ザ・クロマニヨンズがニューアルバム「レインボーサンダー」を10月10日にリリースした。音楽ナタリーでは「みんなが集まって楽しく演奏して」完成したという本作について甲本ヒロト(Vo)と真島昌利(G)にインタビューを実施した。また、後半には2人にお気に入りのTシャツを持って来てもらい、Tシャツにまつわるエピソードや思い出を聞いている。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 後藤倫人
毎回「ああ、いいのができたな」って
──通算12枚目のオリジナルアルバム「レインボーサンダー」はどんな作品になりましたか?
甲本ヒロト(Vo) マスタリングまで全部終わったのが6月とか7月の頭とかなんですけど、そのときの感想は「ああ、いいのができたな」って。毎回そうですけど。
──いつも通り、特にコンセプトも決めず?
真島昌利(G) うん。
ヒロト みんなが集まって楽しく演奏して、そのときにテープレコーダーを回すっていう、それだけです。
──今回もレコーディングはスムーズでしたか?
ヒロト 構成とかアレンジとかがしっかり決まるまでは何度か演奏してみるけど、それでも3回ぐらいかな。
──悩んだりすることもなく?
ヒロト うん、ただ楽しくやるだけですね。
ギターはもっとスカスカでいい
──このアルバムを聴いて改めて感じたんですが、マーシーさんのギターって音色もフレーズも、すごく“マーシーさんっぽい”ですよね。
マーシー そうですかねえ。
ヒロト そりゃそうだよ(笑)。
──この強い個性はどこから来るんでしょうか。
ヒロト 本人は言いにくいかもしれないけど、マーシーはいい意味で不器用な人だと思うの。すごい器用でエフェクターがいっぱいあって曲ごとに全然違うプレイをするっていう人じゃなくて、「俺これしかできねえから」っていう感じ。それが余計にマーシーのキャラクターを際立たせてる気はする。
──エフェクターは何を使ってるんですか?
マーシー オーバードライブ1個だけ。
──このアルバムも全曲そのオーバードライブ1個で?
マーシー うん、そうです。
──マーシーさんがギターを弾くうえで心がけていることはありますか?
マーシー うーん、やっぱりカッコいい音でギターを弾くってことかな。あと、できてるかどうかわかんないけど、あんまり音を多く使わないように、みたいなことは最近ちょっと思ってます。もっとスカスカでいいよなって。
──ザ・クロマニヨンズの楽曲において、ギターの音数が少ないほうがいいという意識がある?
マーシー あるかもしれないですね。強力なリズム隊がいて、そこに歌が乗ってたら、もうそれだけで成立してるみたいなとこがあって、そうするとギターは飾りって言ったらおかしいけど、なんかそれぐらいの役目でいいのかもしれないなと思ったりします。なんかね、僕こないだたまたまYouTubeでSHEENA & THE ROKKETSが「YOU MAY DREAM」をテレビで演奏してるときの動画を観てて、それがめちゃくちゃカッコよかったんですよ、スカスカで。テレビだからベースもそんなに出てなくて、鮎川(誠)さんのギターもひずんでない素の音で、そこにシーナさんの歌が乗ってきて、ロックバンドってこれでいいんじゃんって。改めてカッコいいなと思った。
──わかる気がします。
マーシー だからこのアルバムも最初はギターを重ねてたけど「これいらないね」って消したりして。今回そうやって何曲かで最終的に取っ払った音はありますね。
──ヒロトさんがギタリストとしてのマーシーさんに望むことはありますか?
ヒロト そうだなあ。僕は毎回自分の曲でギターソロを1、2曲は入れてもらいたいんですけど、本人があまりソロを弾きたがらないんで(笑)。もうちょっとソロあったほうがいいんじゃないかな。毎回いいソロ弾いてくれるんです。
──マーシーさんはソロを弾きたくない?
マーシー あんまり、そうですね。弾きたいか弾きたくないかって言われたら弾きたくない(笑)。
ヒロト そうすると僕、歌いっぱなしなんです。いいんですけどね。
上手な歌は“しゃらくさい”
──「生きる」という曲のボーカルは冒頭くぐもった感じの声で始まったあと、一気に力強さを増していく印象があります。失礼ながら、ヒロトさんってもしかしてすごく歌がうまいのかな、と思ったんですが。
ヒロト えっ、あんまり言われたことない。
──自分ではどう捉えてます?
ヒロト 僕は上手に歌おうとか全然思わないですけど、何十年もずっと歌ってますからね。そうすると知らない間にちょっとは上手になってる気がする。でもそれはね、しゃらくさいんです(笑)。「ここでこんなふうに歌ってやろう」みたいなことを考えて歌うのはダサいと思う。だからいつでも全開でやってます。
──マーシーさんから見てヒロトさんの歌はどうですか?
マーシー ここ3、4年ですごくよくなったって思ってるんですよ、僕は。
──どんなところが?
マーシー そうね、改めて聞かれるとよくわかんないんですけど、なんかいいなって感じるんです。「この人すげえボーカリストになったな」って。
──ヒロトさん自身はこの3、4年で何か変わったという自覚はあります?
ヒロト そう言われると、確かにここ数年、楽しいときにその気持ちを言語化できているかもしれない。それまではがむしゃらにやってただけなんだけど、今は歌ってる瞬間に「今、俺は楽しんでいる!」みたいなことを感じてるかもしれないです。
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