ザ・リーサルウェポンズ特集|Blu-ray 16作、一挙発売!収録される全ライブを振り返る

ザ・リーサルウェポンズのBlu-ray合計16作品が5月8日に同時発売された。

アメリカ生まれのサイボーグジョーと、彼を“発明”した日本人プロデューサー・アイキッドからなる2人組バンドのザ・リーサルウェポンズ。1980~90年代のカルチャーをオマージュした独自の音楽性で支持を得る彼らは、今年1月に活動開始5周年を迎えた。合計16作品のBlu-rayを一挙発売するという奇策はこれを記念して企画されたもので、東京・中野サンプラザホールや東京・両国国技館で行われた単独公演のほか、古本屋のブックマート都立家政店での生配信ライブや、「中野駅前大盆踊り大会」出演時のステージなど、小規模なライブも映像化。バンドの歴史を彩る熱いパフォーマンスを余すことなく網羅した作品群に、ポンザー(ザ・リーサルウェポンズファンの呼称)は財布の心配をしつつも歓喜している。

Blu-rayの発売に合わせ、音楽ナタリーではアイキッドとサイボーグジョーへのロングインタビューを実施。ライブ開催時の記憶を掘り起こしながら16作品すべてを解説してもらった。

取材・文 / 近藤隼人撮影 / 沼田学

コンバンワンマン2020 IN TOKYO

2020年1月26日、活動開始1周年の記念日に東京・LIQUIDROOMに行われたワンマンライブ。

アイキッド 4年前のLIQUIDROOM……覚えてる?

サイボーグジョー ……うーん。

アイキッド (笑)。まあ、ライブでやってることはこの頃からずっと変わらないからね。「80年代アクションスター」で始まって、「きみマザ」(「きみはマザーファッカー」)で終わる。そしてその間の曲をその時々で変えていくという。「きみマザ」でお客さんをステージに上げるのも当時からやってました。変わったのは関わるスタッフが増えたことかな。このときはまだメジャーデビュー前だったので。

ジョー 「東海道中膝栗毛」初めてやったの、このときじゃない? ポンザーがみんな三三七拍子してくれた。

アイキッド あれはうまくいったね。「東海道中膝栗毛」はライブでお客さんに三三七拍子をしてもらうことを考えて作った曲だから、計算通りというか(笑)。ほかの曲でも、ここでお客さんに叫んでほしいとか、ライブで披露するときのことを考えたうえで作っていますし、「東海道中膝栗毛」も思った通りに成功しました。その後リキッドでは何度かライブをやってるけど、このときはコロナ禍に入る直前の時期だったから、ポンザーと“怒号”を掛け合う「ツイン怒号システム」もしっかり発動して。

ジョー 楽しかった。

都立家政ブックマートライブ 2020 & 2022

ザ・リーサルウェポンズ結成のきっかけとなった東京都中野区の古書店・ブックマート都立家政店にて、2020年と2022年に行われた生配信ライブ。

アイキッド 今回こういう細かいライブもBlu-rayになっています。縦型の配信映像がそのまま収録されているので、画面の左右は黒い帯になってしまうけど(笑)。狭い店内から配信ライブをやったから、楽器が周囲の物にぶつかったりした記憶がありますね。

ジョー これ、私いなかったとき?

アイキッド 2回目はいなかったね。直前に“故障”して。それで、もともと近所の飲み仲間だったお笑い芸人・NOモーション。の星ノこてつ。さんに「ピンチだから助けてくれ」って連絡したら、すぐに来てくれたんです。段取りも早くて、あれは本当に助かりましたね。ブックマートの店長も偽物のサイボーグジョーとして参戦して。まあ、彼は目立ちたがり屋なので、「出てくれ」と言ったら何にでも出てくれます(笑)。

ザ・リーサルウェポンズ。左からサイボーグジョー、アイキッド。

ザ・リーサルウェポンズ。左からサイボーグジョー、アイキッド。

ジョー ハハハ。ブックマートのことを話すと……まあ長い話になるね。

アイキッド 居酒屋でブックマートの店長にジョーくんを紹介してもらったのが、我々の出会いで。ジョーは東京で英語の先生として働こうとしていたところ、英会話教室ブローカーにだまされて埼玉の熊谷に行かされたんです。「話が違うよ!」と(笑)。その後、紆余曲折あって東京に来たときに住んだのが都立家政で、道に迷っていたジョーくんを案内したのがブックマートの店長。私は店長とはもともと飲み仲間だったんです。

ジョー そうそう。先生、説明上手。日本語うまいね。

アイキッド 君も英語がうまいから。

新宿バトルロイヤル 2021

2021年11月13日に東京・新宿FACEで開催された、音楽ライブとプロレスのバトルロイヤルを融合させたイベント。

ザ・リーサルウェポンズ「新宿バトルロイヤル 2021」の様子。(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

ザ・リーサルウェポンズ「新宿バトルロイヤル 2021」の様子。(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

アイキッド このイベントはきつかった……。

ジョー そうね。私はこのライブのあとに肺を故障して。

アイキッド 呼吸困難みたいになっちゃったんだよね。

ジョー 死ぬー!と思った。

アイキッド 私は私で、このライブの1カ月前に川にオイカワを釣りに行ったんですけど、鮎が泳いでるのが見えて、「あ! 鮎だ!」と堤防まで走っていったらずっこけて頭から川に落ちました。そんな満身創痍の状態でライブに臨んで。さらにライブでの乱闘中、ポンズロボと呼んでるこけしが胸に当たって肋軟骨を損傷しました。

ジョー ハハハ。そのこけし、私の頭にもぶつかったね。本当はギミックだったのに。

アイキッド 私がジョーくんをこけしでぶん殴って乱闘が始まるという流れだったんですよ。痛くないようにこけし本体じゃなく小指を当てる予定が、そのことを忘れて思い切りこけしをゴン!って(笑)。

ジョー やーばい痛かった。あのこけし……!

