音楽ナタリー Power Push - the GazettE
13周年を迎えて放たれる漆黒の“教義”
the GazettEが8月26日に7枚目のアルバム「DOGMA」をリリースする。
実験的要素の強かった近年の作品に対し、本作では彼らの本質とも言えるダークでヘビーなサウンドがあらわになっている。「教義」を意味する今作のタイトル通り、このアルバムはリスナーにとって彼らの真骨頂が何かを体感できる1枚と言えるだろう。今回は「DOGMA」のリリースに至る経緯をフロントマンであるRUKI(Vo)に語ってもらった。
取材・文 / 藤谷千明 ライブ写真撮影 / Hiroe Yamauchi(PROGRESS-M)
“再定義ツアー”から示した方向性
──今回のアルバムは、過去数枚のアルバムに入っていたようなダブステップの要素や女性コーラスといった実験的でバラエティ豊かなサウンドから一転して、ソリッドなものへと変化した印象を受けました。
意図的にそうしました。もともと俺らは「前のアルバムではここが足りなかったから次はこうしよう」みたいに、過去の作品から積み重ねていくタイプのバンドで、特に2011年にリリースした「TOXIC」からは「周りにない音楽を作りたい」って実験的なことをするようになっていたんです。当時まだEDMを取り入れたバンドが少なかったこともあって、自分たちのイメージをどんどん変えようとしていました。
──中でも前作「BEAUTIFUL DEFORMITY」はその方向性の集大成、ヴィジュアル系らしい叙情的なメロディと重厚なサウンド、EDMへのアプローチなどさまざまな要素が高いレベルで融合していた作品だったと思います。だからこそ今作で一転してシンプルかつハードな方向に舵を切ったというのが興味深くて。どんなきっかけがあったんでしょうか?
昨年1年間、1stアルバム「DISORDER」から6thアルバム「DIVISION」までを振り返るファンクラブツアー(「STANDING LIVE TOUR 14 HERESY LIMITED再定義」)をやって、そこで今の自分たちが出したいのは華やかなサウンドや革命的なサウンドではないって気付いたんです。アルバムを出すとツアーで20本ぐらいライブをやるんですが、だいたい半年ぐらいかけて作ったアルバムの楽曲をそんな短期間のツアーで自分たちのものにするのは難しくて。ツアー後の普段のライブのセットリストの中に入れてから徐々に自分たちになじんで曲が完成していくことのほうが多いんです。だから昨年は過去を再定義するライブを重ねて、今までの楽曲をプレイしながら自分たちがバンドとしてどうあるべきかを考えることができました。
「DOGMA」の意味
──今作のタイトル「DOGMA」は「教義」、つまり宗教的な教えや戒律といった意味を含んだ言葉です。これを選んだ背景にはバンドの方向性が定まったことと関係があるのでしょうか。
はい。「DOGMA」は自分のバンド、そして今の音楽シーンでヴィジュアル系をやっていることへの信念や覚悟について考えたときに出てきた言葉です。ヴィジュアル系というバンドの中でスタイルを変えず、どこまでその質を上げられるのか。流行とかそういうのはいったん置いて、バンドの核となるものはこれだと表現したかったんです。あと「DOGMA」というタイトルに独裁的なニュアンスも込めています。ファンにとって絶対的なthe GazettEの音楽を提示したいっていう気持ちがあったので。
──アルバムには「RAGE」をはじめライブで盛り上がる光景が思い浮かびそうな激しいハイスピードナンバーがあれば壮大な展開の楽曲「OMINOUS」も収められているなど幅広い楽曲が並んでいますが、どの曲も一貫してダークな雰囲気に包まれていますね。
そこは、俺たちがこの先やっていく中で、もっと黒くする……つまり自分たちらしさを出す必要があるって思いが出たからなのかな。長年やっているとわかるんですが、この先に何がどうなってもthe GazettEが一発屋的にドンと行くような売れ方はしないと思うんです。だから今自分たちがやるべきことは自分たちの存在感をより濃くしていけるよう、バンドの中にある信念を具現化させるような作品を作ることだと思ったんですよね。
──「DOGMA」の歌詞にも「混ざらぬ黒で塗りつぶす」とありますね。自分たちの色を濃くしていき、シーンの中であっても孤高の存在であり続けようとしているのでしょうか。
そうですね。自分たちはほかのバンドに対して同属嫌悪のような感情があるんです。雑誌でほかのバンドを見ても「やっぱthe GazettEが一番カッコいいよね」って思っちゃう(笑)。メンバー全員がそんな感じだし、昔っから自分たちのバンドに過保護で、今もそれは変わんない。だから誰かを見て「カッコいいね」なんて気持ちにはならないんですよ。上の世代の人たちはもちろんカッコいいんですけど、今のシーンにいる人たちを見ても「んー……」っていうところがあって。それに“残ってる”バンドってだいたい特異な存在感がありますよね?
