNAKEY SHAKEY
- レザージャケット
- サマーガール
- Monkey Monkey
- mirrorball~ぼくのうた~
- Ding Dong
- ロードランナー
- All I Need Is You
- 恋の1234
- 222
- Love My Show
THE LET'S GO's(レッツゴーズ)
2006年、COCO(G, Vo)を中心に結成。2009年2月に1stアルバム「LET'S GO with THE LET'S GO's」を発表し、ガレージパンクファンを中心に話題を集める。2010年、山田モエコフ(Dr, Vo)、ミィ(B, Vo)が加入し現在の布陣に。2011年5月に2ndアルバム「REAMP!」をリリースし、台湾ツアーおよび国内ツアーを成功に収める。2013年12月に「Ticket To Mars!!」、2014年3月に「Tiny Tot Rain」という2枚のミニアルバムを配信でリリース。2014年にはパワーポップの歌姫、ニッキー・コルヴェットが行った日本ツアーのバックバンドに抜擢され、また翌年にはアメリカ・アトランタを拠点に活動するガールズパンクトリオThe Coathangersの日本ツアーのサポートをギターウルフとともに務めるなど、海外アーティストとの共演も重ねる。2016年1月には約4年8カ月ぶりとなるニューアルバム「I HATE THE LET'S GO's」をリリースした。