純粋なドラマーと純粋なベーシスト
──ザ・クロマニヨンズの4人は普段から一緒に遊びに行ったり飲みに行ったりもするんですか?
ヒロト ていうかツアー中ずっと一緒ですからね。毎日一緒にごはん食べて移動して狭い楽屋にいつも一緒にいて。
──そんなにいつも一緒にいてケンカや口論はない?
ヒロト ないですね。いい意味でお互い遠慮はするし、言いたいことは言うし。もし僕らが十代とか二十代前半で何かロックっぽい生き方に幻想みたいなものを持っていて、例えば身を持ち崩すようなお酒の飲み方をしなければカッコ悪いとかそういうことを考えてる時期だったらいろいろぶつかったりしたかもしれない。でも最初からそういうのじゃないところで始まってるからね。
──カツジさん(桐田勝治 / Dr)とコビーさん(小林勝 / B)は、お二人から見てどういうプレイヤーですか?
ヒロト 純粋です。純粋なドラマーと純粋なベーシストで混じりっ気がない。
──それは人間性の話ですか?
ヒロト それも含めて。とにかくロックンロールが好きで、ほかのことに興味がないんです。普段はレコードが欲しくて欲しくて、お小遣いがあったらレコードを買う。時間があればドラムを叩く、ベースを弾く。無駄がない。
──カツジさんのドラムを初めて聴いたとき、音のでかさに驚きました。
ヒロト うん、でかいよね(笑)。マーシーのギターもでかいし、僕もでっかい声で歌わなきゃって思う。あのね、PAでスピーカーのボリュームを上げれば会場の音はいくらでも大きくできるんです。小さな音で演奏して、それを増幅してガーンと鳴らすバンドもいる。でもクロマニヨンズはステージの上の音もでかいです。
──コビーさんはストイックなベースを弾く人という印象があります。
マーシー いや、あの人って実は器用なんだよね。なんでもできる。チョッパーだって弾けるし。ただザ・クロマニヨンズがどういうバンドかっていうのを彼はすごくわかっていて、自分がどうすれば機能するかっていうのを考えてる。すごく賢い人なんです。
一生心に残るライブを見せてやる
──ザ・クロマニヨンズは毎年フェスに出て、アルバムを作って、長いツアーを行っています。かなり忙しいんじゃないかと思うんですが。
ヒロト 忙しいよ。でも僕らにとってはそれが楽しいことなんです。
──疲れませんか?
マーシー 逆にライブとか終わったあと疲れてないと不安かな。
ヒロト うん、取り柄もないのに力を残してる場合じゃないだろって(笑)。
──それにしても今回のツアーも計54公演の長丁場です。さすがに多すぎないですか?
ヒロト 違うんですよ、数は関係ないです。
──と言うと?
ヒロト その日には1本しかできないんです。もし10日で8本やっても1日には1本なんです。だからたくさんじゃないんです。
──明日も明後日も連チャンでしんどいな、とは思わない?
ヒロト 思わない。そんなこと考えてやってたらその日しか観ないお客さんに失礼だよ。俺たちができるのは一生懸命やるってことしかないんだもん。たった1回でもいいから、一生心に残るようなやつを見せてやるぜっていう、それだけです。
──ライブやレコーディング以外に、こういうインタビューやプロモーションのためのテレビ出演もありますよね。そうした仕事はお二人にとってどんな意味があるんでしょう?
ヒロト そこはやっぱりレコード会社で働いてる人たちのことも好きだし、そもそも芸術家じゃないからね。ポップ音楽に携わってるっていう意識はあります。そうである以上はこういうこともやったほうがいいことの1つなんじゃないですか、テレビに出てみたり。そこが主戦場にはならないと思うけども、隠居生活して山の中で絵描いてる人とはやっぱり違うから。
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