──そうですね、残るべくして残っているといえるような個性を持っている気がします。
じゃあ自分たちがこのthe GazettEというバンドを長い間やってきた上でどうするかって言ったら、さらに深いところに向かうことかなって。例えばバンドが終わったときにちゃんと「the GazettEってこういうバンドだったよね」ってみんなが言えるような存在になっておきたいんです。
──まさに「DOGMA」の歌詞「闇となり飾ろう 有終の死を」というくだりのように。
はい。「あのバンド、結局何がやりたいのかわからなかったね」という評価より、「the GazettEは貫き通して去っていった」と言われたい。俺たちは「爪痕を残したい」っていう気持ちを持ってるんです。って別に近いうちに解散する予定はないんですけどね。80歳くらいまではやってたいです(笑)。
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- ニューアルバム「DOGMA」 / 2015年8月26日発売 / Sony Music Records
- 「DOGMA」完全生産限定盤
- 完全生産限定盤 [CD+DVD2枚組+写真集+ブック] 10800円 / SRCL-8887~90
- 「DOGMA」初回限定盤 / 通常盤
- 初回限定盤 [CD+DVD] 4320円 / SRCL-8891~2
- 通常盤 [CD] 3300円 / SRCL-8893
CD収録曲(3仕様共通)
- NIHIL
- DOGMA
- RAGE
- DAWN
- DERACINE
- BIZARRE
- WASTELAND
- INCUBUS
- LUCY
- GRUDGE
- PARALYSIS
- DEUX
- BLEMISH
- OMINOUS
DVD DISC 1収録内容(完全生産限定盤・初回限定盤)
- [DOGMA] MUSIC VIDEO
DVD DISC 2収録内容(完全生産限定盤のみ)
- DOCUMENTARY OF [-13-] AT 日本武道館
- [DEUX] MUSIC VIDEO
- [OMINOUS] LYRIC VIDEO
- MAKING OF [DOGMA] MV
- TRAILER COLLECTION
the GazettE(ガゼット)
2002年結成のヴィジュアル系バンド。インディーズ時代より激しいサウンドと妖艶なルックスで絶大な人気を博し、2005年12月にシングル「Cassis」でメジャーデビュー。2006年5月には初の東京・日本武道館ワンマンライブを実施した。2010年7月リリースのシングル「SHIVER」よりSony Music Recordsに移籍し、12月には初の東京・東京ドームにてワンマンライブ「TOUR 10 NAMELESS LIBERTY SIX BLULLETS FINAL THE NAMELESS LIBERTY」を開催。そして2011年に「TOXIC」、2012年に「DIVISION」、2013年に「BEAUTIFUL DEFORMITY」と毎年アルバムをリリースした。2014年にはファンクラブツアーを実施し、2015年3月にはバンドの結成13周年を記念して日本武道館で単独公演「the GazettE 13TH ANNIVERSARY 13-T H I R T E E N-」を開催。8月に1年10カ月ぶりとなるアルバム「DOGMA」をリリースする。