アイキッド そのあとに私も肋軟骨をケガしたから因果応報だね。

ジョー カルマね。instant karma。

サイボーグジョー

サイボーグジョー

アイキッド

アイキッド

アイキッド このイベントはWWEではロイヤルランブルと呼ぶ形式で。名の通ったゲストの方が出る大きい山から決めてから、その間に小さい山を作りました。そこでは予算のかからない友達や近所の人たちに出てもらって、我々がその烏合の衆を叩き落としていく。そういう全体の構成美を意識しましたね。ライブは1曲1曲で構成されるものですが、披露する楽曲すべてが流れとしてつながっているという。このイベントはかなりやりがいがありました。メジャー1stアルバム「アイキッドとサイボーグジョー」の制作と同時進行だったので、かなり大変でしたが(笑)。

ジョー 大変だったけど、たぶん、一番楽しかったかな。

アイキッド 2人ともプロレス好きだからね。彼はWWFが、私は新日(新日本プロレス)、全日(全日本プロレス)、インディーズも好き。プロレスの要素に関しては、かなりディープなところまで阿吽の呼吸でできていると思います。ジョーくんはバックヤードプロレスと言って家の前にリングを作っていたし、私は体育センターにマットを敷いてプロレスをやってました。

ポンズの野望TOUR 2022 IN TOKYO<FINAL>

2022年3月21日に東京・LIQUIDROOMで開催された全国ツアーファイナル。新型コロナウイルス感染拡大の影響による2度の中止を経て、初の全国ツアーが実現した。

ザ・リーサルウェポンズ「ポンズの野望TOUR 2022 IN TOKYO<FINAL>」の様子。(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

ザ・リーサルウェポンズ「ポンズの野望TOUR 2022 IN TOKYO<FINAL>」の様子。(提供:ソニー・ミュージックレーベルズ)

アイキッド このツアーから1stアルバムの曲を披露しましたが、「川中島の戦い」はあまりにも難しくて、自分で作った曲なのにスタッフに1回「無理です」と言ったことがあります(笑)。私は自分が逃げたいものから一切逃げられない人生で。もともとギターを弾きたくなかったんですけど、コンビで活動するにあたって80年代の音楽を意識すると、ボーカルとギターってセットなんですよね。だから弾くしかなかった。それまでもギターは浅く長く続けていましたが、ポンズ結成の2019年にFコードから改めて覚えました。最初は飾りだったスタインバーガーをこんなに長く弾き続けるとは(笑)。ジョーのボーカルは見るからにうまくなってるんですけど、実はそれと比例するように私のギターもうまくなってるんですよ。このバンドは地味にレベルアップしています。

ジョー MCのシステムも変わったよね。ちょっとだけ。

アイキッド 1年目はほとんどしゃべってなかったけど、2人でMCするようになった。私はヘルメットをしていて口の動きが見えないから、ジョーくんは聞き取りづらいはずなんですけど、ちゃんと話についてくるから、リスニング力は確実に上がってますね。しゃべりはカタコトのままでいいんだけど、そこも上達しちゃってます。

ジョー ハハハ。

ザ・リーサルウェポンズ

ザ・リーサルウェポンズ

アイキッド あと、1stアルバムの曲だと「雨あがる」は彼にとって一番難しかったと思います。それまではメロディが簡単なロックしか歌わせてなかったけど、初めてちゃんとしたJ-POPの曲を作ったから。

ジョー 大変っていうか……「雨あがる」の前の曲と次の曲はロックだから、歌うときの気持ちどうすればいいかなあって。この曲、早く終わってほしいなと思ってた。お客さんも、どう聴いたらいいかなあって迷ってる感じ。

アイキッド うんうん。でも、君は何も考えなくていいから。与えられたものを歌う。それでいいんだ。

ジョー はい。

YOKOHAMA TOPGUN RESPECT 2022

映画「トップガン マーヴェリック」の公開に合わせて行われた生配信ライブ。ポンズはヘリコプターに乗ってカメラの前に登場した。

アイキッド このときはライブうんぬんじゃなくて、二度とヘリに乗りたくないと思いましたね(笑)。もういいです、ヘリは。

ジョー ハハハハ!

アイキッド もともと高いところが苦手で。自分の部屋の中にあるロフトに登るのもけっこうきつい。人生初めてのヘリだったんですけど、あんなプロペラで飛べるのが不思議だし、宙に浮いてる原理が全然わからない。それに飛行機と違って機体が薄いんですよ。

ジョー 確かに。うっすい。私は3、4回ヘリに乗ったことがあったから、きれいだねーと思って外を眺めてたけど、先生を見たら固まってた。

アイキッド 早く地上に降りて早く演奏したいと思ってた。でも、まあいい経験だったよね。ヘルメットに「トップガン マーヴェリック」のマークを入れたりして。あれは徹夜で用意したんです。コロナ禍でどういうライブをやるのか、もちろん自分でも考えつつ、スタッフと話し合いながら活動してました。