サプライズ人生
──お二人のエンタテインメントにまつわる原体験を聞かせてください。
ジョー 最初のメモリーね。お兄さんが2人いて、地元の家のベースメントで任天堂のゲームをしていたら、A-Haの「Take On Me」のミュージックビデオが流れて、「これ最高じゃないか」と。ゲームとミュージック、めっちゃ気持ちよかった。あと「ニンジャ・タートルズ」(「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」)はめちゃめちゃ感動した。ニンジャ・タートルズになりたかった。アメリカのユニバーサルスタジオでニンジャ・タートルズと会って写真を撮ったことある。天国だったよ。
──日本文化の影響を受けた作品ですよね。
ジョー それが最初のジャパニーズ文化で、忍者とか侍を知った。そのあと「パワーレンジャー」(アメリカにローカライズされたスーパー戦隊シリーズ)が好きになった。子供の頃からジャパニーズ文化にずっと興味があって、お父さんはパワーレンジャーの細かいことを調べて教えてくれました。マスクを被ったところは日本で撮影する、アメリカ人キャラはアメリカで撮るとか。そんなインフォメーションをくれて、ビハインドシーン(舞台裏)にも興味がありました。
──なるほど。アメリカではアクターもやってたそうですね。
ジョー 高校生の頃に。当時はパンクバンドもやってたけど、そんなに音楽で有名になるっていう考えはなくて、パフォーマーになりたかった。で、16年前に初めて札幌に行って、めっちゃジャパニーズ映画に興味を持って、そのあと大阪に留学してジャパニーズ映画を勉強してた。でも1回アメリカに帰って、いろいろインプットしてましたけど、「やっぱり日本に住みたいな。日本で俳優になりたいな」と思っていました。
──俳優志望で来日して、今ザ・リーサルウェポンズのボーカリストになったというのは面白いですね。
ジョー サプライズ人生。
──話を聞く限り、ザ・リーサルウェポンズに必要なのはボーカリストというより、表現者という印象があるので、アイキッドさんとしてはこれ以上ないくらい、ジョーさんはハマり役ですね。
アイキッド そうですね、奇跡的に。ジョーは言ったことを全部やってくれるから成り立っていますね。僕、今はギター弾いてますけど、ずっとベースだったんで、マインドはベーシスト的で、一歩引いたところで客観的に全体を見ています。今はライブ中、ヘルメットもしてるから全体が見えてないですけど、お客さんの反応はずっと見ています。
──ジョーさんをアイコンにできるからこそ、アイキッドさんは舞台監督兼プロデューサー兼覆面プレイヤーとして寡黙に表に立って活動していると。
アイキッド 中の人を入れ替えできるからいいかなと思ってマスクをしてるんですけど、体型でバレるから替え玉は無理かなって(笑)。ジョーはスーパーファミコン好きですけど、僕はメガドライブ派。最大野党というか2番目、3番目ぐらいのものが好きなんですよ。僕はそういうのが好きな深夜2時台のテレビ番組のような人間ですけど、彼はゴールデンの人間。僕の場合はディープでマニアックなところを楽曲にすることが多いです。ポピュラリティのある部分はボーカルに任せられるから、マニアックな部分を出して、ディープなものでもわかりやすく伝わるように作ってます。
──アイキッドさんはもともとベーシストだとおっしゃっていましたけど、音楽制作に関してはほぼすべての楽器を手がけているんですよね?
アイキッド はい。メインが打ち込みで、楽しく弾けるメインがベース。普通なのがキーボードで、ギターは好きでも嫌いでもないという。じゃあなんでギター弾いてるんだって言うと、まずジョーをピンで出すには不安要素が多かったので、2人で表に出ることにしたんです。ジョーの相方のキャラクターデザインをどうしようかなと思いまして、どうしても外国人のおもしろキャラがメインだと相方のキャラが薄くなるので、相方としてこの風貌の“アイキッド”というキャラクターを作った。で、アイキッドの楽器をベースにすると地味だし、“相棒感”のある楽器はなんだろうと考えた末にギターになったんです。
──ボーカル+ギターのロックバンドという、成功例のあるフォーマットを踏襲しつつという感じですね。
アイキッド ロックってボーカルとギターの名コンビが多いですよね。ミック・ジャガーとキース・リチャーズ、甲本ヒロトとマーシーもそうだし。だからザ・リーサルウェポンズをやるにあたって、ギターの運指練習から始めたくらいで、キャラクターとしてギタリストをやってます。
サイボーグジョーの絶妙なカタコト英語
──ジョーさんはあまり英語が得意でない日本人でもわかるであろうギリギリのラインを突いた英語で歌ってますよね。
アイキッド 僕が中学校2年くらいまでに習う英単語しかわからないからGoogle翻訳を使って歌詞を書いてるんですけど、中2の日本人ならわかるような単語を選んで、彼に歌ってもらってるんで。あんまり難しい単語は使わないようにしています。
──なるほど。MCでも日本人にとって絶妙に理解しやすいレベルの英語を交えていますよね。
ジョー 実はサイボーグになる前、英語の先生をやっていたときに、生徒さんのみんながわかりやすいカタカナとか、わかりやすい英語にちょっと慣れた。カタカナで英語を覚えたらそういう話し方ができるようになってきました。“I have a pen”とか、ベリーベリー、メニーメニーとか。
アイキッド ティーチャーやっていてよかったよね。
ジョー そうね。そのエクスペリエンスはよかった。ジャパニーズ中学生の生徒さん面白かったよ。教えてたジャパニーズ中学生たちはジェントルマンって単語が大好きだった。
アイキッド 「きみはマザーファッカー」なんて歌っているジョー先生を見て、教わってた子たちは今、どう思っているのか(笑)。
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