ナタリー PowerPush - the HIATUS

細美武士の歌いたいメロディ

グルーヴがある音楽を作りたい

──今回のエレクトロニックなアレンジは細美さんが頻繁にDJをやっていることも影響しているんでしょうか?

ダンスミュージックは昔からずっと好きだから、いまさら影響が出るってことはないと思いますね。たぶん、the HIATUSに合うビートをずっと探してきて、8ビートより四つ打ちのほうが合うってことに気付いたんじゃないかな。グルーヴのない音楽は家で聴くのはいいんだけど、演奏するのは踊れる曲のほうが楽しいし、今回はそういうアルバムにしようと思ってました。

──前回のインタビュー(参照:the HIATUS「Horse Riding EP」インタビュー)で「ライブで再現できない音は入れたくないので、『Waiting For The Sun』は打ち込んだカリンバの音を生に差し替えた」と語っていましたけど、今回コンピュータによるプロダクションの比重が高まったことで、ライブでの再現性についての考え方に変化はありました?

いや、その点は変わらず、ライブのことは想定しながら作ってます。同じ曲にピアノが2本入っていたりするのは俺はあんまり賛成できないので。ここ最近のライブではターンテーブルとミキサーを入れてるから、打ち込みパートはそのまま使えます。でも「こういうアルバムを作っちゃったから、ライブでどう表現しようか」っていうよりは、ライブで演奏してる自分をイメージしながら曲を作ってます。そこは以前と変わってないですね。

──今回のアルバムはシンセサイザーを多用しているところも大きな特徴ですが、鍵盤奏者の伊澤(一葉)さんは基本的にピアニストですよね。シンセも伊澤さんがプレイされたんですか?

ソフトシンセも入ってるけど、一葉の手弾きシンセもかなり入ってます。なんか一葉はシンセを弾くのとピアノを弾くのとはモードが違うみたいで。すごい楽しそうにやってましたね。

──さらに柏倉さんのポリリズミックなドラミングに合わせてアコースティックギターを多用した前作「A World Of Pandemonium」に対して、今回のアルバムはギターの比重が低くなっていますよね。

今回ほとんど俺、ギター弾いてないですからね。2曲ぐらいしか弾いてない。

──そうだったんですね。その理由は?

アンサンブルを作ってて、単純にギター2本はいらないなと思ったからです(笑)。かと言ってマサ(masasucks / G)にシンセを弾いてもらうわけにもいかないじゃん(笑)。だいたいバンドだからってギター弾かなきゃいけないわけじゃないからね。やりたいことをやってるだけだし、極端に言えば、俺は歌さえ歌えればなんでもいいっていうか(笑)。

歌は常に進化している

──前回のインタビューではレトリックにこだわった作詞や新しい引き出しを開けた歌録りについてお話いただきましたが、今回の作詞はいかがでしたか?

以前はレトリックにハマっていろんな詩人の詩集を読み漁ったりしてたけど、今はそのモードじゃなくなりましたね。“詩”ってよりは歌詞を書こうとしてます。だから今回は韻のほうを大切にしてます。

──楽曲で伝えたいメッセージみたいなものが、歌詞化できている感じ?

俺の歌詞って、別にメッセージじゃないですよ。メロディの持ってる感情とか流れを言語化してるだけで、メッセージを伝えたくて歌を歌ってるわけじゃないです。

──なるほど。ではボーカルレコーディングはいかがでしたか?

レコーディングの終盤は時間もないし、その時点で予算も使い切ってしまったので、ボーカルの録音はレコード会社の1階にあるスタジオでやってました。ボーカルブースが1畳くらいの。エンジニアの柏井(日向)くんも「もうちょっと、ちゃんとしたスタジオで録りたいよ」って言ってましたね(笑)。

──そうだったんですね。

まあスタジオはともかく(笑)、歌は一生かけて付き合っていきたいって思っているものだし、今回も上達したと思います。弾き語りをやった経験で手に入ったものもたくさんあるし。いい歌が録れたと思います。

──前作の「A World Of Pandemonium」から2年と4カ月。the HIATUSは「Keeper Of The Flame」でどんな場所にたどり着いたんでしょうね。

今作はグルーヴの強いアルバムにしたいと思ってたから、それが作れたのは大きいかな。今回のアルバムは昨年1月から作ってきて、今年2月までの14カ月を切り取ったものになったと思う。繰り返しになっちゃうけど、すごくいい旅ができたと思います。とにかく今は早くツアーに出たいよ。みんなの前で演奏するのが楽しみです。

