ナタリー PowerPush - the HIATUS
よりストイックに、より男らしく
ちっともさわやかになんて生きてない
──そして今作は、ロックからヒップホップ、ダンスミュージックまで幅広い作品を手がけている柏井日向さんがレコーディングエンジニアを担当されていますよね。
柏井くん、いいですね。彼もけっこうちゃんとトレーニングをやってるので、「今ウエイト何キロですか」とか、「飲んでるアミノ酸は~」っていう話ができるんです(笑)。音楽的にも、柏井くんは俺たちがやってるような音楽をちゃんと理解してくれる。だから一緒にやりやすい。エフェクトで音を飛ばすようなダブ的アプローチのうちいくつかは柏井くんのアイデアだったりするので、わりとプロデューサーエンジニア的な関わり方でしたね。あと、一般的にエンジニアってミュージシャンたちのリクエストに極力応えようとしてくれるんですけど、それが全員の要望をある程度満足させるための最大公約数的な音になってしまうことがあって。そのやり方だとトガった音は作れないと思うんですよね。だから今回は、最初に柏井くんと会ったとき、「例えば、2人から違う要望があったとして、それが同時に実現できないことだったら『どっちかしかできない』ってちゃんと言ってね」ってお願いしました。
──今回のアートワークには、ピーター・ブリューゲルの「叛逆天使の墜落」が使われていますね。天国と地獄がせめぎあっているようにも取れるこの絵を使った理由は?
アメリカのBEIRUTみたいに生楽器をいっぱい入れてるバンドが好きで最近よく聴いてるんですけど、そういうバンドの音からは、“人がたくさん入り乱れて、みんなが踊ってる”みたいなイメージが浮かぶんです。デザイナーと今作のアートワークについて打ち合わせをしたときもそんなイメージを思い浮かべてて、「ごちゃっといろんな色が入ってる絵がいいな」って伝えて、参考にヒエロニムス・ボスの絵を見てたんですね。その中にブリューゲルの絵があって「この絵がジャケットだったらばっちりだな」って思ってたんですけど、まずは何パターンかラフを作ってもらって。それを見てたらやっぱりあの絵が一番いいんだなって思ったんで、そのまま使わせてもらうことになりました。
──「A World Of Pandemonium」は混沌から生まれた作品であるのに対して、今回の作品はアートワークと楽曲のイメージも手伝ってか、その混沌を突き抜けて、さっそうとしているような印象を受けました。
ぶっちゃけそう言われるのはしゃくなんだけど、みんなそう言うからさっそうとしちゃってるんだろうな(笑)。
──自分としてはその自覚はないと。
個人的にはどんどん男塾的なメンタルに向かってて、ちっともさわやかになんて生きてないし……。そもそも自分でこのCDを聴いてもさっそうとした作品だとは思わなくて。むしろささくれ立ったタッチというか、ほこりっぽい、砂にまみれたイメージを持ってるんです。だから“さっそう”っていわれるのはちょっと複雑だけど(笑)。すごい気合いが入った男の歌なんですよね。
──その“すごい気合いが入った男の歌”が次のアルバムの核になるのか、プレビューになるのか。
どうですかね。それはできあがってみないとわからないですけど、次のアルバムがバンドにとって新しいチャレンジになることは間違いないでしょうね。あと、これからアルバムを作るにあたっては、家にこもって、携帯電話やインターホン切って、「絶対誰も邪魔するな」っていう状況をどれだけ確保するか。その牢獄の中で自分で手錠かけて、どれだけこもっていられるかっていう勝負になってくるかと思います……うん、アルバムはがんばります。すごいがんばってみます。
the HIATUS - Horse Riding
- 新作CD「Horse Riding EP」 / 2013年7月31日発売 / 1300円 / NAYUTAWAVE RECORDS / UPCH-80333
- 新作CD「Horse Riding EP」
収録曲
- Horse Riding
- Don't Follow The Crowd
- Waiting For The Sun
the HIATUS(はいえいたす)
現在活動休止中のELLEGARDENのフロントマン・細美武士を中心に結成され、ウエノコウジ(B)、柏倉隆史(Dr)、masasucks(G)、伊澤一葉(Key)らが参加するバンド。2009年4月にパンクロックフェス「PUNKSPRING 09」で初ライブを披露し、同年5月に1stアルバム「Trash We'd Love」をリリースした。その後もオルタナティブ、アートロック、エレクトロニカへ傾倒しつつジャンル不問の新しい音楽を追究。2011年11月に3rdアルバム「A World Of Pandemonium」が発売される。そして2012年9月にレーベルをNAYUTAWAVE RECORDSへ移籍し、「A World Of Pandemonium」にストリングスとホーンアレンジを加えたスタジオセッションドキュメンタリーDVD / Blu-ray「The Afterglow - A World Of Pandemonium -」を発表し話題を集めた。同年11月からは、総勢17人編成で全国を回る初のホールツアー「The Afterglow Tour 2012」を開催。この東京公演の映像を収めたライブDVD / Blu-ray「The Afterglow Tour 2012」と、ライブ音源を収めた同名のライブアルバムを5月に同時発売した。7月には約1年8カ月ぶりの新作CD「Horse Riding EP」をリリース。