ザ・クロマニヨンズが10月9日にニューアルバム「PUNCH」をリリースした。
2006年の“出現”以来、毎年アルバムを発売し、全国ツアーを行っているザ・クロマニヨンズ。通算13枚目となるニューアルバムでもブレずにストレートなロックンロールを鳴らしている。音楽ナタリーでは今回初めてメンバー4人にインタビュー。いつも通り4人そろってレコーディングしたというニューアルバムの制作エピソードなどを聞きつつ、スタンスを変えずに活動する秘訣を話してもらった。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 宇佐美亮
いつもと同じだけど全部違う
──ニューアルバム「PUNCH」聴かせていただきました。いつも通りロックンロール全開の1枚ですが、今作ならではといった部分は何かありますか?
真島昌利(G / 以下、マーシー) 特にないです。いつもとおんなじ感じかな。
甲本ヒロト(Vo) でも何も変わってないけど全部違うんだよ。毎回違う曲をやってるわけだから。毎回新鮮です。
──今回は特にメンバー全員でのコーラスパートが目立つ気がしました。
桐田勝治(Dr / 以下、カツジ) 来年からコーラスグループになろうと思ってます(笑)。
ヒロト 定評があるんです。クロマニヨンズのコーラス。
──「ここにコーラスを入れよう」みたいな提案は曲を作った人がするんでしょうか?
マーシー いろいろ。みんなのアイデアです。自分の中に明確に「ここはこうしたい」というアレンジがあるときは伝えるけど、あとはおまかせです。
ヒロト 6:4くらいで作曲者が言う場合がちょっとだけ多いかな。前に「コーラスの音程どうすればいい?」って聞かれて「好きな音程で」って答えたもんね(笑)。めちゃくちゃになってたけど面白かった。
マーシー コーラス録ってる時間が一番楽しい。
小林勝(B / 以下、コビー) 笑っちゃってできないときありますからね、面白すぎて。
ヒロト カツジがパーカッション入れてるとき、全員笑いをこらえてるよね。
──どうしてですか?
ヒロト 叩いてる姿が面白いんだよ、カツジは気付いてないけど(笑)。
コビー たまに歌いながら叩いてるしね。
カツジ 歌ってるうちにいろんなフレーズを思い付くんですよね。それで思い付いたのをやってみて「あれ? 違ったな」ってこともあるけど、頭の中で「これはダセえよ」って止めちゃダメなんです。やってみないとわからない。恐れずに開拓していかないと。
みんなで一緒に録るのが本来の姿
──基本的にレコーディングは4人そろって「せーの!」で演奏してるんですよね。
ヒロト 全曲そうです。
──じゃあ誰か1人でも間違ったらストップして?
カツジ 最初からやり直し。気が気じゃない。
ヒロト 間違ったけど黙ってる場合もあるね(笑)。
コビー みんな気付かない(笑)。
マーシー 聴いたときにカッコよければ問題ないんです。
──普通は1人ずつブースに入って、最初にドラム、次はベースと順番に録音していくバンドが多いと思うんですが。
カツジ みんなで一緒に録るのが本来の姿だと思いますね。経済的な部分とかスケジュール的な部分で、あとから重ねていくほうがラクだからそうやってる。本来は全員で録ったほうがいいし、そっちのほうが勢いが伝わると思うんです。
コビー やっぱり録音されたものを聴いて録るのと、顔を見て一緒にやるのじゃ全然違うから。生音を聴きながらやるほうがずっと気持ちいい。
──いろいろなスタイルを経験したうえで、今のやり方がベストだということですね。
ヒロト どれがベストかはわからない。でもなんとなく楽しい(笑)。やってて楽しければなんでもいいんです。先に演奏を録ってボーカルだけあとから歌うのは、僕にとっては楽しくない。
カツジ まあせっかく4人そろってるんだから一緒にやろうよって話ですよね。1人ずつ録ってると待ってる人が暇だから。あと難しい曲だと一生レコーディング終わらない可能性ありますからね。「お前何回間違っとんねん!」って殴り合いのケンカになって。
コビー レコーディングのたびに強くなる(笑)。
カツジ アー写撮る頃には顔の形が変わってる(笑)。
時代の空気の中で生きている
──今回のアルバムは「小麦粉の加工」や「長い赤信号」など、生活感のある目線で書かれたマーシーさんの楽曲が印象に残ります。例えば「整理された箱」は倉庫の仕事をしている人の歌ですが、これは実体験から出てきたものですか?
マーシー 若い頃、倉庫整理のバイトをしてましたからね。
──その体験をこのタイミングで曲にしようと思ったきっかけは?
マーシー それはわかんないんですよ。僕は今57歳ですけど、57年間で見たものや聴いたものに絶対影響を受けてる。でもそうやっていったん自分の中に取り込まれたものがどういう回路を通って出てきているのかはよくわかんないです。全然気にしてなかったことがポンと出てくることもあるし。
──今の世の中のギスギスした空気や先行き不安なムードが、倉庫の仕事をしていた頃の気分とつながったのかなと勝手に思ってしまったんですが。
マーシー そうかもしれないけど、それもわかんないです。ニュースも見れば、テレビも観るしラジオも聴くし。時代の空気の中で生きているわけだから、いろんな影響は受けてると思いますけどね。
ヒロト でもそうやって「先行き不安な時代」って言うけど、「今は本当にいい時代だなあ」っていうのはいつ?
──うーん、わからないですね。
ヒロト そう、だからずっと同じなんですよ。ずっとギスギスしてる。だから捉え方1つ変えれば今が一番いいかもしれないんです。
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他人の「いいね」が欲しくなるとブレる