ツアー情報

Keeper Of The Flame Tour 2014

  • 2014年5月8日(木)千葉県 千葉LOOK
  • 2014年5月11日(日)山梨県 甲府Conviction
  • 2014年5月13日(火)栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2
  • 2014年5月15日(木)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2014年5月16日(金)愛知県 Zepp Nagoya
  • 2014年5月18日(日)香川県 高松オリーブホール
  • 2014年5月19日(月)愛媛県 松山SALONKITTY
  • 2014年5月22日(木)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
  • 2014年5月23日(金)奈良県 奈良NEVER LAND
  • 2014年5月26日(月)東京都 Zepp Tokyo
  • 2014年5月27日(火)東京都 Zepp Tokyo
  • 2014年5月31日(土)大分県 T.O.P.S Bitts HALL
  • 2014年6月1日(日)福岡県 Zepp Fukuoka
  • 2014年6月3日(火)京都府 KYOTO MUSE
  • 2014年6月4日(水)福井県 福井まちなか文化施設 響のホール
  • 2014年6月7日(土)神奈川県 yokohama Bay Hall
  • 2014年6月9日(月)福島県 club SONIC iwaki
  • 2014年6月10日(火)茨城県 mito LIGHT HOUSE
  • 2014年6月12日(木)福島県 Out Line
  • 2014年6月13日(金)福島県 南相馬バックビート
  • 2014年6月15日(日)北海道 Zepp Sapporo
  • 2014年6月16日(月)北海道 CASINO DRIVE
  • 2014年6月18日(水)宮城県 Rensa
  • 2014年6月19日(木)宮城県 Rensa
  • 2014年6月24日(火)秋田県 Club SWINDLE
  • 2014年6月25日(水)岩手県 Club Change WAVE
  • 2014年6月27日(金)岩手県 KLUB COUNTER ACTION MIYAKO
  • 2014年6月28日(土)宮城県 BLUE RESISTANCE
  • 2014年7月1日(火)大阪府 Zepp Namba
  • 2014年7月2日(水)大阪府 Zepp Namba
  • 2014年7月4日(金)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
  • 2014年7月5日(土)広島県 BLUE LIVE
  • 2014年7月7日(月)島根県 松江 AZTiC canova
  • 2014年7月9日(水)佐賀県 SAGA GEILS
  • 2014年7月11日(金)長崎県 NCC&スタジオ
  • 2014年7月15日(火)長野県 NAGANO CLUB JUNK BOX
  • 2014年7月16日(水)新潟県 新潟LOTS
  • 2014年7月18日(金)富山県 MAIRO
  • 2014年7月19日(土)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2014年7月22日(火)東京都 新木場STUDIO COAST
  • 2014年7月23日(水)東京都 新木場STUDIO COAST
ニューアルバム「Keeper Of The Flame」 / 2014年3月26日発売 / 2520円 / EMI RECORDS / UPCH-20338
「Keeper Of The Flame」
収録曲
  1. Thirst
  2. Something Ever After
  3. Unhurt
  4. Horse Riding
  5. Sunset Off The Coastline
  6. Interlude
  7. Roller Coaster Ride Memories
  8. Tales Of Sorrow Street
  9. Waiting For The Sun
  10. Don't Follow The Crowd
  11. Burn To Shine
the HIATUS(はいえいたす)

現在活動休止中のELLEGARDENのフロントマン・細美武士を中心に結成され、ウエノコウジ(B)、柏倉隆史(Dr)、masasucks(G)、伊澤一葉(Key)らが参加するバンド。2009年4月にパンクロックフェス「PUNKSPRING 09」で初ライブを披露し、同年5月に1stアルバム「Trash We'd Love」をリリースした。その後もオルタナティブ、アートロック、エレクトロニカへ傾倒しつつジャンル不問の新しい音楽を追究。2011年11月に3rdアルバム「A World Of Pandemonium」が発売される。そして2012年9月にレーベルをNAYUTAWAVE RECORDS(現EMI RECORDS)へ移籍し、「A World Of Pandemonium」にストリングスとホーンアレンジを加えたスタジオセッションドキュメンタリーDVD / Blu-ray「The Afterglow - A World Of Pandemonium -」を発表し話題を集めた。同年11月からは、総勢17人編成で全国を回る初のホールツアー「The Afterglow Tour 2012」を開催。この東京公演の映像を収めたライブDVD / Blu-ray「The Afterglow Tour 2012」と、ライブ音源を収めた同名のライブアルバムを5月に同時発売した。7月には約1年8カ月ぶりの新作CD「Horse Riding EP」をリリースし、2014年3月に約2年4カ月ぶりのフルアルバム「Keeper Of The Flame」を発表した。