ナタリー PowerPush - The Flickers
ユニークな結成秘話から紐解く新鋭スリーピースの魅力
気付いたら後戻りできないくらい本気になってた
──安島さんと本吉さんはバンドを組むことになってから初めて会ったんですよね?
本吉 そうなんです。彼はそのとき海外旅行に行っていて、帰国したタイミングで初めて会って。
安島 帰ってきて、スタジオに行ったら、この人がいて。「こんにちは」みたいな感じで(笑)。
──へえ、安島さんはよく海外に行かれるんですか?
安島 ええ。実は僕、帰国子女で。子供の頃、1歳から3歳、小学校3年生から6年生までベルギーにいて。あと、短期でイギリスにも行ってました。
──じゃあ音楽の原体験もベルギー?
安島 そうですね。小さい頃に家の近くのガレージで、おじさんたちがジャズのライブをやっているのを観た記憶があります。ヨーロッパの音楽が好きなのも育った環境の影響があると思います。
──なるほど。話を聞けば聞くほど成り立ちが面白いバンドだなあ。ほぼ楽器未経験の3人がここまで来たというのも感慨深いですよね。
安島 そうですね。全員、最初はなんとなく始めたんですけど、やっていくうちにムキになって、気付いたら後戻りできないくらい本気になっていたという感じで。
──音楽に本気になっていく3人の熱量が等しかったんでしょうね。
安島 そうですね。最初は堀内がボーカルで、途中でパートチェンジをしたり、ほかにメンバーがいた時期もあったんですけど脱退したり、最後まで残った3人でもケンカしたり。いろいろなことがありつつもここまで来ましたね。
──なるほど。安島さんの音楽に対する熱量って音にもにじみ出てますよね。振り切れる感じだったり、ボーカルがいきなり絶唱になったり。
安島 表現として丁寧に音楽を伝えたいという気持ちもあるんですけど、「もう、関係ねえから全部ぶつけたい!」っていう気持ちもあって。曲の中でもグチャグチャになった気持ちを全部ぶつけられるような部分を作りたくなるんですよね。
メンバーが楽しいと僕も楽しい
──曲作りはどんな感じで始めたんですか?
安島 バンドを組んだのと同時にギターを持って。でも、僕のギターの練習の仕方が変だったんですよね。1週間くらいかけてコードを覚えた時点で曲作りを始めちゃったんです。だから、ほとんどほかのアーティストのコピーができなくて。ただ、曲作りを始めた頃から出したい音のイメージはあって。それは今出してる音に近いと思います。高校生のときによく聴いていたのがロックンロールリバイバルやニューウェイブで、そこからポストロックやクラブミュージックを聴くようになって。それを自分なりに昇華したいなと思いながら曲を作り始めました。
──確かに今鳴らしているのは、それらを総動員して昇華したようなサウンドですよね。でも、それを具現化するまでには技術的な問題もあったのでは?
安島 そうですね。最初はなかなかうまくできませんでした。でも、自分の気持ちを言葉にして、音に乗せて、歌うことはやっぱり特別なことだったから。曲作りを続けながら、メンバーと一緒にそれを共有するうちに成長していけたんだと思います。今でも音のイメージを伝えるときに2人を困らせてるんですけど。「ここは弾かないでほしい。でも、うるさくしてほしい」とか抽象的な要求をするので(笑)。
堀内 「弾かなくてもリズムが出るような」とかね。「ベースを弾かずにリズム出す方法? 手拍子か?」みたいな(笑)。
安島 そうやって困らせることもあるんですけど、2人とも一生懸命ついてきてくれるんです。この7年、バンドを続けてきたことで、お互いのことがホントによくわかるようになったし、喋らなくても全て見透かされてるような気になることもあって。だからこそ、僕も一生懸命良い曲を作らなきゃって思うんです。
堀内 「こういう曲をやりたいな」って思っていたような曲を安島が持ってきてくれることが多いんですよ。「そうそう! そういうのをやりたかった!」みたいな。常に今までにない新しいアプローチの曲を持ってきてくれるから、それについていきながら自分のベースも進化させていけるんですよね。安島が最初に想像したものを超えたいと思うし。
本吉 それは僕も同じで。安島は僕の感覚にはない曲を持ってきてくれるので、それに必死にしがみついていくっていう。僕はとにかく歌が映えるようなドラムを叩きたいと思ってますね。面白いリズムの曲も多いんですけど、何よりも歌を生かしたいんですよね。その上で気持ち良いリズムを叩いて、突き抜けるべきところは突き抜けていく。そういう意識でドラムを叩いてます。
安島 やっぱりメンバーが楽しいと僕も楽しいし、バンドが楽しければお客さんも楽しいと思うので。その良いサイクルの中で音楽を鳴らして、ひとつになりたいんですよね。その一方で、リスナーにわかってほしいという気持ちと、わかってたまるかという気持ちが交錯するし、踊ってほしいという気持ちと、それだけじゃ物足りないって思ってる自分もいる。それを全て曲に乗せたいと思ってます。
CD収録曲
- lovender
- vivian girls
- break bits
- three count to forget one's feel
- rock'n'roll Suicide
- ghost Town
The Flickers(ざふりっかーず)
安島裕輔(Vo, G, Syn)、堀内祥太郎(B)、本吉“Nico”弘樹(Dr)の3人からなるスリーピースロックバンド。ガレージロック、ニューウェイブ、エレクトロなどの要素を盛り込んだダンサブルなサウンドと、エモーショナルなパフォーマンスでライブハウスシーンを中心に注目を集める。2011年11月にタワーレコード限定で1stミニアルバム「WONDERGROUND」をリリース。2012年5月に初の全国流通盤となる2ndミニアルバム「WAVEMENT」を発表する。